ノワール・ブラン

序章 黒と白

　グラン＝エル・ダーディル。

　普通の人間には見えない強力な結界で覆われた、「魔法」が存在する世界。ここには人間の世界では「人外」と呼ばれるような存在が多く暮らしている。幾多の魔法や奇跡が存在する中で、世界を大きく変えうる程強い力を秘めた二つの力がある。

　闇を司どり、悪を断罪する力　――――　黒の力

　光を司どり、人を癒し守る力　—―――　白の力

　それぞれ今から約3000年ほど前に互いに覇権を争っていた魔界、天界の王を始祖とするといわれているが、定かではない。ただ、この二つの強大な力を我が物にせんと太古の昔から多くの野心を持つ者が奪い合いをしてきた。ある大国の王は、黒の力を我が物にしようと、隣国の小国に大軍で攻め込み、多くの血を降らせた。またある時は、高位の聖職者が白の力を使って金儲けをしようと数多くの聖職者を火あぶりにしたりもした。しかし、誰も黒の力と白の力を手に入れることはできず、いつしか二つの力は単なるおとぎ話として物語の中でのみ語られるようになっていった。