第11話

暖炉に薪がくべられる パチパチという災と伴に火が燃え上がる



伸也は 美麗からタオルを受け取るとシャワーを浴びに行った


美麗は 伸也がシャワーを浴びてる間 缶ビールを飲みながら窓の外の粉雪を見つめていた


やがて スッキリした顔で伸也がバスルームから出ると 飲みかけの缶ビールを手渡した



『爽やかな顔してるわ 体重増えたのね なんとなくふくよかだもん』


「今回は 自主トレに入るのも遅かったし 失敗続きだ まぁシーズン開幕には間に合うだろう」


『私 おなかぺこぺこ ワイン飲みましょう 乾杯』


「ああ どうだい? 撮影の方は?」


『順調よ 伸也とつきあってから 何かがふっきれた感じ 伸也は? そういえば契約するんでしょ』


「うん 正直メジャーに行きたかったけど・・・ でも美麗が日本にいるしアメリカには行けないよ」


『ありがとう でもシーズンになればお互い逢えなくなるわね どうなの?』


「お忍びで逢いに行くさ」


『例の白紙の小切手 いくらで契約するつもり?』


「球団のこともあるからな 10億が妥当だろう それで了解してもらうつもりだ」


『すごい 10億円プレーヤーになるのね まるで夢のようだわ』


「恐らく複数年契約になるだろう 3年かな 今年のシーズンオフになったら結婚してくれないか」


『いいわよ 私も32歳 そろそろ芸能界を引退してもいいわね 家庭は私の憧れでもあるし』


「ありがとう 美麗の為にも頑張るよ」



そしてこの日 伸也と美麗は 久しぶりのオフに愛を誓い 楽しく過ごした


二人の愛を順調に育むように



凍てつく夜になり 美麗のマネージャーの山田が車で迎えに来た


二人は 熱い抱擁をしてその日別れた



それから3日後 球団オーナー関係者を含み 3度目の交渉でプロ野球史上初めての


10億円プレーヤーが誕生した



スポーツ関係者やマスコミが騒ぎたて 号外がでるほどの大騒ぎになった



過酷なぺナントレースが始まる


伸也は 開幕投手ながら 3回で6失点をした


しかも 伸也はシーズン中も チームを抜けだし 単独行動で美麗と良く逢っていた


これが災いをもたらしのか 


この年の伸也のシーズンは 調整不足から成績はパッとしなかった


自慢の156キロのストレートが投げれない


変化球のキレも悪い


敗戦が続く


原因は 体重の増加によるものだった


シーズン途中で肩を故障し 結局3勝しかできず シーズンを終えてしまった



その年のオフ


「10億円を返せ」というファンからの苦情をよそに 伸也は 美麗と結婚した


日本中を騒がせ 世間の期待を裏切る男として マスコミは伸也を叩きまくる





誰にも祝福されない二人の結婚だったが 逆にそれが伸也と美麗の愛をさらに深めた 



街角に冷たい風が 伸也をあざけ笑うように つむじ風の様に吹いていく 



ーーー つづく ーーー







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