美麗の幸
@izakayatikatra
第1話
浅野光一は 役者になりたくて エキストラのバイトを始めた
小さなプロダクション 小林プロという街角にある雑居ビルの3階に夢を託した18歳の頃
当時は 五十嵐美麗という女優だけで 他に売れているタレントなんていなかった
大学に通いながら オーディションを受ける日々が続いた
だがいつも不採用ばかり 途方に暮れる毎日が続く
それでも夢を諦めきれず 霧の中を模索するように歩き続けていた
だが二十歳になった時 両親の反対にあい 光一は役者をやめようという気になった
どうせだめでもともと 春の新番組のオーディションを受けて 不採用ならやめると決意した
最終選考まで残り ほんの脇役だが 初めてオーディションに合格した
苦労の甲斐もあり 遠藤監督は厳しかったが 無事撮影は終了した
打ち上げの席でも 遠藤監督から初めて褒められた
「お前は まだ若い これからだ 気ばれよ」
光一にもマネージャーがついた 森野恵梨香 28歳 もちろん独身だ
二十歳の光一には 心強い姉のような存在だった
『おつかれ これからも仕事あるよ 光一に何かを感じるの たまには豪勢に食事しましょ』
「ギャラも入ったし 中目黒の焼肉屋にいきません」
『いいわよ 凜尚苑ね あそこうちの事務所のタレントさん良く行くの でも売れてる人だけよ ふふ』
「行きたかったな~ 初ギャラで さあ行きましょう」
凜尚苑は いかにも高級な雰囲気のする韓国料理店だ
席を案内する係りの女性に個室部屋に案内された
一通りオーダーすると 光一と恵梨香は 生ビールで乾杯した
『光一君 今回の仕事でオファー増えるよ 何かそんな感じがするの 私の直感って当たるのよ』
「今は どんな仕事でも受けますよ 選べる立場じゃないもん」
『でもいい演技してたわよ マスクもいいしね』
「そうですか それは嬉しいな あ お肉来ましたよ 焼きましょう はは」
『サインもできるように練習してね いつでも笑顔よ』
「まだそんな器じゃないし・・・すげ~肉」
『でも注意してね 売れるとマスコミがうるさいから 特に女には気をつけてね』
「はい でも俺に寄って来る子なんているのかな まぁ気をつけます あ 俺トイレ行ってきます」
光一が 個室部屋から店内の通路に出ると 前から綺麗な女性が歩いてくる
五十嵐美麗だ 21歳だがまさに女優の完録を持つ
美しいと言う言葉は この女の為にあるかのようだ
光一と同じ事務所の看板スター
光一は すかさず挨拶する
「おはようございます おつかれさまです」
『あら あなたもやっとここで焼肉が食べれるようになったのね おめでとう がんばってね』
「はい ありがとうございます」
それから2ヶ月後 光一に番組の出演の依頼が何本か入るようになった
CMにも起用された
浅野光一の名前が売れだしたのだ
ーーー つづく ーーー
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