第3話
朝、中学校教師の死体が同僚の教師たちに発見された。
殺されたのは長原祐介35歳。独身。ひとり暮らしのアパートにその日何も連絡がないのを心配した、教務主任と教頭によって自室で死んでいるのを発見された。
小山田と相棒の窪坂、刑事課長の三人は、被害者が勤めていた中学校を訪ねて校長らに事情を聞いていた。
校長は、勤務上での被害者を知るのみで、私生活のことは何も知らなかった。
そこで、被害者と近しい教師仲間が授業が終わって休み時間になったら話を聞こうということになり、休み時間が来るのを校長室で待っていた。
休み時間を知らせるチャイムが鳴り、次々と教師たちが職員室に戻ってきた。
彼らはまだ被害者である長原先生が亡くなったことは知らない。
見たことも無い、スーツ姿のいかつい男が三人いたので、教師たちは皆一様に驚いた表情をした。
校長は、教師たちが戻り終わったのを確認すると
「皆さん、驚かないでください。長原先生が亡くなられました。さっき警察の方から殺人事件の疑いがあるということをお聞きしました。皆さんショックですが、警察の方に協力をお願いします。今は取り合えず、心を落ち着かせて、休み時間が終わりましたら取り合えず授業に向かってください。警察の方、それで良いでしょうか」
校長はなかなか肝の据わった人だと小山田は感心した。
「もちろん。授業優先でお願いします。取り合えず次の授業の無い方からお話を伺えればと思いますが、その前に長原先生と一番仲が良かった先生がいらっしゃればその方からお話をさせてもらえますでしょうか」
校長は、教務主任と顔を見合わせた。
「そうですねえ、水野先生はどうでしょう。同じ学年の担任ですし、歳も近いし」
「そうですね。水野先生どうでしょうか」
多くの教師が立ち尽くすなかに水野という長身ですらりとした男がいた。眼鏡をかけていたが素直そうな顔のイケメンだ。性格が良さそうだなと小山田は思った。
「はい、多分長原先生と一番親しかったのは私だと思いますが、もっと詳しい方がいるのかも知れませんけど」
「じゃあまず水野先生、校長室でお話を」
小山田たちが職員室を出ると、背後の職員室のなかから悲鳴のような泣き声が聞こえた。
女性の教師のようだった。
多分相当なショックを受けたであろう。
次の授業をやれるのか心配になったほどだった。
校長が付き添うような感じだったので
「校長先生は、諸先生たちのフォローをお願いします」
「ありがとうございます。教育委員会への報告もありますし。ところで、今後のことなのですが」
「はい、何でも聞いてください」
「マスコミが学校へ押し寄せたりするのでしょうか」
「まだ捜査本部も立っていないので各社に広報していませんからね。多分、今夜か明日の朝には来ると思いますが、そのことはうちの副署長が相談させていただくことになると思います。取り合えず、先生方が相当動揺しているでしょうからどうぞその対処に当たってください」
校長はきびすを返し、職員室に戻っていった。
小山田は、これから校長の身にとてもひとりでは対処できないくらいのことが起きるだろうと同情した。
水野は悲しげな表情を浮かべていた。
目が潤んでいるようでもあった。
「驚かれたでしょ。落ち着いてください。まず、長原先生という方はどういう先生だったか。それと私生活のことを知っていることすべてお時間が来るまでお話ください」
水野の話では、長原は非常に熱心な教師で、部活にものめり込むくらい一生懸命に取り組んでいたこと、生徒たちからは顔と体がいかついから恐いという印象を持たれがちだったが、乱暴な言葉を吐くでもなく、性格はいたって穏やかだったので、人気はあったという話だった。
そこまでは、教頭らの話と同じだった。
私生活のことも、水野が32歳、長原が35歳と近いこと、それに同じように独身だったことから、同じ悩みを持っていたということが分かった。その悩みとは、「結婚」のことであった。
続く。
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