私にはバットエンドしか待っていないらしい
shiro
第1話
ある夏の日私は補習という悪魔から逃げるため、「走るな」と書かれたポスターを無視して廊下を走っていた。今は誰もが待ち望んでいた夏休み。それなのに、なぜテストで赤点取ったからと言って補習に来なければならないんだ。先生の怒号が聞こえなくなってもただひたすらに私は走る。あ、数メートル先に人影を発見。
「シャドウ先輩!」
猫背で歩く人影に元気よく手を振る。が、見事に無視。まぁ、無視されたぐらいでめげる私でもないので名前を連呼しながら近寄る。でも反応は相変わらず。流石にそれは悲しい。こうなったら最終手段だ。
「シャードウせんぱ、ウギャ!」
可愛らしく小首を傾げながら先輩の前に立ちはだかると手加減という言葉を知らないとでも言うようなげんこつが落とされた。頭を抑えてしゃがみ込むと先輩が冷めた目で見下ろしてくる。これだから変なコードネームが付けられるのだ。シャドウ先輩こと私が所属している部活の部長は、自他共に認める最強のゲーマーだ。レース系のゲームが十八番で、光のように早くゴールするその実力から他のゲーマーに「光のシャドウ」と呼ばれるようになった。ちなみに、シャドウとは性格の悪さから来ている。そんな説明をしている間に性悪先輩は知らん顔で部室の鍵を開けて中に入ろうとする。
「あ、先輩待ってください!」
「この先ゲーム愛好会部室」と書かれた破れかけのプリントの前を横切って先輩に飛びつけば、二人して部屋の中へと倒れ込む。が、そこには体に衝撃を与えるはずの床がなかった。
「は……?」
支えがなくなった体は私達の意に反してどこまでも広がる闇へ吸い込まれるように落ちていく。二人の悲鳴が響く中、ブオン、と機械音のようなものがした気がした。
7月○日☓曜日
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