エルデフィア転生記~異世界転生したら魅力極振りSランクの兎耳半獣人美少女にTS転生したので獣耳美少女達とキャッキャウフフの百合百合学園生活を満喫しながら天辺目指します~
第44話「今日は楽しい休息日アフター(中編1)」
第44話「今日は楽しい休息日アフター(中編1)」
今日のティエラちゃんはお泊りだ。
明日はここから登校する気らしい。
という訳で、寝間着もしっかり持ってきている。
ふりふりフリルが可愛らしいピンク基調のワンピースドレスだ。
かぁいい……っ。ハァハァ……っ!
どうしよう、俺の中の私ちゃんが軽く変態モード入ってる。
元男である俺がビックリだよ。
それはともかくとして。
当然ティエラは夕食も食べていく訳で。
いつものディナーが始まる。
今日の料理は――。
ちなみに
その上級な奴が
結構レアで、あんまり市場に出回らない高級食材なのだそうな。
ティエラが来るからって見栄を張ったな?
こんなの普段出てこないぞ~っ。
「うんま~っ! うちこんなん食べたの初めてやっ」
案の定、
「私だって三回目くらいだよ~」
「今日はちょっと仕事が上手くいってのぅ。そのおすそ分けなのじゃ」
どうやらシアが関係しているらしい。
もしかしてどこかで冒険でもして採取してきたのだろうか。
いいなぁ。
内なる私ちゃんが羨ましがっている。
私ちゃんは結構本気で冒険者に憧れているっぽいな。
まぁ、それはともかくとして。
「
ララが自信満々に胸を張っている。
たゆん、となるほどでは当然無いが、この年にしてはちょっと育っているので見るものがある。
「ララちゃんはお買い物だっけ。良い物買えた?」
「沢山色んなもの見て、いくつか買ってきた! 楽しかったよ~」
そんな感じで、和気あいあいと食事をする中、ティエラが一言口にした。
「しっかし、珍しいなぁ。メイドも執事も一緒に食べるなんて」
巨大な長テーブルで、雇用主である一家と一緒に食卓を囲むメイドや執事たちを見て発した、ティエラの言葉に、俺が知る限りの知識で答える。
「色々とお作法のお勉強も兼ねてなんだって」
それに対してパパさんも付け加えるように答える。
「まぁ、それだけじゃないんだけどね」
パパさんは一口料理を口にすると、ゆっくりと租借し、飲み込んでから静かに続く言葉を口にした。
「みんな、僕の大事な家族だからね」
「家族?」
「純人族の中には、身分だの立場だの言って、雇用主と従属者は別々に食事をとるべきだと主張する輩もいるようだけどね。僕から見ればとんでもない。獣人族にとって、仲間はみんな大事な家族だ。そこに身分の差なんてものは存在しない。権力なんて持ってのほかさ。あるのは役割だけ。元々獣人族っていうのはそうやって暮らしてきたんだ」
水を一口飲み込み、一息つくと、パパさんはさらに続けた。
「狩る者。耕して育てる者。考えてまとめる者。誰が偉いわけでもない。各々の力を一番発揮できる役割で営む一つの家族。そう、家族。血の繋がりがなかろうとも、村全体で一個の家族。それこそが獣人族本来の文化だったんだ」
パパさんは静かに、優雅に食事を取りつつ、ゆっくりと語る。
「だから、我が家には身分の差なんてものは無い。雇用主と従う者という役割の違いはあれど、そこに格差は無い。掃除をする者、洗濯をする者、買出しに行く者。炊事担当。教える立場の者。まだ学ぶ立場にある者。そして、外で稼いでお金を家に入れる者。それぞれ様々な立場の者がいるが、全員必要な大切な存在であり、仲間であり、一個の家族なんだ」
パパさんは慈しむ様な優しい眼差しで俺を見つめながら続ける。
「僕はただ、外で働いて家にお金を入れる担当なだけ。そこに本来、身分の差なんてものは無いのさ。だが、純人族の求める文化は違った。純人族のコミュニティではより強力な秩序を求め、その身分に、違いや序列の差というものを求めたんだ。僕達は純人族と共存する巨大なコミュニティの中で生活している。だから彼らに合わせる必要も時には出てくる。今では彼らの求める文化の方がやや優勢だ。だからこんな事になってしまってはいる。だけど、本来、人に身分の差なんてものは存在しない。それは誰かが勝手に決めた事だ。神も国王でさえもそんな事は決めてなんかいない。人はみな、本来は平等なんだ。職業の差なんていうのはただの役割の違いに過ぎない。そう考えるのが本来の、牧歌的で、村民的で、原始的な……あるべき獣人族の心の文化なのさ。だから、うちではその文化に重きを置いている。ただそれだけの話さ」
「ほぇぇ……なるほどなぁ」
ティエラちゃんも納得のようだった。
「それに、一緒に食卓を囲むのはね。配膳の際に、される側の気持ちを知るため。という建前なんかもあるけど、まぁ……うちに来る子達は色々いるからね。例えば親のいない、施設外で育った、孤独なままに保護された子なんてのもいる。そんな子達に、一家で食事をとる家族の食事というものの温かさみたいなものを知ってもらうためでもあるんだ。当然、マナーも学ぶ。けどそれより大事なのは、家族の暖かさを知らずに我が家に来た子たちに、当たり前の暖かな食事をとってもらうため、というものが一番大きい。まぁ、そんな所かなぁ」
ティエラちゃんは感嘆したような大きな溜息をゆっくりと吐き出すと、独りごちるように小さく呟いた。
「実はなぁ……うちのとこの家も昔はそうやったん……」
料理を一口分すくいつつも、それを見つめる眼差しは暗い。
「けどな、うちのおとんに対して、それはおかしい言う奴が現れはじめたんや」
食事の手を止め、静かに続けるティエラ。
「客人の中にな? 下賎な者と共に食べるなんて汚らわしい、不快だ言う奴が現れはじめたんや」
言葉を紡ぐその表情は苦渋に満ちていた。
「うちっとこのおとんより偉いらしい奴がそう言い始めて、はじめておとんは自分とこの食事がおかしいのかもしれへんって思い始めてん。今まではむしろ、会食の際に家族全員で食わん奴らがたまにいておかしい言うとったくらいなんにな」
吐き出すように、言葉と共にその感情を口にする。
「……せやから。うち悔しいねん」
「ティエラちゃん……」
「家族……せやなぁ。それが当たり前でも……本当はええやんな?」
問うようにパパさんを見つめるティエラ。
慈愛に満ちた小さな笑みで返すパパさん。
「ええなぁ。こんな暖かい食事がでけるミリアんとこは、ちょっとうらやましいわぁ」
食事を再開するティエラにパパさんは語る。
「まぁ、純人族の文化もあるし、どちらが悪いとも言えないんだけどね。僕だって会食する際は相手の流儀に合わせているからね」
ティエラに慈愛を含んだ眼差しを向けながらパパさんは続ける。
「けど、僕はこの文化を大切にしていきたいと、そう思っている。それだけさ」
そしてにっこりと微笑むと、パパさんはティエラに向けてその言葉を口にした
「君にその想いがあり続ける限り、僕達の文化はきっと大丈夫だろうって、そう思えたよ」
ティエラはにっこりと微笑むと、しっかりと、力強くうなずくのだった。
そんなイベントもあったりしつつ、今夜のディナーもいつも通りの暖かな、家族の食卓で終わるのだった。
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