第三十一話 火蓋を切る
******前書き******
素で予約設定し忘れていました、申し訳ない…
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第七編 北条時頼
第二話
-文永2年(1265年)3月中旬 江華島対岸(現江華郡)-
夜空に幾筋もの光が流れる。流れ星というにはいささか...いや、かなり汚く、硝煙の臭いが強すぎるが。
〔きたねぇ花火だ...とでも言えばよろしいですか?〕
意味合いが違うじゃないか、それ。
〔爆散するのが着弾してからか、内側からかの違いです〕
悪趣味な...それにまだそこまでの威力はないだろ、精々ロケットで飛ばすバリスタみたいなものだぞ。全金属製ともなれば大口径の火砲はまだまだ技術研究止まりだ。もう半世紀もすれば、あるいは量産出来るかもしれんがね。
...まぁ、下劣でブラックジョーク地味た会話でもしていないとやっていられない景色なのは間違いない。意識しないようにしても、五感によって得られる戦場の空気というのは顔を背けたくなる。風に乗って漂う肉と血の焼ける臭い。微かに聞こえる絶叫。闇に照らされる赤く、紅く、赫い影。それらは煙と共に天を衝き、死を身近に感じさせる。既に何度となく経験したのだが、慣れるものでは無い。慣れたいとも思わないが...
目の前の様相とは真逆なことに、日本の人口はかなり増えた。戦乱が駆逐された結果だろう。血生臭い事件やらが起きないとは言わないが、それでも殺気立った人間は人口増加に反比例するかのように、かなり減ったように思う。
〔造船区域は延焼の影響もあり半分程度が炎上しています。その他に流れ弾による集落への被害が複数、ただしそこは敵の拠点です〕
悪くないな。盲撃ちにしちゃ上出来だと言ってもいい。とりあえずしばらくの造船が不可能になればそれで十分、なるべく周辺住民には被害を出さないようにしたいし、そろそろ制圧射撃は停止して上陸戦に移行しよう。組織的な抵抗は今なら麻痺して満足には行えないはずだ、ついでに集落には多少威嚇射撃をしておいた方がいいかもしれん。
『信号使、貝吹け! 上陸させろ!』
命令を発するとすぐに、法螺貝の音が響き渡る。船は陸地へと舵を切り、上陸用舟艇の準備が忙しなく始まった。
『先鋒は、我々が』
『いや、それには及ばない。ただし第二陣の...そうだな、左翼中枢部分を担ってもらえると助かる』
本音としては、今後のことを考えれば小隊全員が生き残って欲しいんだよ。だが政治的に見るなら武勲を立てないなんてことには行かない。戦闘に参加したのに何もせず帰ってきましたでは彼らの顔に泥を塗るどころか下手すりゃリンチされて殺されるからな。その辺を察したのだろう、小隊長は『了解しました』と素直に頷いた。きちんと教育されていることが伺える、文句無しの精鋭集団だと思った。
第一陣が上陸を開始したのが見える。率いるのは阿野義継、希義や義経の兄弟である阿野全成の孫だ。ちなみに一つの転換点として希義以外の兄弟は皆分家し、縁のある地名から苗字を取っている。範頼は吉見、義円は愛智。全成を含め、ここまでは“史実”通りの名づけ方なのだが...義経はなんと奥州藤原氏から二文字を取って、奥藤を名乗るようになった。そういや摂家の方の藤原氏も地方に土着するとそんな感じのノリで「加(賀国の)藤(原氏)」とか「武(蔵国の)藤(原氏)」とかって名乗ってたな...まぁ、彼なりの鎮魂、あるいは禊のつもりなのだろう。そんな感想を抱いたものであった。そしてその奥藤家三代目にして現当主でもある奥藤経衡は祖父の血を色濃く受け継いだのか、若い頃から頭角をメキメキと現して実力で近衛軍参謀長の座に就いた。今では一族の長老として元々から公家だった連中とも折衝をこなしている、武家と公家の融和が形を成し始めていると言えるだろう。
...頭を振って雑念を払う。今は目の前のことに集中しなくては。第一陣の人間には技術者の拉...もとい
