第4話 思った事とチュートリアル
階段を降りている途中ふと思ったことがあったので口に出してみる。
「このパーティって、バランス悪いよな」
「・・・言われてみれば」
「見事にアタッカーしかいないわね」
「回復兼サポート役がほしいよな」
「加耶、誰かいい人知ってないか?」
「ちょっと待て悠。何でオレには聞かない?」
「お前の知り合いに俺と噛み合うやつがいると思えないのが1つ。もう1つは男女比を考えて」
「・・・ちくしょう、納得せざるを得ないな」
このやり取りの間に加耶は既に誰かいないか考えてくれているみたいだ。
雅人も誰か考え始めたようだが期待はしていない。
2人に対し俺はと言うと、そもそも知り合いやら友達がいるわけが無いので考えることすらしてない。
すっかり足が止まってしまい、階段の踊り場で頭を悩ます男女とそれを眺める男が1人。
側から見たらどう見えるんだろうな。
「だ〜めだ!いねぇ!」
「だろうな。加耶は?」
「居るには居るんだけど・・・」
「よし、じゃあ行くか」
「「えっ!?」」
「なんだよ?居るって言ってんだから会いに行けば良いだろ?」
「いや、そうなんだけど・・・その、大丈夫なの?」
「そこは信用してるから問題ない。どうしても無理ならちゃんと言うから」
「・・・チュートリアル。終わらせてからにしよう」
あれ?俺的にはすぐに行くつもりだったんだけど?なんで?
「なんかあった時対処しやすいよう準備してからにしようって意味だよ」
「なるほど。でも学校の中の話だぞ?流石に何もないだろ?あと思考を読むのはやめろ」
「ステータスが見れるんだ。調子に乗らない奴が居ないわけがない。思考を読んだわけじゃない。付き合いが長いんだから自然と分かるんだよ」
「ま、とにかくまずは予定通りチュートリアル受けに行きましょ」
てな訳で改めて、体育館に向けて出発。到着。
え、早いって?そこはご都合主義でしょ!
ってのは嘘で、雅人がチュートリアル終わらせると言い出した辺りで歩き始めたので付いて行ってたらもうほぼ到着してました。
雅人のやつ、チュートリアル終わらせるって意見、譲る気なかったな。
体育館の中に入ると、見慣れた光景が・・・広がって居るわけがなかった。
空間拡張されてね?明らかに外観との広さの差がありすぎて軽くパニックになってるんですが?
2人も混乱してるらしい。あ、いや雅人は目を輝かせてキョロキョロしてる。
うん、それ見たら落ち着いて来た。よく見たら種類分けされてるな。
「まずは片手剣のチュートリアル受けに行こうかな」
「じゃあそれぞれ終わったらまたここに集合ってことで」
「え、ちょっと待って。私まだ落ち着けてないよ〜」
「悠は先に行ってこい。どうせ色々試したりするんだろ?加耶はオレが見てるから」
「悪いな。お言葉に甘えて行かせてもらうよ」
宣言通り近くに見えたから最初に受けようと決めた片手剣のコーナーの前まで行ってみる。
端末が震えたのでバイブが鳴ったんだと気付く。
端末を開くとチュートリアルを受けるか否かのメッセージが届いていた。
もちろん受けるを選択する。
すると目の前に剣が現れた。上から落ちて地面に突き刺さる形で。
目の前を剣が通り過ぎるとか心臓に悪いわ!!
『剣を持ってください』
いきなり頭に響く形でのアナウンスもやめていただけますかね?
とりあえずそんな事言ってても仕方ないので剣を右手で掴んで引き抜く。
なんとなくのイメージで剣を構えておく。
『それではチュートリアルを始めます。まずは目の前に的を用意しますので思うように斬ってください』
思うようにって・・・。
目の前に人型の的が現れたので的の左肩から斜めに斬り下ろす。
片手で振ったので剣の重さと遠心力で体が流された。
これが剣に振られるって感覚なのかな?
『今のようにしっかり踏み込まず剣を振ると剣に振られる形になり、重心がブレるのでもう一度先程と同じ斬り方で今度はしっかり踏み込んで斬ってみて下さい』
新しい的が現れたのでアドバイス通り右足を前に出し、しっかり踏み込んで剣を振る。
今度は流されずに重心が安定した。その代わり、剣の重さに筋力の方が付いて行ってないため腕に相当な負担がかかってしまった。
『現状では腕に負荷がかかりすぎるようですね。片手剣スキルは両手持ちも可能となってますので慣れるまでは両手で持つのはどうでしょうか?試してみて下さい』
また的が新しくなって現れたので両手で持ってしっかり踏み込み、同じ軌道で振り下ろす。
今度こそ文句なしにしっかり振れた。
『これが通常攻撃となります。斬り方に型はありませんので自由にやって下さい。続いて技、アーツのチュートリアルに入ります』
投げやり感があるが型が自分に合わなかった場合に困ることになるので後のことを考えたらこれが最善なんだろう。
アーツか。ちょっとワクワクするな。
『今回は1番基本となる〈スラッシュ〉をやってみましょう。アーツを使用するには声に出して技名を言うか、心の中で技名を言うという2つの方法があります。使い慣れてくると感覚で発動できるようにもなるので是非頑張って下さい。それではやってみましょう。先ほどより硬い的にします。まずは通常攻撃で斬れないことを確かめてからアーツで斬って下さい』
現れた的に言われた通りさっきと同じように斬りかかる。
ガキンッ!という若干いやな音と共に剣が弾かれた。
それじゃ、いよいよアーツを使いますか!
〈スラッシュ〉
声に出すのは躊躇われるので心の中で技名を言って発動させる。
そして同じように斬りかかると、今度は簡単に斬れた。
「おおっ!すごいなこれ!」
思わず興奮して声を上げてしまった。
『ふふっ。ようやくそれらしい反応をされましたね』
「恥ずかしいのでやめて下さい」
『すみません。では、〈スラッシュ〉はどんな斬り方にも対応してるので応用が利く技となっています。斬る軌道や順番が決まっているアーツがほとんどなので使用の際は十分注意して下さい。最後に実戦形式のチュートリアルです。相手になるのはゴブリンです。外に居るゴブリンより弱く設定されているので大丈夫だと思いますが、危なくなれば中断するので安心して戦って下さい。それでは始めます』
いよいよ実戦か。なんかちょっと緊張するな。同時にワクワクもしてるけどさ。
ゴブリンが少し離れた位置に現れた。さぁ、実戦だ!
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