第9話 感染6日目

感染6日目


昨日見たことは両親と優子には伝えた。話し合った結果外にはまだ出れないということになった。今後食料のことはどうするかを話し合った。いざとなれば幸太郎が繁華街まで行って調達してくるしかなかった。お金は置いてくるつもりだったが果たしてその行為が今どれだけ意味のあることなのかはわからない。水と電気は問題ない。人間の仕事なしに全て賄えるシステムになっている。

 今日はリビングに3人が揃っていた。たわいもない会話をしたが、空気は重たい。

中でも父がふさぎこんでいる。

「父さん大丈夫」と声をかけて肩に手を置く、

「ああ大丈夫さ」とだけ力なく答える。

幸太郎はこの時ほど自分がしっかりしないといけないと感じた。

家族の生活が自分の手にかかっているのだと思った。


なんでもいいから情報が欲しいと思った。

期待はしていなかったがテレビをつけてザッピングしているとまさかのことが起こった。テレビにはアナウンサーの姿が映っていた。髪は少し乱れていた。スーツは着ているがネクタイは歪みシャツのボタンはズレて止まっていた。無理もない。

幸太郎はアナウンサーが言っていることを注意深く聞いた。


「国民の皆さん、私たちは今同じ症状で苦しんでいると思います。

我々マスコミが政府となんとかコンタクトを取ったところ。この症状はZウイルスというものが原因だとわかりました。今のところワクチンはありませんが、もし症状が出ていない人がおられましたら。どうか政府に協力して欲しいとのことです。」


アナウンサーの話ではZウイルスは自然にあったそうだが突然変異してこのような症状を引き起こすようになった説があるだとかアルファベットの最後のZなのはウイルスを最初に発見した人間が人類の最後を暗示させるために名付けたかもしれないとかそいうことを言っていた。ただ最後にもし症状が出ない人がいるならば都内の大学の或るウイルス研究所に言ってくれということだった。そこで日本のウイルスの最先端の研究を行なっていて、

人員も配置しているらしい。ただそこの職員も全員症状が出ているのだそうだ。


「幸太郎どうする」と母

「協力はしたいけど、具体的には何をするんだろうね」

この時幸太郎の脳裏をよぎったのは人体実験でもされるんだろうかとも思った。

「職員の人たちも症状が出ているっていうことは研究とかの補助とかじゃないの?」

「それならいいけど」

幸太郎は少し不安だったが母たちをこのままにしておけないと思った。

それに優子が元に戻るなら、人体実験でもなんでもされても構わないとも思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る