『第二陣も動かすぞ、上陸船出せ!』
再び貝の音が響き渡る。迅速かつ統率が取れている動きで船が一斉に動きだした。訓練の成果は存分に発揮されていると判断していいだろう。軍船に搭載した火車の集中運用による地均しに始まり、第一陣は弓兵を中心とした遠距離戦部隊が多い。だがこれではきちんと制圧は不可能なため槍兵と軽装歩兵で構成された第二陣を送り込む。拉...招待を実行するのもこのタイミングだ。余分に人を載せるキャパ自体は何とかなるだろう。本格的な上陸戦では無いから歩兵を大勢連れてくる必要がない分、船には空きが多いのだ。
上陸地点の反対側に目をやると、輸送船が何隻かまとまって港を滑り出るのが見えた。残っているのは...あと半分くらいだろうか。今しばらくの時間稼ぎが必要だな。夜はまだまだ長い、気を引き締めてかかろう。
戦闘は
これは時頼が決めた方針の結果だ。曾祖父同様、戦術や戦略だけでなく軍政家としての才能を示すものと言っていい。加えて言うならば、平安時代の略奪が日常茶飯事であった武士をここまで規律正しい軍隊として運用出来ていたことも評価していいだろう」
あぁ、君の言う通り時頼本人のみの功績ではなく、それまで地道にその教育を行ってきた歴代近衛軍高官の努力もあるのは間違いないがね。この襲撃までに、国内で再三治安維持を目的とした軍の動員で得られた知見があることと、将兵側に命令を遵守する意識が備わっていたことを加味しても、本番できちんとそこを徹底させた点は彼の手腕と断言しても問題ないかな」
さて話を本筋に戻すとしよう。結果から言えば、この戦闘で江華島の人間を乗せた船は無事に日本に到着した。大成功だと言っていい、近衛軍の名声はこれが知れ渡って以降うなぎ登りの上昇に転じたというところからも推測は容易だろう。それまでは世代交代を挟んでいたのもあって、民衆からも朝廷内部からも文献上はしょっぱい評価ばかりだったからな」
そう、基本的には治安維持任務ばっかだったからな。さぞ当該地域の住民からの感情は悪かったことだろう。だがこれが知れ渡ると一気にそれが覆った。農民が率先して防衛拠点の構築に協力し始めたなんて所もある」
ま、人間...というか群衆なんてそんなもんだな。そしてこの裏には隠密衆や近衛軍が積極的に関与していた可能性も否定できない。風聞の伝わり方が義時の時代のそれと似通っているんだ。軍事優先懐疑論を潰す策だとしたら、そりゃあ末恐ろしいことだよな」
ちなみに高麗でも戦果が誇張された上で王亶の支配地域に噂が広がっていたことから、隠密衆の工作がここでも機能していたと思われる。文献からは意図的に消されている節があるが、元寇直前から初期、そして第二次侵攻たる弘安の役が終結した後に彼らが行った情報操作は以降の東アジア情勢を明確に変えた。南洋時代の始まりのきっかけの一つを作ったのは、間違いなく彼らだ」
「そして王亶からすれば到底受け入れ難い噂の流布は、彼の冷静な判断力を奪う。宗主国である元に対して強く増援要請と日本への早期侵攻の必要性を呼びかけると共に、なりふり構わぬ軍備の拡張を強行した。彼らはひたすらに己が牙を磨き続けていくこととなる。その結果、人心が加速度的に離れていくことを気に留めることも無く、な。」
-文永2年(1265年) 4月上旬 開州(現開城)-
その男は獣のような唸り声をあげて読んでいた紙をびりびりに引きちぎった。玉座から立ち上がって、目についた周りの調度品を投げる。青磁の器は真っ二つに、銀の杯は耳障りな音を立てて床に転がった。それでもなお鬱憤は晴れぬと見え、おもむろに抜剣すると辺りを無茶苦茶に切りつけた。見事な掛け軸や絵画にはみるみる傷がつき、男は最後に一声絶叫すると剣をぶすりと絨毯に突き刺した。
『余をこけにした報いは絶対に受けさせてやる、小日本共!!』
王亶、それが彼の名前だった。高祖の血を引くという誇りを生まれた時から教えられてきたにも関わらず、その半生は決して恵まれたものとは言えず、小屋とすら言えない粗末極まる家で細々と生き長らえてきた。
