武神、始めました

卯月 琴音

プロローグ 『人間』

 ―人間とは何故互いに惹かれ合い、互いに愛し合い、何故子供を作りたがるのか?―


真っ暗な部屋の中、布団を一枚引くとスペースが埋まる程のロフトに布団を引き仰向けの状態で外の夜闇から聞こえてくる鈴虫の鳴き声を聞きながら親についての疑問の解答を少年は出した。

「やりたかっただけか」

酷く冷めた声を恨みと共に吐き出した。

親、二人の異性がただやりたくてやった結果出来た

欲の塊―自分ゴミ



親とは普通自分の子に愛情を注ぎ、知識を与え育てるものだ。

だが、この少年の親は産んだ途端に無を注ぎ、無を与え育てた。否、何もやらなかった。

メスが5日間産後の入院をしてる間は一緒にいた、だが退院したと同時に少年はメスの母に預けられ、オスとメスは何処かへ行ってしまった。

名前を付ける前に。


小学校には金銭関係で通えなかったが、中高では入学試験で主席を取れば入学金やその他諸々が免除される。

少年は頑張った。頑張ったのだ…

中学では頭が良すぎて周りから妬まれ抜けものにされた。

文が駄目なら武を頑張った。

少年は剣道部に入部した。

少年は武の才能もあった。否、有り過ぎた。

入部して一年で全国優勝をした。

だが、人は自分が持っていないものを持っている人を見ると拒絶反応を起こすらしい。

少年は部活をやめた。


少年は高校に上がり高校では静かに過ごそうと決意した。

クラスの皆はとても優しく接してくれた。

一年生までは…

少年は二年生に上がり後半に差し掛かった、就職か進学かが決まっていった。周りは贔屓目ひいきめに見ても勉学が出来るとは言えなかったがクラスは有名大学や大手企業を目指していた。

ある日の事、たまたま少年と同じ中学だった人間が少年のありもしない噂を流した。

それは、自分が優秀故に下を見下すなどのガキの様な嘘だった。

しかし、周りはガキだった。

それから、少年は暴力、無視、噂話、しまいには教師も加わる程だった。

そして、少年は学校に行かなくなった。



もう、いいか…










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