第27話 MP

大量のゴーレムを作ったところで、俺は改めてステータスを確認する。




[ステータス]

 名前:魔王

 レベル:3   ★:115

 HP:3710/3710        MP:226/3016

 攻撃力:698   防御力:602

 素早さ:462   魔力:613

 運:682

 特殊スキル:飢狼罰殺牙グラトニーハウンド(Lv.26) 炎獄砲牙ヘルフレイムカノン(Lv.32)




 MPが結構減ってる。



 ゴーレムリーダーを作るには一体あたりMPを30消費する。

 それが26体分。



 ノーマルゴーレムを作るには一体あたりMPを10消費する。

 最初に作った初めてのノーマルゴーレムを含め、それが201体分。



 だから全部で2790ポイント減ったわけだ。



 それでも、まだまだ残量に余裕がありそうな感じだけど……今後、上位のアイテムや魔物を合成する際に、もっと多くのMPを必要とするものが出てくるかもしれない。

 その時の為にも回復方法は確立しておく必要がある。



 普通のゲームだったら宿屋で寝ると回復してたりするけど、どうなんだろ?

 とりあえず寝てみるか。



 という訳で、雑用係のゴーレムに城の自室にあったベッドをダンジョン内へ運んでもらうことにした。



 勇者が来るまでまだ余裕があるとはいえ、城内では不用心過ぎて安心して寝られないからだ。



 ベッドを担いだゴーレムと共にダンジョンへ降りる。



 魔法の扉からダンジョン内に入り、大浴場(男湯)に向かう。

 その男湯の奥の壁にポッカリと空いた穴が、本当のダンジョンへの入り口。



 このままじゃ入り口がバレバレなんで、ついでにそこにも魔法の扉を設置しておいた。



 んで、ダンジョン内。



 ゴーレム達が頑張ってくれているようで、相当作業が進んでいるようだ。

 この前まで、ただの広い空間だった場所が入り組んだ迷路のようになっている。



 ダンジョンらしくなったもんだ。



 出来る事なら下の階層にまで降りて、そこで寝た方がより安心出来るが、何の用意も無く進むと道に迷ってしまいそうなので、今日はダンジョンに入ってすぐの場所に小さな部屋を掘って、そこで寝ることにする。



 この迷宮、あとでちゃんとマッピングする必要があるだろうな。

 でも面倒だからゲームみたく、迷宮コンパスみたいなアイテムが作れるようになったら最高なんだけど……。



 そんな期待を抱きながら、俺は今日の寝床を作る為、強欲の牙グリーディファングで、軽く一掘り。



 一掘りで二十畳ほどの空間が出来上がったので、そこにベッドを置いてもらう。



 さて、これで一眠り……とは、まだいかない。



 元来、用心深い性格なので、この部屋の入り口にも魔法の扉を設置。

 ついでに前回のレベルアップで手に入れたレシピ、バネ罠と可動壁を室内に設置する。



 バネ罠はスイッチとセットになっていて壁や床に設置すると、その場所に触れただけで強力バネが発動。

 侵入者を弾き飛ばす仕組みだ。



 これだけじゃ、なんの防御効果も無いので、弾き飛ばされるであろう場所にトゲ罠付き落とし穴を設置しておいた。



 しかもその落とし穴の内側の壁を可動壁にして、そこにもトゲ罠を付けておいた。

 穴に落ちた者を両側から迫るトゲの壁が串刺しにするという、定番中の定番罠だ。



 扉の外には、ベッドを運んでもらったゴーレムを護衛として置き、それでようやく俺は安心して眠りに就いた。



 ――数時間後。



 目覚めてすぐにステータスでMPを確認すると、




 MP:226/3016




「……」



 回復してねぇぇ!



 予想が外れた。

 睡眠で回復しないとなると、一体何で回復するんだ?



 他に考えられるのは、その手のアイテムだな。

 MP回復用のポーション的なやつ。



 そんなのもちろん持ってない。

 後々、合成出来るようになるんだろうか?



 いや、MPの回復なんていう基本的なものが、そんなハードル高い訳がない。

 そもそもアイルや四天王達にだって魔力はあるのだから、回復の方法も知っているはず。



 だったら当人に聞いてみればいい。



 俺はゴーレムにアイルを呼んでくるよう頼んだ。

 しばらくすると、



 ダンダンダンダンッ ガチャゴンッ ドスンッ バシャアッ ズダダダダ



 音が段々近付いてきている。

 そして、



 バタンッ



「お、お呼びですか! 魔王様っ!」



 開かれた扉の先にはアイルが息を切らして立っていた。

 しかも途中で誤って風呂に突っ込んだのか、全身ずぶ濡れだった。



 そこまで急がなくてもいいのに。

 なにやってんだか……。



「あー……わざわざ来てもらってすまないね。ちょっと聞きたいことがあって」

「何でしょう? 私で分かることならば」



 言いながら彼女が部屋の中へ一歩踏み出そうとした時だ。



「ちょっと待った!」

「え?」



 彼女の足元でカチリと音がする。

 スイッチの入った音だ。



 次の瞬間、



 バヒュッ



 間一髪、彼女の鼻先をバネ罠が掠める。



「いいっ!?」



 アイルは驚いて、後ろに尻餅を突く。



 もう一ミリ体が前に出ていたら、バネ罠に吹っ飛ばされて、そのままトゲ付きの落とし穴に真っ逆さまになるところだった。



 危ない危ない……。



「ごめん、罠が張ってあることをまず先に言うべきだった」

「い、いえ……魔団参謀たるもの自身の力のみで察知すべきでした」



 そんな目にあっても魔王の俺を立てる。

 なんとも健気な配下である。



 彼女はフラフラしながら立ち上がる。



「それで、何の御用でしょう?」

「そうだった。えっと、MPってどうやったら回復するの?」



「MP……ですか? 申し訳御座いません。その単語を存じ上げないのですが、何の事でしょう?」

「え……」



 思いも寄らない答えが返って来て沈黙してしまった。



 MPの存在自体を知らない?

 そんなはずは……。



「アイルは魔力を持っているだろ?」

「ええ」



「その回復方法を知りたいんだ」

「それは……体を休めると回復しますが?」



 彼女は当たり前のように答えた。



 俺は休んでも回復しないんだが!

 あ……もしかして、俺のMPと彼女の魔力は概念が違う存在なのか?



 となると、困ったぞ。

 また振り出しに戻ってしまったじゃないか。



 このままMPを使い続けて行ったら、いつかは枯渇してしまう。



 うーむ……どうしたものか……。


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