数えで二十を迎えた頃、彼が生まれ育った村に
最初にその目に宿るモノに気がついたのは、侵攻をした部隊長だった。彼は生い立ちを話すことを強要させられた。そして明らかになるその血筋。図らずも得た
即位したばかりのフビライ・ハンは狂喜乱舞した。彼を半島の旗印として扱えば日本への侵略に道筋が立つ。高麗民族をまとめて寝返らせることも可能だとそろばんを弾く。南宋を滅ぼし、高麗を傀儡とする日は...日本の富を我がものとする日は近い。そんな欲望を胸に直々に謁見を許した彼に取引を持ちかけた。
『故郷の王となれ。必要なものは用立ててやろう』
願ってもないことであった。彼は四年で最低限の上に立つ者としての器量を身につけさせられ、故郷へと
王亶は腹立たしさと少しの焦り、一欠片の恐怖を覚える。最初の一年は面白いように物事が上手く進んだ。中原を騎馬で駆け抜け、手中に収める。これほど面白いことは無かった。かつて住んでいた村は焼き払い、馬鹿にしていた連中は皆殺しとした。愕然とした顔を苦悶の表情に変えながら死んでいったのは実に胸がすく思いがした。ところが今はどうだ。江華島に逃げ込んだ連中を仕留め損なうどころか散々手を焼かれ、挙句の果てには悠々と脱出を許してしまった。それだけでは無い。日本への尖兵を送り届けるための船を作る港まで焼かれたのだ。幸い、これが遠因となって南宋との雌雄を決する戦争が準備されつつある。そのため元からとやかくは言われないにしても、国内では調子づいた輩が何かしないとも限らない。それにすら手古摺るようなことがあれば...そこまで思考を巡らして体をぶるりと震わせる。幸か不幸か、今は船が無いから反乱の鎮圧や潜伏者共の発見に全力を注げる。せめて体面だけは取り繕わねば...まかり間違えば自分が消されてもおかしくはない。
『まずはこの国の
目に宿る憎悪の炎は、高麗を焼き尽くすまで消えることは無い。
-文永5年(1268年) 12月上旬 博多-
博多という都市は、この時代で比較的簡単に確保出来る九州北部の艦隊泊地としては最適な場所だろう。九州の軍港と聞くと佐世保があるが、これは明治期まで寒村で、一から整備するには少々時間も金もかかりすぎるとして選択肢には入れなかった。何せ時間が無い、ならば古来から海外の侵攻を防ぐ目的で造られている大宰府の膝元にして最大級の湊を使うと定めるのが最適なのは自明の理であった。
とりあえず、高麗亡命政権の樹立は成功した。加えて日本侵攻の中継拠点をぶっ壊したことで、元は代わりに南宋侵略の予定を繰り上げたとの情報も入っている。一応、これで“史実”と同じくらいの時期まで遅延させることは出来ただろう。準備の時間が稼げたのは大きい。
それにダメ押しで撤退後に高麗に潜んでいる隠密衆があることないこと吹き込んでの諜報作戦を敢行した結果、王亶はブチ切れて部屋を荒らしまくったというのも風の噂で聞いた。戦果は十分だろう。軍備拡張に勤しんでいるとも小耳に挟んだが、それは巡り巡ってこちらを利することとなる。弾圧で物事を強行すれば、政権としての支持率は低下する。それはかの地での不安定要素として常に存在することとなり、元とその傀儡政権である
彼ら一族の指揮権を私が手放し、蔵人所所属の隠密衆と名付けてから既に久しい。衛門もその息子もとっくにあの世へ旅立っているし、そもそもそうやって表舞台に送り出したのは前世のことだ。だからいくら今世は前世の曾孫とはいえ完全に赤の他人となっているのだが、上手くやれているようで安心している。
『司令、蒙古と南宋との戦についての新たな知らせが入りましてございまする』
まぁ、完全に縁が切れたかといえばそうではないんだけどね。
『分かった、部屋はここで良いか?』
『問題のうございまする』
