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「あら、あなた……また、来たの」


 そのひとは、夕陽に背を向け、海を眺めて佇んでいた。


 傾いた陽の鮮やかな、夕方の砂浜。わたしたちの他には誰もいない、静かな海辺。世界から忘れ去られたかのような、穏やかな海辺。

 人はわたしひとりきり。

 

 ほっそりした指。握られた手は、氷よりも冷たい。潮風に、ブロンドの長い髪と羽根のように薄いカーディガンが、柔らかくたなびいている。


 その瞳に見つめられると、もう動けない。


 ――そのひとは、吸血鬼だった。

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