エルデフィア転生記~異世界転生したら魅力極振りSランクの兎耳半獣人美少女にTS転生したので獣耳美少女達とキャッキャウフフの百合百合学園生活を満喫しながら天辺目指します~
金国佐門
エルデフィア転生記「遥かなるレムリアース」
プロローグ
第1話「いきなり転生1」
目を開くと……眼の前に何か、天使というか、女神っぽい何かがいた。
結構な美人さんだ。
「死後の世界へ~、ようこそ~」
そいつは能天気にポーズを決めながら何かほざいていた。
「は? 死後の世界?」
見回すと、周囲は一面真っ白な雲。
他には何も無い。
「覚えてませんか~? 貴方、死んじゃったんですよ~」
は?
「だから~、これから新しい命に生まれ変わるんですぅ~」
何それ。聞いてない。
てか、なんだそれ?
まさか!? これはアレか?
異世界転生って奴か? チートか? ハーレムか?
最近やたら流行ってる、流行りすぎててもはや食傷気味で、そろそろ出版会社側も飽き始めてかつてのファンタジー小説みたいに大賞に応募する際には名指しではぶかれる事になりそうな、あの小説サイトで人気の某ジャンル的なアレなのか!?
「……まぁ、そうですね。大体それでいいです」
うぉ!? 心の中読まれたし!?
「そりゃあ読めますよ~。神様ですから~」
豊満なバストを主張するが如く胸を張りやがるこの童顔眼鏡女神。
……何が起きてる?
これは一体どういうことだ!?
俺は少しだけ、さっきまでの記憶を思い返してみた。
俺の名前は高橋直樹。38歳。牡牛座。無職。
正確には精神障害者手帳持ちで、障害持ちの人をまともに社会復帰できるよう雇用しながらサポートしてくれる会社で働いていたのだが、体を壊してしまい、そんな一般職よりも若干程度はきっと楽なはずの職さえ失ってしまった。
統合失調症扱いされてはいるが、多分ネット上でリアルにストーカー被害に合っている。
なにせ、心が読める少女の小説をサイトで出したら、翌日には普段使っているTRPGサイトで「ななせ2」というハンドルネームが登録されるくらい、意味不明な偶然? と他人は言うが狙っているとしか思えない現象に、ほぼ毎日付き合わされているからだ。
ちなみにななせ2というのは、ななせふたたび、という有名小説のパクリだろ? という事なんだろうが……実際はかなり違う話になる予定だったので、このネットストーカーは大分リサーチ力の乏しい奴か、ただの馬鹿と思われる。
何のためにそんな事をするというのか、時間と労力に見合わない、だからそんな奴がいるはずない。と思うだろうが、理由は恐らく愉悦だ。ガスライティングとして否定しやすい程度のくだらない、証拠にならないから被害届けを出してもどうしようもないイタヅラを繰り返して、俺が弱っていく様を見て喜んでいるのだろう。きっと馬鹿なんだろう。
この間なんて、鯖の缶詰食べたら、翌日にそのTRPGサイトに「サバ」ってハンドルネームが登録されたりしたからな。
これ、リアルだからな。
月1とか週1ならバイアスだのなんだの言えるのだろうが、ほぼ毎日なんらかのこちらが気にならざるをえない言語を俺が多用するサイトに書き込まれているんだ。
俺の実名だった事さえあるんだから言い逃れできるはずもあるまいっ。
まぁ、こんな目に合うのも全て俺の運の悪さによるものなのだろう。
上記名前を画数で占ってみればわかる。
同じ画数が二個あると通常の何倍もヤバイのだそうだ。
良い運気の画もあるが、悪い運気の画が完全に、人間関係がおかしな事になる、と出ている。
しかも両方二個だ。二個ある場合、良い運気のものさえ悪化する事があるらしい。
……俺はとにかく運が悪い。
色々がんばってきたが全部ダメだった。大学を卒業しても就職氷河期にぶち当たり、まともに就職なんてできやしなかったし、もうこれ以上詳しいことを書くとむなしいし長くなるので省略するが、とにかく人に裏切られ騙され邪魔され続け、人間不信になって地の底を舐めて、でもそんな人生だからこそ書けるリアリティを、と絶望的なストーリーを、泣いて笑えるエンターテイメントに乗せて描きたいと、それだけを最後の希望として努力してきたんだ!
……だが、な○うでも3000PV。カ□ヨムでも☆10がマックス。
芽が出ることは無かった。
親にも見離され今では住む場も失い、子供部屋おじさんからダンボールハウスおじさんへと悲しいジョブチェンジを果たし、もはやネットに書き込む事もできないから執筆もできなくなり、考えることをやめた。
正直、人生に失望しきった所だ。
底辺でずるずると、未来も希望も無し。
このまま幸せも何も無い、意味も無い人生をただダラダラと過ごすくらいなら……。
俺はその扉を開いた。
もう疲れた。
終わらせたかったんだ。
俺は前の職場で偶然見つけた、見知ったビルの屋上に上っていた。
柵があるだけの実にいい感じのとこで、そこは今時珍しいくらいに、飛び降りるにはもってこいのベストプレイスだった。
「さて、死ぬか……」
そう意気込んだ俺を待っていたのは――。
――先客だった。
柵の向こう側に佇んでいたのは……。
めっちゃ美少女だった。
白いワンピースに麦藁帽子という、男の願望そのもののような清楚な格好。
髪は烏の濡れ羽色。足元まで届く美しいロングの長髪。小学生くらいに見える小柄な背丈、つるぺったんだろうが味のある、ほんのりふくらんだ胸。くびれたウエストは華奢で、力強く抱きしめたら折れてしまいそうなほどに儚い。美しい曲線を描いた臀部と脚。肌の色は陶器のように白く、顔色はほんのりと朱に染まり……。
顔立ちに至っては、もはや芸術と言えた。整いつくした配列に、パッチリ開いた可愛らしい目。形の良い鼻に、むしゃぶりつきたくなるような蕾のように可憐な唇。こんな子を彼女に出来たら、今までの絶望も全部帳消しにできるかもしれない。
それくらいの、ドチャシコクオリティ!!