朝廷の直属とすることを決めた時、中には私に最後まで仕えると言って聞かない者達もいた。彼らの気持ちを無下にするのも何だかという気持ちがしたので、せっかくだからと隠密衆よりは小規模ながらも近衛軍専属の諜報機関の設立を当時の院、後鳥羽院に願い出た。流石に一家系が独自組織を有するのは後々の弊害があるだろうということでの折衷案だ。
これに対して院は二つ返事で許可を下さった。「戦の時には情報が何よりも大事だというのは、朕も知っておるよ」という言葉にはとても安心したね。だから
名はそれぞれ「近衛軍探題」、「近衛軍艦隊探題」とした。陸戦における偵察や平時の情報収集及び現代の特戦群に近い任務までをも行う近衛軍探題、航海に必要な海洋情報の観測から所属船の乗組員に対しての風紀取り締まり、敵の艦隊に対しての偵察などをこなす近衛軍艦隊探題という感じだ。それぞれが円滑に運用されるよう、定期的に隠密衆を交えて情報交換を行う「三部議定」を行っている。
『議定にて
艦隊探題の頭として出席していた彼もまた、葛原の苗字を持っている。ふむ、“史実”での襄陽・樊城の戦いか。この情報をこの時期に得られるのは割と早い方であるように思う、異国でも諜報網がよく機能しているのは有難い。それにこの情報が入ってくる影響は大きい。襄陽・樊城の戦いは、他国のものといって馬鹿にはできない重要な要素を秘めているからだ。
と言うのも、モンゴル帝国や元は総じてその騎馬戦力による高速機動と弓や火薬兵器の火力を組み合わせての戦闘が取り沙汰されやすいが、彼らはこの戦いにおいて土木工事と持久戦で南宋を圧倒しているのだ。開封を兵站基地として補給路を整え、襄陽と樊城という難攻不落の双子都市を包囲した状態でひたすらに待ち構えた。敵の救援を全て退けながら、他方で水軍の演習に勤しみ、最終的に水陸混成軍を用いた多元的戦闘で救援に駆けつけた10万もの南宋軍を叩きのめしている。そう、決して元は水上戦闘が全くの不得手という訳では無い。情報戦や偵察にも長けている、多分先の高麗の強烈な抵抗やダメ押しの江華島沖襲撃が無ければ既に何回かこちらに使節という名の偵察を行ってきていただろう。この歴史ではそれが無い...つまり流石の元も“史実”以上にリソースをだいぶ食っているという認識でいいと思われる。そこだけは救いか...
『となると...襄陽と樊城が命脈を保てる猶予はもってあと2年、南宋が滅びるまではそこから2年と見るべきか』
実際は違う、いや
『...やはりあまり時間はありませぬな。例のものはその特性上、陸ならばともかく荒れた海で使えるかと言うと中々習熟がいるようで...全軍に行き渡らせるほどまでの量産は、未だ厳しいものがあるとか』
『そのようだな』
まぁ、冶金技術から考えればむしろ陸海合わせてよく部隊配備にまで漕ぎ着けられる量を確保出来たと褒めるべきなのだが。火車、火筒、そして中世版RPG-7こと大火筒で技術の芽は全て出揃ったと判断して試作品を制作してから早半世紀。あらゆる材料を片っ端から国内でかき集め、戦術理論と補給路の確立、整備に至るまで一から試行錯誤を繰り返した。これで半世紀、しかも13世紀中の完成ならむしろとてつもなく早いと言っても差し支えないだろう。私が全てやった訳では無い、むしろ骨組みを整えたに過ぎないとはいえ、この“やり直し”の中で明確にその努力が後世に物体として残る物。
『おお、言っている傍から音が聞こえますな』
『うむ』
パーン...と乾いた音が鳴る。日本という国をこれから守っていくのにこれ以上無いほどの力を示す破邪の音だ。産声を上げてまださほどの時は経っていないが、それは世界を股に掛ける大帝国を
『銃とはまた、初代の
今となってはその名を知る由もない、別の世界の人間の言葉を借りただけのことだ。そんな言葉を飲み込み、「そうだな」と相槌を打つ。
火縄銃。それは本来ならあと100年は生まれるはずのないモノ。だが、国内の再度の中央集権化を早期に達成したことで確保した莫大な財を注ぎ込み、量産するだけの体力を養うことができる健全な発展を遂げるよう国内経済を整備した。そしていささか軍事偏重ではあるものの、冶金・化学技術及びそれらを下支えする各種インフラの建設によってこの時代での制式化が可能となった。
