アナザー・ワールド・ラビリンス〜異世界転移冒険譚〜

第81話 2層の試練と複合魔法

俺達は、洞窟をかなりの時間、歩き続けていた

雷球については、ユダは｢今の僕では出来そうにありませんが、理論はわかりました｣とか言って必死にメモを書いていた

｢祭壇があったぞ！｣

マップに祭壇のマーカーが表示された

｢また帰還用の祭壇じゃないの？｣

リオがゲンナリしながら聞いてきた

洞窟の中には幾つも祭壇があった

ミアズマワームに襲われても逃げれるようになのか、攻略者を落胆させるための物なのかは分からないが、ここに来るまで、何度もマップに表示されて、その都度確認してきたので、イヤにもなるだろう·····

｢いや、今回は違うみたいだ｣

マップに表示されている祭壇がある場所は、ほかの場所とは違い、広い空間になっていた

この洞窟はワームが掘った穴なので、全てが同じ大きさだが、その場所だけ違った

｢今回の祭壇は広い場所にあるみてぇだな｣

｢と言うことは、遂に試練の部屋ですか？｣

｢だろうな！今回の試練は、あのワームが大量に出てくるじゃねぇか？｣

｢え·····キモっ·····｣

リオが想像して気持ち悪くなったようだ

俺も少し想像してしまった·····

しばらく進むと、開けた場所に出た

そこにはバカでかい門があり、その奥に広い空間が広がっているようだ

俺は門の前に立って、扉に手を添える

｢開けるぞ·····｣

｢うん！｣

｢おう！｣

｢はい！｣

3人の返事を聞きながら、扉を押し開けて中に入った

試練の部屋は円形の空間になっていて、奥に小さい階段があった

その先に、祭壇が設置されている

｢あの穴って·····｣

リオが壁に無数に空いている2m程の穴を見て、呟いた

｢多分、あそこから出てくるんだろうな｣

｢ジンくん·····戦わずに次の層に行かない？

あんなのが大量に出てきたら、夢に出てきちゃうよ·····｣

｢それは、嫌だな·····｣

夢にワームが大量に出てくるのは誰でも嫌だろう

｢じゃあ！｣

｢いや、今回は一瞬で倒す方向で行くぞ！｣

｢結局戦うんだ·····

でも、あの光景を見なくて済むならいいかな·····｣

リオの顔から一瞬の笑顔が消えて、遠い目をしている

｢一瞬で倒すって言ったってどうするんだ？｣

｢何匹出てくるかも分からないんですよ？｣

レンとユダが聞いてきた

｢そういや、炎流はまだ教えてなかったな｣

｢なんだそれ｣

｢簡単に言えば、風と火の属性を合わせた魔法だな｣

｢それって複合魔法って事だよな？

ジンは複合魔法が使えるってことか？｣

｢そうだが、レンは出来ないのか？｣

｢出来るのはジンくんだけじゃないかな？｣

｢リオも出来るだろ？雷球も複合魔法だろ｣

｢1回やってみたけど、爆発しちゃった·····

雷球は自分が作った空間だから出来るだけだよ｣

そう言えば、リオが炎流や他の複合魔法を使っているところを見たことがないな

リオは俺と同じぐらい魔力のコントロールができているはずなのにできないのか？

｢ジンさん·····サラッと言いましたが、宮廷魔導師でも、複合魔法を使える人はいませんよ·····

過去にやろうとした人はいましたが、魔力を完全にコントロール出来なくて爆発させていましたね·····

今まで、完成させた例はありませんよ

理論上では出来るはずなんですがね·····｣

俺が考えていると、ユダが説明してくれた

俺は普通に混ぜているだけなんだが·····

｢ちなみに、爆発させたってのは俺の事だな

王族達がやってみろって言うからやってみたんだが、城の一部分を破壊しちまった·····｣

｢炎流は、武術大会でレンとリオが戦っているのを見ていて思いついた魔法だ

あの時、レンがリオの火魔法を風魔法で消しただろ？｣

｢あれはあくまで、消しただけだ

増幅させるってなると、魔力のバランスやら相性やら色々考えなきゃいけねぇらしいぞ｣

｢そうなのか·····俺にしかできない魔法なら、あまり口外しない方がいいな·····｣

魔力コントロールが上手い、リオもできない

異世界からの転移者である、レンもできない

知識や技術が豊富な、ユダもできない

俺がみんなと違うとこらがあるとしたら、能力付与（エンチャント）ぐらいだろう·····

制御する上で発動していた可能性が高い

もしそうなら、魔素も能力付与（エンチャント）で·····

｢ジンの炎流ってやつを見せてくれよ！俺もそれ見て真似して覚えてやるから！｣

俺が考えていると、レンが声をかけてきた

今はダンジョン攻略を優先だな·····

｢真似できるもんならやってみろ！

とりあえず、祭壇の所でやるから、リオ、バリア頼む｣

｢うん、わかった！｣

俺たちは祭壇に集まり、バリアに入った

｢それじゃ、やるぞ｣

そう言って、瘴気の吸収をやめると、壁に空いた穴に瘴気が集まり始めた

瘴気は形を変えていき、ミアズマワームが出現して穴からボトボトと落ちてきた

リオは顔を青くして、地面に溢れてくるミアズマワームを凝視している

｢リオ、見たくなかったら目を瞑るなりしとけよ·····｣

｢ジンくん、早く倒して！こっちに登ってくるよ！｣

｢わかったよ·····｣

俺は部屋の真ん中に巨大な火球を作り出した

火球の下に風魔法で竜巻を起こさせる

竜巻は火球を包み込み、火球が風の中に溶けていく·····炎流は瞬く間に、ミアズマワーム達を飲み込み、消滅させていった

｢すげぇ威力だな·····｣

｢複合魔法がこれ程の威力とは·····｣

炎流を見た2人が呟いた