オヌルス・アムン 一
俺の故郷は悪邪に滅ぼされた。
どんなに
どんなに
過去は変わらない
剣を振るい、教えを修め、魔を極めても、心は過去に焼かれ続ける。
虫が踏み潰されるように。
家畜が
罪人が断頭台で首を落とされるように。
そんな死の瞬間さえ許されずに、善良なる故郷の村は消えた。
青々とした草原の一歩先は、
理解することさえできず、無知な少年はただ立ち尽くした。
漂白された感情、その絶望に壊された少年を悪邪は。
山よりも高いその巨大な怪物は。
気にも留めずに悠々と、自らが目指す場所へと去って行った。
……。
……。
幸い、俺は
―― 何よりも、悪邪を呼び出すことはなかった。
「魔法砲【ワンダー・トランポリン】準備完了っと。おーいヨハン」
「了解」
俗物の女錬金術師に
「世話になった。君の作った味噌バターラーメンは実に美味かった」
「俺の方こそ楽しかったよ」
三角巾にエプロン姿のヨハンが手を振る。
「しばらくはここにいるからさ。また寄ってくれよ」
「ああ。ありがとう」
「お―いアタシは?」
開いた射出口の先、結界の向こうには無限の闇を背にした広大な青い世界が在る。
雲よりも遥か天上、星々の世界との境目より見下ろす大地の広さには、いつも畏怖を感じてしまう。
―― この世界を満たすものと比べれば、俺の成そうとすることなど、水一滴の意味もないことだろう。
だから諦めるのかと問われれば、否だ。
たとえ届かず終わったとしても。
俺は俺が信じた正義を貫き通す為に、何百もの地獄を越えて来たのだから。
「
遥か古き時代に聖霊へ刃を向け、故に人の歴史からその一切の記憶を消された『文明』があった。
その中で生み出された
「亡者たるオヌルスの名において 白の門を開け放て」
数え切れぬ程の星を砕き、数多銀河を灰にして、億千万の星系を消滅させる程の死闘を戦い抜いた絶対の力。
虚空から現れた白い魔力が俺を覆い、巨人の姿へと変わる。
「出撃だ
万を数えた軍勢の頂点に君臨した八体の一角。
「
黒い
左手には
「目標『赤土の大森林』の北端。水面雲が出てるから注意しなさい」
「了解だ」
ロー・アトラスの背に黒い
「最終射出工程カウント開始」
ロー・アトラスの立つ床、ワンダー・トランポリンの角度が変わる。
十のカウントが残り一となる。
「
「【清浄の刃 オヌルス・アムン】、ロー・アトラス
爆発した魔力洸の中、一瞬でロー・アトラスは流星の速度となり、
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