正直、銃一つでここまで時間が食われるというのは転生当初にはまるで想定していなかった。“オモイカネ”というチートの存在があったから
政治との板挟みに苦しみながら、ようやく一つのブレイクスルーを得られた。量産に尽力した人間は数知れず、心から感謝と敬意を表したい。そして彼らの思いを無駄にしないためにも、元の撃滅は絶対に失敗するわけにはいかない。
銃、という言葉は本来は斧の柄を差し込む穴のことを意味していたんだが、義時は「充」...つめこむというこの漢字の
他の国でも似たような発想の兵器はいくつかあったが、ここまで完成度の高い物を数多く揃えることが出来ていたのはこの時代では我が国だけだ。その戦術、兵科による部隊編成に至るまで、その理論と実現させた概念まで含めれば確実に一世紀以上先を行くものであったと断言出来るだろう」
銃という発明品そのものに注目が集まりやすいが、やはり一端の歴史学者として注目せざるを得ないのはむしろそれを支えた冶金技術、そして各種街道整備やらの物流革命だな。橘逸勢の時から、これらは少しずつ発展している」
お、清岡君から聞いてたか。水車技術とかもそうだな、というか第一次産業の革新から全てが始まるのは英国や寧国やらを見ても分かることだな。我が国も例外では無いことは君も習ってきてることだろうし」
そうだ、寧国と言えばサキ君の母国か。確か面識はあるんだったな...なに、彼女にも聞きに行く予定だって?」
清岡君が推薦したと...はっはー...まぁ君もそういう顔になるよなぁ...あの二人、昔からずっとあんな感じだからなぁ、もどかしくて見てられないぜ本当。特に清岡君の奥手さと言ったらそりゃあもう...」
「私がどうかしましたか?」
「んん!? 何でもないぞ、はっはー。ところでどうしてここに来たんだい?」
「たまたま暇が作れたので少し早いですが、先日連絡した資料をお借りしようと思ったんですけど、お取り込み中だったみたいで...ってあぁ、君だったんだね。今はどこまで話されたんですか?」
「丁度江華島の戦いからモンゴル・南宋戦争を掻い摘んで話して、ついでに銃の語源まで話したところだ。時間も時間だから、文永の役以降は次の時に回そうかと思ってる」
「ちなみに次はいつぐらいを予定してるんですか?」
「えーっと...次の日曜だな。昼過ぎからは特に何にも入ってない」
「ならご一緒しても?」
「俺は構わんぞ。せっかくだからついでにサキ君も呼ぼうかと思ってたんだが」
「サキを!? ...失礼、サキ准教もですか?」
「彼女、専門は外交史だろう? 細かいところだと確か西洋外交史だったはずだが、我が国のそれも結構研究してなかったか」
「えぇ、まぁその通りですけど...」
「じゃ、決まりだな。ついでに清岡君から連絡取っといてもらえると助かるわ、オッサンよか幼なじみの方がその辺は融通効くだろ」
「わ、分かりました...」
「なあに、茶菓子位は出すよ... で、資料だったか? そこの戸棚を開けて右から二番目の所を見てくれ、多分入ってる」
「ええと... これですね。はい、確かに。ありがとうございます。それじゃあ、次の日曜日楽しみにしてます」
「おうよ、また何か欲しいものがあったら気軽に尋ねてきてくれ」
...噂をすればってやつかな? まぁ後方から見守ってるのが一番ってことかね」
てなわけでとりあえず、次回は教授陣三名ってことでよろしく。まぁ多少は勝手を知った仲だろうし変に萎縮することは無いさ」
「時間も時間だし、話がだいぶ逸れてしまったから今日はここまでとしよう。次は文永の役に至るまで、特に元を中心とした日本と対峙しようという国々の戦争準備に焦点を当ててみていこうか。」
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