気がついたら、俺は声を発して駆け出していた。
「あんたみたいな美少女が死んじゃいけない!」
走って、走って、その手を掴んだ。
そしてそのまま力づくで柵の内側に引っ張り込んで……気がついたら、正座させてめっちゃ諭していた。
具体的に何と言ったかは覚えていないが、何か涙ながらに言い聞かしていた。
いいおっさんが泣きながらキモ声でなんか延々口にする言葉は、きっと向こうからしたらめっさ迷惑だったかもしれない。
それでも俺は、思う存分自分の思ったことを伝えた。
俺なんかと違って君は若いし未来がある、可愛いからこれから絶対幸せになれる、なんかそんな事を力説した気がする。
自分の事を棚に上げて。滑稽なほどに命の大切さといかに生きるべきかを説いた。
その罰だったのかもしれない。
伝えた後、疲れて少し体を傾け体重を預けた柵が――。
――倒れた。
少女が必死に手を伸ばしていたが、俺はその手を握らなかった。
俺は諦めた顔で笑いながら「君は生きろ」と最期の言葉を伝えてから……。
落下して――。
なんかエグイ音がしたような気がする。
で、次に目を開けたら、ここだった。
「はい、概ねそんな感じでしたね」
え? 俺、転生するの?
「そうですよ~」
もうゴールしちゃダメ?
「ダメです」
あんな地獄みたいな糞人生繰り返すくらいならここで終わりにしたいんだけど。
「次の人生はきっと幸せですよぉ」
どうせ俺の時もそういって、この結果だったんだろ? もういいよ。無に帰してくれ。
「それはできません」
なんで?
「貴方が死の直前に善行を行ったからです」
は?
「貴方、救ったじゃないですか。未来ある少女を」
けど、俺の死ぬ……なんていうか、グチャっとしたの見ちゃってトラウマになっちゃってるかもしれないし、相殺で無コースでいいっすよ。
「ダメです」
どうして。
「あの子は、その後、大成しました。貴方のおかげで、です。貴方が救わなければ、ありえなかった大きな事を成し遂げたんです」
はぁ。
「間接ゴールです」
間接ゴール?
「はい、スポーツで言うアシスト点です」
アシスト点?
「貴方がいたおかげで、世界が変わったんです。彼女が死ななかったからです」
……じゃあ、俺の生きていた意味は?
「ナイス人生で~す」
そっか、俺、何かの役に立てたんだ。
「はい」
じゃあ、もうゴールしてもいいよね?
「ダメです」
なんでだよー。
「とにかく、くだらない会話で説明時間なくなっちゃいましたけど、貴方はこれから今とはまったく違う世界で生まれなおしてもらいます」
はぁ?
「ただし、善行を行ったので一つだけ願いが叶います」
何か唐突に足元に穴が空いた。
そこへと吸い込まれる。
がしっと雲にしがみつく。
力強ぇ!?
「何が欲しいですか? 早く言わないとチート無しになりますよ、はやく」
い、いきなり言われても……。
いやいや、ぶっちゃけ何が欲しい?
ここで何も言わなかったらまた地獄だぞ
幸運か? リセット再スタート能力? いやいやそもそも、そんなスキルシステムみたいのあるのか?
「どんな世界!?」
「ファンタジーです!」
「剣と魔法な?」
「はいそうです!」
じゃあ魔力か?
でも魔法が強いだけで肉体が貧弱じゃすぐ死ぬだろ?
どうせならそこそこ楽しく生き延びたい。
じゃあ肉体か?
だが物理パワーだけでいけるか? せっかくの魔法パゥワァーのある世界だぞ?
ってか、吸い込む力やたら強ぇな! ダ○ソンか!
「はやくー!」
「そんな事言われても――」
そうだ。
――全部だ。
まず、力もそうだけど、チート? ハーレム?
どれか一つとか、ふざけんな全部だろ!
今までの糞人生思い返してみろ! それくらいしなきゃ割に合わん!!
だから、まずはハーレムだ!
「美少女――」
――の嫁をまずは沢山ください、って言うはずだった……。
そこから続けて沢山のお願いを言うはずだった。
だが、無残にも俺の手は――
――正確には俺の掴んでいた雲が。
前の人生で終わったときと同じようにガラッと崩れて。
俺の意識は、雲の下にあるなんか、よくわからない何かに向けて吸い寄せられていくのだった。
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