第88話 元凶の魔物
『ーーグオォァアアアアアア!!』
しばらく魔物を倒していると、森の奥から魔物の雄叫びが聞こえた。
魔物達は、その雄叫びを聞いた途端に俺達を無視して我先にと、森から出ようとしている。
魔物の数が一気に膨れ上がり、倍以上になっている。この数の魔物が森から出れば、外の冒険者どころか、カタクの町はひとたまりもないだろう。
「ジン! 俺達でここの魔物はどうにかするから、さっきの魔物を頼む! たぶんあいつが元凶だ!」
「きっと、元凶の魔物から逃げてるんだと思います!
元を絶てば、魔物の勢いも収まるはずです!」
「わかった! それじゃ行ってくる!
リオ! シロにも戦わせろ!」
「え? あ、うん!」
森の外周は手薄にするわけにいかないので、俺一人で元凶の討伐に向かった。
向かう前にチラッと見ると、リオがシロの異空間に繋がるゲートを開いていたので、俺が抜けても大丈夫だろう。
※ ※ ※ ※
俺はマップを確認しながら、雄叫びが聞こえた方向に向かっていた。
奥に向かいながらも、魔物が逃げてくるので、ある程度倒しながら進んでいたが……
「どこだ? 魔物のマーカーだらけでわからないな……」
マップは魔物のマーカーが動き回っていて、どれが元凶の魔物なのかわからない……
「……ん?」
魔物の逃げてくる方向をマップで確認していくと、全く動かないマーカーが1つあった。
俺はマーカーに向かって一直線に進んだ。
マーカーは動かずにジッとしていたが、俺が近づいてくるのが分かったのか、こっちに向かって移動を始めた。マーカーが近づく程に、木々が折れたり倒れる音が大きくなってくる。
「こいつか……」
木々の隙間から体が見えてきた。
元凶になった魔物は『ドラゴン』だった。体はくすんだ銀色の鱗に覆われ、二本足で立っている。体長は、木々を踏み倒せる程の大きさだ。
俺が立ち止まりながら、様子を伺っていると、ドラゴンと目が合った。
『ーーグルォアアアア!』
俺を見つけたドラゴンが、雄叫びを上げる。威圧も兼ねているようで、空気が痺れる感覚があった。
俺は血刀を構えて距離を詰める。木々の隙間から見えている首元に向かって縮地で詰め寄った。
「っな!?」
首元を一刀両断しようとした時だった。
俺は
辺りは木々が倒されて、ドラゴンの全容がよく見える。ドラゴンには、頭が2つあった。
「双頭竜かよ……」
俺は呟きながら、鑑定してみると……
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【ツインドラゴン】Lv.90 / SSランク
【スキル】不明
【捕捉】不明
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名前とレベル、ランクまでしか分からなかった。SSランクまでくると、鑑定でも見れないものが多い。
「あの2つある頭が邪魔なんだよな……」
俺は体と血刀に魔素を込めていく。魔素が馴染んでいき、血刀は刃が黒く染まり、体から黒い湯気が上がり始めた。
血刀に光と風の属性を
『ガルラァァァ!』
「意外と硬いんだな……」
斬撃は双頭の首に当たったが、軽く切り傷を与えた程度だった。あの銀色の鱗が硬いようだ。
ツインドラゴンは、鱗に傷を付けられて怒っているようだ。
ツインドラゴンは翼を広げると、空に飛び上がった。そのまま、滑空しながら、俺に向かって突進してきた。
俺がツインドラゴンの突進を回避すると、そのまま森に突っ込み、木々を薙ぎ倒しながら止まった。
俺が、縮地で距離を詰めて斬り掛かるのと、ツインドラゴンが振り返るのは同時だった。
目の前にドラゴンの大きな口が開かれる。口の中には黒い塊があった。
「ブレス……っ!」
俺は魔力強化<火>で上空に回避した。
回避すると同時に、爆発音が鳴り響きブレスが放たれた。ブレスは一直線に伸びて大地を削った。
俺が、ブレスの衝撃波を堪えていると、目の前にもう1つの頭が現れて、口を開いた。
「またかよ! 間に合えっ!」
ーー俺の体がブレスに包まれた。
「なんとか間に合ったか……
また、防具がボロボロだ、またシェリーさんに作ってもらわないとな……」
俺はブレスに飛ばされて、ツインドラゴンがいた場所から数キロ程離れた場所にいた。
ブレスの威力はフレイムドラゴンよりも凄まじかったが、魔素のガードで何とか助かった。防具はボロボロだが……
「よし、行くか!」
俺は体に異常がないことを確認して、ツインドラゴンのところまで戻ることにした。
しばらく、走ったところで、ツインドラゴンが見えてきた。ツインドラゴンは移動せずにその場に蹲っていた。俺が近づくと、頭をあげてゆっくりと体を起こした。
『ガラルァ!?』
「なんだ? 倒せたと思ったか?」
俺が目の前に現れると、ツインドラゴンが驚いたような素振りを見せた。
俺は血刀を構えて、ツインドラゴンの首元に飛び込むと、すぐにもう1つの頭が口を開いた。
「またブレスか?」
俺は作り出していた、凝縮させた赤黒い火球をツインドラゴンの口の中に放り込んだ。
『ギャオァァァァ!』
ツインドラゴンが悲鳴を上げた。火球が口の中で燃え広がっり、黒い炎は燃え続けているようだ。悲鳴を上げた頭は、のたうち回っている。
「こっちがガラ空きだぞ!」
俺は呆気に取られている頭を、魔素血刀で首元から切断した。血刀に魔素を込めれば容易く切断することが出来た。
もう1つの頭の方を見ると、やっと火を消すことが出来たようで、口から黒い煙を出しながらこちらを睨みつけている。
『グラオァァァァァァァーー』
ツインドラゴンが雄叫びを上げると同時に、首元から切断した。
「首が1つになったら、他のドラゴンと変わらないな……とりあえず、みんなの所に戻るか」
ツインドラゴンを討伐した俺は、ツインドラゴンをアイテムボックスに収納して、森の入口の方へ向かった。
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