意味がわかると怖い話「あくびカウントアプリ」

蛇穴 春海

あくびカウントアプリ

今夜は流星群が見えるらしく、理科の先生である担任が校長に頼み込んで俺達のクラスだけ特別に無人となった学校の屋上へ来ることを許された。

とはいえ、流星群なんかに一切興味のない俺と友達の太郎は早々にこっそりと屋上を出て中庭のベンチでサボっていた。


「ふぁあぁ〜、ねみぃー」


時刻は22時をもうすぐ過ぎようとしている頃で、普段早寝早起きだった俺は既に眠気がきていた。

我慢しようにもできない欠伸を何度もしてる途中、太郎が言った。


「あくびカウントアプリって知ってる?」

「は? 何それ」

「自分が欠伸をした時に他人に欠伸が移ったとかあるだろ? その人数を数えてくれるアプリだよ」

「ふぁあ〜……くだらねー」

「いやまあそうなんだけどさ。昨日何回も試してみたんだけど全部当たってて地味に凄いんだよ」

「……本当に地味なことだけはわかるわ」


俺が明らかに興味がない様子なのに気付いてないのか気付いていて無視してるのか、太郎は早速携帯を取り出してアプリを起動していた。


「昨日の最高記録は僕と順子と光太郎と先生の計4人だぜ。どうだ凄いだろー!」

「あー、道理で昨日お前担任から携帯没収されてたんだな」

「うっ、うっせーよ! と、兎に角やるぞ! ……ほい、携帯」


太郎は唐突に『あくびカウントアプリ』と画面に表示された携帯を俺に渡してきた。


「え、なんで俺に渡すの?」

「だってお前ばっか欠伸してんじゃん。僕まだ全然眠くないし」


確かにしょっちゅう昼夜逆転してる太郎じゃ今から欠伸は出ないだろうなと思い、俺は大人しく携帯を受け取った。


「なんか半径5m以内しかカウントしないらしいから、ちょっと離れてやってみようぜ」


そう言うと太郎はベンチから立ち上がり一歩また一歩と離れていった。


「よーし、欠伸してくれー!」


その位置で良いのか太郎はグッと親指を立てた。この距離じゃ4mも離れてないだろと思ったが面倒なのでそのままアプリを開始した。

数秒後、俺の口から大きな欠伸が出た。すると太郎も合わせて欠伸をする。わざとらしく大口を開ける仕草に若干イラッとしながらも画面へ視線を落とした。


『──カウント中──』


アプリのローディングが始まった。屋上のうるささに辟易しながら待つとすぐに結果が出る。


『3人』


間違ってんじゃん。にしても上騒がしいな……。

と思った矢先、俺の方を見て怯えた様に目を見開かせる太郎を見た気がした。

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