天使はむかし、舞った。
またたび
天使はむかし、舞った。
あれは今より少し前のことさ。
にひひ、と笑う君を追いかけて。
地上へとやってきた僕なのさ。
「君は何処にいるの」
ずっと探したけれど、見つからなかった。
いつもの窓から射す光の中にも。
風が吹く安らぎの丘の上にも。
「天使の資格をなくしてしまうよ」
それを彼女に伝えるために。
そして自分のエゴのために。
僕は地上にやってきたのさ。
「おねがい、戻ってきてよ、好きなんだ」
告白する覚悟だってあったよ。
それくらい君がいなくなることなんて。
予測不可能だったのさ。
「優等生の君は、いつも優しくて」
僕は憧れていたよ、ずぅーと。
優しさは気付かないように振りまく。
それは当たり前なようで、偉大なのさ。
「僕も頑張ったよ、君の隣にいたいから」
君に見合う人になりたかったから。
それでようやく。
一人前の天使になったのに。
「その途端にいなくなっちゃうなんて」
どうしたの?
僕が嫌いなの、それとも何か辛いことが?
言ってくれればよかったのに。
「あっ」
あの忘れられない笑顔は君だ。
慌てて駆け出す、もう少しで追いつく。
でも、もう、彼女の隣はうまっていた。
「あれは人間だ……」
腕を組んでいる。
幸せそうな二人だ。
彼女はもう天使の翼を剥いだみたいだ。
「そうか、そういうことなのか」
苦しくなったよ、泣きたくなったよ。
でもバレないようにこっそり空へ帰る。
心の傷は泉でも癒せそうにないのさ。
「幸せでいてね、じゃないと耐えられない」
ボロボロの思い出に愛しい君が映って。
今でもあの声が響くけれど。
なんだか、懐かしくて切ない今日この頃。
天使はむかし、舞った。 またたび @Ryuto52
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