何をするにも遅すぎて。
葵流星
第1話 2016年6月28日
ほんのりと温かい風が頬をなでていた。
この狭い部室には十分すぎるくらいに熱量を持っていた。
この文芸部に入り浸るようになってからもう1か月以上も過ぎているのには驚くばかりだ。
あいにく、今は矢矧と僕しかいない。
僕はとりあえず読みかけていた人間失格を横目に矢矧を見ていた。
矢矧は、家から持ってきたであろう新聞に目を通していた。よほど、小さい字があったのだろう。目を細めていた。
「ん、どうかした?」
僕の視線に気づいたのか声をかけてきた。
ぼくは「今日は、他に来ないのかなって?」
そう答えた。
矢矧は、やや怪訝な顔をして今日は先輩も林達も来ないと言った。
普段は、来ているので今日は何かやることがあったのかもしれない。
なんとなく、気まずくなったのでぼくは矢矧に図書室へ行くと言って部室を出た。
図書室に、来たものの特にやることもなく。
いつものように新刊の週刊誌にかるく目を通し再び部室に戻った。
部室に戻ると、矢矧はまだ新聞を読んでいた。
けれど、眠そうなのかメガネ越しに目を閉じかけていた。
「おかえり。」
「…ああ、ただいま。」
「何か面白いことはあった?」
「特にないかな。」
「そう。」
矢矧は、かるく伸びをして再び、ぼくを見た。
「…雨は嫌ね、何色でも。」
「雨に色はないだろ?」
「ええ、でも色で表せるでしょ?」
「…まあ、確かに。」
ぼくは矢矧にそういい再び小説に目を落とした。
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