2・環境構築編

第71話 快適ダンジョン


 勇者も倒して一段落。



 俺は玉座の間の隣に作った自室で休んでいた。



「ふぅ……」



 と、息を吐いて、ベッドに寝転がりながら思案する。



 転生してから約一ヶ月は経った。

 次の勇者がやってくるのも時間の問題だろう。



 となると、その間に出来ることはなんだろうか?



 勿論、ダンジョンの防衛を更に強固にすることは当然なんだけど……それにはもっとレシピを増やさないといけない。



 レシピを増やすには★が必要だ。

 そして★を得るには配下の皆の協力が必要。



 そうなると、暫くはダンジョン内の衣食住の環境を整え、皆に快適に暮らしてもらえる場所作りが優先になってくるかな。



 うん、そうしよう。



 じゃあ何から手を付けようって話だけど……。

 やっぱり、食環境からか?



 せっかく食堂も作ったことだし、内容を充実させたいところ。

 少ないメニューだけど料理も好評だったしね。

 皆も喜んでくれると思う。



 じゃあ、すぐに出来そうなのはアレだな。



 レシピを持ってるけど食材が足りなくて作れていない料理がある。

 ミートパイだ。



 その食材の確保をしなくちゃ。



 分かってるのは草牛ムートリから採れるムームーバターが必要なこと。

 その他の食材は揃ってるので、それだけ確保すればいい。



 ムームーバターを作るには、

 草牛ムートリの乳×3



 ってことになってる。



 乳だから当然、普通の牛みたいに乳搾りをしたら採れるんじゃないだろうか?



 草牛ムートリ自体は、以前シャルと食材探しに行った時、一頭だけ捕まえてアイテムボックスに入ってる。



 ここじゃなんだけど、ちょっと外に出して搾ってみようか。



 そう思ってアイテムボックス内にある草牛ムートリ(♂)×1に手を伸ばした。



「って、オスなんかーい!」



 捕まえた時に性別まで気に留めてなかったからな……。

 これは改めてメスを捕まえに行かなきゃだな。



 そもそも、今後のことを考えたら一頭じゃ足りないと思うし、ダンジョン二階層目に牧場も作る予定だったから丁度良い機会かもしれない。



 探しに行く場所は死霊の森。

 以前、草牛ムートリを捕まえたのがそこだったから、今回もそこでいいだろう。

 他に良い場所があるかもだけど、とりあえずは。



 それに今回も森に詳しいシャルを連れて行った方がいいだろうな。



 じゃあ早速、彼女を誘いつつ出掛けるか――と、思ったのだが、



 せっかくコンソールを開いたことだし、今現在のステータスを確認しておこう。



 瞬足勇者との戦いを始める直前から、今の今まで確認してなかったからな。

 一応、勇者という大物との戦闘を終えたわけだから、何か変化があるやもしれない。



 という訳で、開いてみた。




[ステータス]

 名前:魔王

 レベル:8   ★:825

 HP:5020/5020

 MP:3907/3907

 攻撃力:788   防御力:694

 素早さ:521   魔力:706

 運:727

 特殊スキル:飢狼罰殺牙グラトニーハウンド(Lv.27) 炎獄砲牙ヘルフレイムカノン(Lv.36)




 ええええっ!?



 いつの間にかレベルが上がってるぞ!

 しかも、爆上がりじゃないか!



 一気に3つもレベルが上がってる……。



 それだけ大量の★を得たってことか??



 しかし……どっかで★が出た場面なんてあったっけ?

 俺は見た記憶が無いぞ?



 ってことは、俺の知らない所で出たってことか?



 ★というものが対象者の感情に左右されるものだとしたら、必ずしも俺が見てなきゃいけないって訳でもないだろうし……。



 つい最近に絞って、そんな可能性がある人物を考えると……。



 ……アイルか?



 この前、勇者に掴まった彼女を俺が助けたことがあった。

 その時は星は出なかったけど……。



 さっき隣にあるアイルの部屋で、ドタドタいってたけど……それに何か関係があるのかな?



 理由はともかくとして、★が増えてレベルが上がったことは事実だ。



 それはとても喜ばしいこと。



 丁度、草牛ムートリを探しに出るところだったけど、その前にレベルアップの変化を確認しておいた方がいいだろうな。



 そんな訳で、俺はコンソールに手を掛けた。



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