0-3/4.ステータスチェック


 時刻表示を見ると、そのままの体制で二時間近く呆けていたらしい。不思議と疲れていない。

 頭を垂らしながらはぁ、と短い溜息を付いて目をぎゅっと瞑る。ゆっくり目を開いて、取り敢えず今の自分に出来ることを確認することにした。これが異世界転生だというのなら、歴代のパターンと自分が置かれている状態との比較、そして自分に何が出来るのか、把握しておく必要があると思う。


 まずは、視界に表示されてるARの再確認だ。

 左下にHPとMPバー、もう一つは多分スタミナとかだろう。それとこれらの左端にはアラビア数字の1の表示。恐らくはレベルだと思う。四つで一つのアイコンみたいだ。どことなく某鍵の剣で戦う人気RPGから来てるみたいな形だな。

 右上には丸いミニマップ、相変わらず真ん中には三角錐、というか涙型、というかそんな青い光点が灯っている。顔を振ると光点の尖っている方が動くので、尖りが向いてる方が顔の向いて言う方と言うことなのだろう。ミニマップの下部にはデジタル式の時刻表示がなされている。

 右下には今のところ何のアイコンも表示されていない。

 最後に、左上にはアイコンが2つ、縦に並んでいる。一つは横に三本の線が入った、漢数字の三のようなアイコンだ。一番上の線だけ少し短い。もう一つは歯車のような形のアイコンだ。これはわかる。設定アイコンだと思うが、一体何を設定するんだ…?

 となると、最初のアイコンはメニューかな……?


《肯定。メニューアイコンとGUIの設定アイコン。》

――ああ、やっぱり。これ指で押せばいいんです?

《肯定。他の操作方法として脳波操作にも対応。》

――の、のうは?

《肯定。思い描くだけでGUIの操作、またはショートカット等が可能。》


 なるほど。考えてみればそういうのも異世界転生者のお約束的なものだったかもしれない。GUIの設定ってのはゲームで言う所のオプションの様なものだと理解した。掘り下げるのは後にしよう。


《メニューを脳波操作で開く場合、メニューを開くさまを脳内に思い浮かべれば開くことが可能。》

――なるほど、わかったようなわからないような……いっちょやってみっか!オラわくわくすっぞ!……言うてる場合か。

《いうてるばあいか。》

――やかましい。


 なにこのインターフェイス、おちゃめさんか。……そうだ。


――ねえねえ、ナビなんたらさん。

《ナビゲーション・インターフェイス・システム。何。》

――ナビゲーション・インターフェイス・システムって言うのめんどくさいから、これからはナビィって呼ぶな。

《めんどくさい?》

――長いのです。めんどくさいのです。

《……あなたの申請を受理。ナビゲーション・インターフェイス・システムをナビィと命名。以後、自らをナビィと呼称。》

――どもです。そしたら、メニュー開こか。メニュー開け~。


フィィン


 オープンメニューを念じると、どこからか小気味よい効果音が流れ、視界中央にメニュー画面がポップした。おおっ、なんか感動。

 目の前に現れたメニューは22インチ程の横長の長方形で、全体的に黒っぽい背景が半透明になっている。

 メニューの上部には複数の項目が横に並んでいる。左からステータス、スキル、アイテム、ワールドマップの四つ。オープンワールドゲームのメニューによくある感じだな。

 中央のメイン表示部分にはデフォルトでステータス画面が表示されている。上部の項目を選べば中央の表示が切り替わるのだろう。すごくゲーム感が増してきた。

 じゃあ早速ステータスチェックだ。



名前:-- 種族:地竜 性別:-- 年齢:0


レベル:1

HP:1000 MP:500

スタミナ:500 SP:10

満腹度:-- 状態:軽症


物理攻撃力(STR):100 魔法攻撃力(MAT):100

物理防御力(VIT):50 魔法防御力(MDE):50

素早さ(AGI):50 命中力(DEX):50

賢さ(INT):100 精神力(MND):50

運(LUK):100 クリティカル(CRI):50


属性:赤/青/黄/土/緑/白/黒/紫

耐性:物理耐性 ロック中/精神汚染耐性 ロック中/-- 


称号:白竜/異世界に生まれ落ちた者/喰らう者/--



 ふむふむ。なんだか数値が凄い簡素だ。いや、個人的には細々した数字を出されるよりこう、スパッとした数字の方が好感を持てるのでむしろありがたい。生前は数字に強い方でもなかったしね。

 表示中央の中で、ステータスは左に寄っており、右側には何やらスペースがあるが、今は何も表示されていない。明らかに何かありそうなんだが、触っても念じても一切変化が見られないので取り敢えずスルーするしかない。後々何かの機能が開放されるスペースかも知れんしね。


 上から順に見ていこう。あれ、名前欄が空欄になってる……?前世の名前はこっちでは無い物として考えた方が良いのかな。名前をタッチしても特に何も起こらない。まあ、名前に未練があるわけでもないし、どうこう言っても空欄のままなんだし、このまま名無しでも困らんだろう。

 地竜って種族名なのか。てっきり何とかかんとかドラゴンーみたいなのが付いてると思ってたが、まあ良い。

 性別は……え、無いの?雌雄同体とかそういう奴なのかな?海外では車とチョメチョメさせたりするくらいだからある物と思ってたけど、もしかしたらボクの種は別なのかも。そうだ、ナビィに聞けば判るかもしれない。


――ナビィ、ドラゴンに……って言うか竜種には性別って無いの?

