設定が他のファンタジー作品と比べて重厚に練られていて、特に、魔女の血によって発現する外見その他諸々、烏に対して密かに敵愾心を抱く獣たちなど、その辺りの、綿密で話を面白くする設定は他の追随を許さない部分があるかと思われます。
しかし、ストーリーの構造が凡庸だなと感じました。凡庸だからこそきめ細かい設定が活きていると言えるのかもしれませんが、少女が真相に気付く最後の場面しか山場が無いように思います。時間を忘れて読んでいくのは設定を知ることに満足する中盤辺りまでが限界で、そこまでに読者を惹きつけるような場面、例えば主人公や近しい人がピンチに陥るなど(それこそ凡庸ですが)があれば、もっと魅力あふれる作品になるのかなと思います。物語の終わり方は個人的にめっちゃ好みでした。
作者様の売りは世界観の構築力だと思います。心理描写や全体としての構成力は、良くも悪くもないと感じました。これよりもう少し濃いようなハイファンタジーを書けば一級品ではないでしょうか。