第82話 成長促進と第3層


「できそうか?」


俺は、全てのミアズマワームを消滅させた後、水魔法で辺りを冷ましながら、レンに聞いた

レンは炎流を作ろうと、必死に頑張っている

爆発させても大丈夫なように、ドーム状のバリアの中でやっている


ちなみに、リオとユダは魔石を拾いに走っている

リオがバリアから10m以上離れられないので、ほとんどの魔石をユダが拾っているんだが·····


「·····無理だな、混ぜるだけでも難しいのに、あんなの制御出来ねぇ·····ジンはどうやって制御してるんだ?」


レンが爆発を起こしながら、返事をした

制御が相当、難しいらしい


「もしかすると、俺の場合は複合魔法とは違うのかもしれない」


「どういうことだ?」


「俺のユニークスキルの能力付与エンチャントは前に話しただろ?」


「あぁ、物に属性や能力を付与するスキルだったよな·····もしかして、魔法に属性を能力付与エンチャントしてるってことか!?」


俺の説明を思い出したレンが、大声を上げて聞き返してきた


「意識してやってたわけじゃ無いんだが、俺がすんなり複合魔法を使えるのは、その可能性が1番高い気がするんだ、ちょっと、そこを使わせてくれ」


そう言って、レンと場所を変わってもらい、バリアの中に低威力の炎流を作る

ただし、今回は能力付与エンチャントを使わないのを意識して·····


火球と竜巻をぶつけると、火球がゆっくりと、竜巻に混ざっていく

半分ほど混ざったところで、竜巻消えた·····

すると、竜巻に混ざっていた火球が行き場を失って爆発してしまった


「やっぱりか·····能力付与エンチャントが勝手に発動してたらしいな」


俺のユニークスキル、能力付与エンチャントは基本的に無意識で使っていることが多い

料理に能力を付与する時は、特に意識はしていない

逆に、付与したくない時は意識して付与しないようにしていた


「ってことは、俺がどんなけ頑張っても複合魔法は使えねぇのか?」


「それはどうでしょうか、レン様が複合魔法の練習をし始めた時と、先程の複合魔法とでは、雲泥の差がありましたよ

つまり、 成長促進グロースプロモーションで確実に成長しているのです!

複合魔法は練習できる環境が少ないので、リオさんの空間制御エリアコントロールが無いと、練習出来ませんが·····」


俺とレンの話を聞いていたらしく、ユダが話に入ってきた

確かに、レンの成長速度は早い

初めは、火球に竜巻をぶつけた途端に爆発していたのに、最後は半分以上混ぜることが出来ていた


「そうか·····成長してるのか!

俺はまだ、強くなれるってことだよな?」


レンが嬉しそうに言ってきた

きっと、 成長促進グロースプロモーションで成長速度が早い分、自分の成長限界が見えてしまっていたんだろう


「やっと集め終わったー!ユダくんは途中で、集めるの手伝ってくれなくなるし·····」


「あ!すみません·····レン様とジンさんの話が聞こえたもので、つい·····」


ユダが分が悪そうにしている


「集め終わったんなら、3層に行くぞ!」


そう言って、祭壇の本を手に取って魔力を込めた

すると、祭壇の奥の壁が白く光って、ゲートになった

俺達はゲートをくぐって、3層に向かった




◆第3層·····枯れた森


3層は森だった

木々は枯れて、中程から折れているものもある

足元はゴツゴツした石が目立ち、枯れた草が点々とあるだけだ

葉のない木々の隙間から、夕日が見える

2層にいる間にかなり時間が経っていたようだ


「もう夕方か····攻略は明日からにするか」


「それじゃ、魔導船を置ける場所を探さないといけねぇな·····ユダ!場所を探してきてくれ!」


「はい!すぐに探してきます!」


レンがユダに指示を出すと、ユダが空高く跳んで行った


「それじゃ、俺は飯の準備でもするかー」


「やった!私は味見係する!」


場所探しはユダに任せて、俺は晩飯を作ることにした

リオが味見係とか言う、謎の役割を作って俺に付いてきた


「つまみ食いしたら、飯抜きなー」


「えぇー·····」


やはり、つまみ食いが目的だったらしい




俺が晩飯の準備をしていると、ユダが降りてきた


「この辺一帯は枯れた木々があるだけで、他には何もありませんでした·····」


ユダが申し訳なさそうに言った


「そうか·····それじゃ、ここを更地にするしかねぇな」


「レンくん、なんでもありなんだね·····」


レンが木々の伐採を始めると、リオが呟いた

『も』ってなんだ?俺を含めていないか?




「よし!出来たぞ!今日の晩飯は

『コンバットブルとホーンラビットの合挽バーグ』だ」


俺は作った料理を、切り株のテーブルの上に置いた

晩飯を作っている間に、日は落ちて、辺りは暗くなってしまった

明かりは、リオが浮かべている光球のみだ

レン達も、木々を伐採して魔導船の設置を済ませていた


「ハンバーグだぁ!」


「ハンバーグじゃねぇか!久しぶりに日本食が食える!」


「材料は魔物だけどな

醤油ベースのソースにしたから、日本の味に近いはずだぞ!」


「レン様、この肉の塊は一体·····」


「俺の故郷の飯だ!食ってみろ!」


「はい·····」


ユダが1口サイズにハンバーグをカットして、恐る恐る口に運んだ


「·····!?」


「美味いだろ?」


「ふぁい!·····こんなに肉の塊はなのに、すごく柔らかくて肉汁が溢れてきます!こんな肉料理は食べたことがありません!」


ユダが興奮しながら、ハンバーグを頬張っている


「それじゃ、俺達も食うか!」


「うん!」

「おう!」


「「「いただきます!」」」


俺達は、晩飯を済ませて、早々に魔導船で休んだ

そして、次の日の早朝·····


「なんだこれ!」


「夜の間に地形が変わったのか?」


「そのようですね·····」


「遺跡みたいだね·····」


魔導船の前に遺跡ができていた·····

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