《否定。種族に拠る。》


 ですよねー。はい、しゅーりょーこの話しゅーりょー。なんだか無感情ボイスが胸に刺さるよ。

 次行こう、次。


 年齢0歳なのは、先程生まれたばかりだからって事だろう。間違っては居ないね。

 次は細かな数値類だけど、正直他の比較対象が無いのでこれが高いのか低いのか見分けがつかない。

 でも、これだけは納得なんとも変な感じだ。この”運”の数値。

 前世では運の無さも相まって、不幸人生に拍車をかけていた。クジ類には少額ですら当たった事は皆無で、何をやるにもタイミングを逃し、最悪のタイミングで最悪な事に出くわす、そんな人生だった。決して運だけが原因ではないと自分でも理解っては居るのだけれど……。

 そんな自分なので、運と言うものにはとても懐疑的になってしまう。けれど、運が他の数値とタメ張るって事は、もしかしてこの生では運が良いのだろうか。期待して良いのだろうか。前世では期待はとことんボクを裏切ったし、ボクも他人の期待を裏切り続けていた。今世でもそんな人生が待っていない保証はない。


――……ここでうだうだ言っても仕方ないよな、うん。


 変に沈んでしまった気分を無理やり奮い立たせて他を見ていく。軽症はわかるけど、空腹が空欄ってなんだ?表示がバグってるのかな?いや、まさか。

 まさか空腹を覚えない、なんて事はない……よな?

 困ったときはナビィえもんの出番だ。


――ボクって、腹空かないの?

《肯定。》


 肯定されちゃったよ……。


――えっ、え……ほんとに?なんで?

《エラー。答える権限が無い。》

――……権限がどうとかあるんです?

《肯定。システムスキルのレベルが低い為、答える権限が無い。》


 システムスキルってなんぞ。


――システムスキルってなんです?どうやってレベルを上げるんだろうか。

《ナビゲーション・インターフェイス・システムスキル。スキル欄から選択し、スキルポイントを使いレベルを上げる。レベルを上げればシステム機能が向上する。該当の項目を参照するにはレベルを3まで上げる必要がある。》

――つまり、そのスキルのレベルを上げればナビィがより便利になって聞ける範囲が広がるって事かな?

《肯定。》


 なるほど……その辺りはスキルページ見る時にでも改めて聞こう。

 じゃあ次だ。次なんだが……。

 改めて見るとなんだこれ……ってなるな。今見てるのは属性だが、表記が色の名前なのはこの際置いておこう。問題は数だ。

 全部で、にー、しー、ろー……八つ、かな。多くないかこれ。

 単純な色の名前ってことは、数はそれ程多くないように思える。他に思いつくのは金銀くらい。あ、橙もあるか。土ってのは…ああ、土色つちいろとか言うもんな。

 もしかして全属性だったりするんかね。


《肯定。》


 肯定されちゃったよ……肯定されついでに属性について聞いてみる。


《属性とは、司るそれぞれの神から、全ての生物が生まれながらに賜る加護の事。全ての属性を持って生まれることは非常に稀。》


 稀なんだ……とてもそれっぽい。

 しかし、やっぱり居るのか、神。この物言いからして、複数の神が居ることが伺える。異世界小説物ではド定番だが、その内神との対峙イベントとかやってくるのだろうか…やだなぁ。

 まあそれも、ボクがどっちの転生パターンかにも拠るのだろう。所謂、主人公転生とサブキャラクター転生だ。異世界転生・召喚物では、同じ境遇の登場人物が多々登場する物がある。昨今では複数居て当たり前になってきていた。閑話休題それはともかく

 主人公ルートなら高確率で神と対峙するのはほぼ確実だろう。サブキャラクタールートなら……あれ、なんかサブキャラ転生者って不遇なの多い気がするぞ?大丈夫だよね?そんなこと無いよね?どっちにしろ碌な事にならない気がする。はぁ……やめやめ。


 耐性はこれ、多分高所から落ちた時にでも手に入れたんだろうなぁ……知らんけど。精神汚染はどこでだろう。デフォルトかな?ハハッ

 思えばずっと落ちてる気がする。ドラゴンじゃなかったら死んでたぞ。むしろそのまま死にたかったまである。

 ロック中、ってなんだろう。使えない状態なのか?


 最後は称号だけど、称号ってなんなんだろうね。ゲームやってていつも思うけど、大した機能のないただの着せ替えアイテムだと認識してるんだけど、ここでは何か特別な効果があったりしないかな?そこんとこどうなのナビィえもん。


《大抵の場合、称号には大した効果は無い。》

――やっぱりなぁ。

《しかし、何らかの効果が付属する称号も存在する。》


 おや?どうやら効果のある称号もあるにはあるようだ。ちゃんと実用的なシステムなようで少し安心した。今後は蔑ろにしないようにしよう……。

さて、肝心な称号をタップしてみたが、”白竜””異世界に生まれ落ちた者”は何の効果も無いようだ。”喰らう者”に関しては、なんだか説明文が物騒だ。


〈喰らう物〉

-我は全てを喰らう者。我に喰らえぬモノは無し、全てのモノは我が血肉。戦いでは満ち足りず、我が身の呪いは喰らえと疼く。全ては我のモノ。全ては我の為。((称号取得時にスキル”喰魔”を取得する。))-


 こ、これはなんだか大変なアレな気がするぞい。呪いとか書いてあるし……。

 喰魔というスキルがどういうものかはここには記載がないので、スキルページを見る必要があるようだ。右腕を上げ、スキルの項目をタップする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る