第87話 大量の依頼と西の森
「なんだこれ……」
ギルドに入った俺は、中の光景を見て驚いた。
依頼書が依頼ボードに留まらず、壁を埋め尽くすように張り出されていた。
「おい、この依頼書の数はなんだ?」
丁度、ギルドから出ていく冒険者がいたので、声をかけた。
「ん? あんたら、他所から来たのか?」
「最近、西の森から魔物が出てきてるのよ……いくら倒しても出てくるからキリがなくて……」
「そういう事だ! 急いでるから、じゃあな!」
どうやら、森の魔素が広がったことで、魔物が溢れているようだ。
冒険者はかなり増えていたはずだが、それでも捌ききれていないらしい。
「色々大変な事になってるみてぇだな。少し滞在して手伝うか?」
「いいのか? 俺は自分の尻拭いだが、レン達は先に東へ向かってもいいんだぞ?」
「気にするなって言っただろ? どうせ、ダンジョンを攻略出来るのは俺たちだけだしな」
「そうですね、ここで、差をつけてもリオさんのゲートがあれば、直ぐに追いつかれそうですし……」
ユダが、いつの間にか現実に帰ってきていた。
レン達がそう言ってくれているので、手伝ってもらうことにした。
「それじゃ、頼むわ!
とりあえず、現状を確認するために、エルさんに話を聞いてみるか」
「それじゃ、私はどんな依頼があるか見てくるね!」
「では、僕も一緒に依頼を確認に行きます」
リオとユダが依頼を確認しに行ってくれたので、俺とレンで情報を聞きに行くことにした。
受付カウンターでは、エルさんが作業をしていた。カウンター越しに見えるテーブルには依頼書の山が出来ている。
「凄い依頼の数だな、俺達も依頼を処理するの手伝おうと思うんだが、構わないか?」
「他所からの応援の方ですか? 依頼を受けて頂けるならどなたでも歓迎ですよ……1人2人増えたところで変わらないですけどね……」
エルさんは俺達の方を見ることなく、書類作業をしながら、返事をした。
エルさんが少しやさぐれている……
「俺達が手伝えばかなりの依頼をこなせるんじゃねぇか?」
「少し力量がある人が増えたところで……ってジンさん!? 先程ダンジョンを攻略したはずじゃ……えっと、そちらの方は?」
エルさんが色々困惑している。
俺達がダンジョンから出てきて、まだ1時間も経っていないのに、攻略したはずの人が目の前にいたら困惑するのも無理もない。
「こっちにいるのは、レンだ。さっき東のダンジョンを一緒に攻略して来たところだ。」
「レンって、あのBランク昇格記録2位、武術大会2位のジンさん並の実力を持った冒険者のレンですか!?」
「確かに……俺はジンに色々負けてるが、改めて言われるとグサグサと……」
レンが隣で嘆いている。俺からは何も言えなかった。
「まぁ、そのレンで間違いないんだが……それぐらいにしてやってくれ。
それより、今の現状を教えてくれるか?」
「あ……すみません……
それでは、現状を報告させていただきます。ジンさんがオーガを討伐されてから、1日程経った頃からですーー。」
エルさんの話をまとめると、俺がオーガを討伐したあと、森の状況を常に監視していたらしい。それから、しばらくして、森の中にいた魔物が突然、外に溢れ出てきたらしい。
現状の情報だけでは、なんとも言えないが、魔物が大量発生したことで、住処を追われた魔物が新しい住処を探すために、外に出てきているのではないか、というのが、ギルドの推測なのだそうだ。
「なるほどな、それで、ギルドとしてはどうする方針だ?」
「幸い、森から出てきている魔物は差程強くは無いので、低ランク冒険者だけでも対処出来ていますが、これからも森の中に魔物が増え続けるとどうなるか分かりません……
なので、高ランク冒険者の方にはできる限り、森の奥にいる魔物の討伐をお願いしているのですが……」
「それなら、俺達は森の奥に向かえばいいんだな」
「何かありましたら、ギルドまで報告お願いしますね。
森の中の魔物はBランク以上の魔物が殆どなので、気をつけてくださいね……」
「Bランク程度なら問題ねぇな! ダンジョンの中はそれ以上だしな」
「Bランク程度ですか……」
エルさんの笑顔が引きつっている。事実、ダンジョンにはBランク以上しか出てきていないのだが……
「依頼書見てきたよー!」
エルさんから情報を聞いていると、リオ達が合流してきた。
「俺達は、森の中の魔物を討伐することになったんだが、森の中の依頼はあったか?」
「色々あったけど、殆どの依頼が被ってるんだよねー」
「張り出されている7割は、森の外の依頼ですね」
「依頼はどうすんだ? 何度も往復してたんじゃ時間の無駄じゃねぇか?」
「そうだな、報酬はいらないが、依頼を処理するのが目的だからな……」
「それでしたら、討伐部位を持ってきていただければ、その時に依頼と照らし合わせましょうか?」
俺達が、依頼をどう処理するか話し合っていると、エルさんが提案してくれた。
「それなら、一々戻ってくる必要はねぇな!」
「それじゃ、まずは森の中を探索しに行ってみるか」
俺達は森に移動することにした。
※ ※ ※ ※
「みんな町を行ったり来たりしてるねー」
「素材を持てる数には限りがありますからね」
森に向かう途中、冒険者達と何度もすれ違ったが、みんな袋いっぱいに素材を詰め込んで運んでいた。
森の外に出てきているのは、Eランク、Dランクの魔物ばかりみたいなので、低ランク冒険者でも大丈夫そうだ。
ちなみに、魔導船<陸Ver.>をユダに運転してもらって移動にはしている。冒険者達はすれ違う度に固まっていたが、気にせず進んだ。
「森の中の方が魔物の数が凄いことになってるみてぇだな……」
レンに言われて、マップで森の中を確認してみると、森の外側に魔物が集まっていた。
「冒険者が何人か戦ってるみたいだな」
「まずは、森で戦っている冒険者の援護に行きますか?」
「そうだな、森の近くで魔導船を停めてくれ」
俺達は森の中に入った。
森に入ると、すぐ近くに戦っている冒険者達が見えた。
「レクス! 加勢しようか?」
「ジンじゃねぇか! ここは俺1人で大丈夫だ。向こうを頼めるか?」
レクスが言う方向を見ると、ステアとリリィがオークと戦っていた。ステアが前衛で戦い、後衛のリリィが魔法で援護しているが、数が多いので、少し押されている。
「あぁ、任せとけ」
俺は血刀を構えて、縮地でオークまで距離を詰めてオーク達の首を斬り落とした。
「兄貴じゃないか!」
「ジンさん!いつこちらに?」
「2人共、強くなったんじゃないか?
俺達は、さっきカタクに来たところなんだが、色々大変みたいだから手伝いに来たんだ」
ステアはともかく、リリィに関しては昔はオークに襲われて逃げていたのに、今では立ち向かえるようにまでなっている。かなり成長しているようだ。
「まだ奥から来てるよ!」
リオが火球でオークを倒しながら叫んだ。
森の奥からは、次々と魔物が沸いてきている。
「やっとこの武器を試せるな!」
「僕も使ってみたかったんですよ」
レンとユダが西のダンジョンの守護者から受け取った武器を構えながら言った。
レンが闇魔法を剣に纏わせながら、魔物を蹴散らしていく。ユダはレンの攻撃を躱した魔物を確実に仕留めていった。
『ーーグオォァアアアアアア!!』
しばらく魔物を倒していると、森の奥から魔物の雄叫びが聞こえた。
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