決戦 二
―― 指手猿飛流、
「らあ!!」
飛燕王の嵐の刀身が
光の刃が競り勝つが、その瞬間には飛燕王は別の剣閃の軌跡を描く。
――
「くふふ」
風の斬撃を残すことにより、疑似的な同時攻撃を成したこの技の最後の刺突は、しかし
『黒狂徒!』
ボルゴラックの砂塵の
「蛇腹太君、全開よ!」
リクスの全魔力を込められた剣槍が、長大な銀光の刃を生み出す。
「モード・
光の大剣が姿を変え、黒い鎚頭から発せられた極大の雷光が銀光の刃を打ち消した。
『おおお!!』
「この程度か?」
必死にロー・アトラスの攻撃に喰らい付くルルヴァへ、醒めた声でオヌルスが問い掛ける。
ルルヴァも、リクスも、善良に属する少年少女であることはオヌルスも理解している。
だが魔族というどす黒い悪がある為に、残虐の剣を振り下ろさなければならない。
かつてオヌルスは老賢者に自身の正義を問われたことがある。
その時にオヌルスは「悪の畑へ塩を撒くことだ」と答えた。
二度と絶対に、悪が芽吹くことのないように。
二度と絶対に、そこに悪が芽吹くと誰にも思わせないように。
「ここが限界というならば是非もない。引導を渡してやろう」
堪らずルルヴァ達が防御をした瞬間に、距離を離し、地上諸共を
「
オヌルスの意識が一瞬途切れた。
(……魔力切れ)
ほぼ同時、オヌルスの魂が悲鳴を上げ、激痛が襲って来た。
「ぐおぉおおおおお!」
戦士級でさえ最低でも真達位上位の魔力を喰らい、尽きれば使用者の魂を喰いに掛かる。
「く、ふ、ふふ」
眼前に黒竜、そして暴風纏う精霊刀を握る少年。
「らああああああ!!」
嵐の刺突。
炎を失った
「ふふ、はーはっはっは!!」
白い巨人は消え、翡翠の嵐を受け、オヌルスは地面に叩き付けられた。
* * *
ルルヴァが地面に降り立つ。
満身創痍のオヌルスが聖銀の剣を上段に構える。
「くふふ。見事だルルヴァ・パム」
慢心があった。
侮りがあった。
ロー・アトラスの力に酔った。
この無様の理由はあと何個もありそうだが、元より戦士でも求道者でもなく、正義に狂う亡者の身。
「見事だ聖女、軍人」
空より降りて来る気配は無い。
決着は目の前の少年に託したということだ。
「……」
ルルヴァもまた飛燕王を上段に構えた。
「「つ」」
踏込みは同時だった。
振り下ろしも同時だった。
聖銀の剣が僅かに速く、それはルルヴァを頭頂より両断するはずだった。
ルルヴァの右足が横を蹴った。
「な!?」
傾いた姿勢、左袈裟の軌跡を描く翡翠の刀身。
聖銀の刃がルルヴァを斬るよりも早くオヌルスを斬る、と同時、宙を飛んだルルヴァの体は振り子のように弧を描き、オヌルスの後ろで背中から着地して土の上を転がっていった。
―― 聖銀の切先が地面を斬った。
敗れたと、オヌルスは理解した。
流れ出る血と共に
聖銀の剣を落としたと同時に意識は途切れ、黒騎士は自らの血溜まりの中に崩れ落ちていった。
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