第75話 ウエストのギルドとギルドマスター

第75話 ウエストのギルドとギルドマスター


「ここが、ギルドだな」


ウエストのギルドは陸からの入口と、河からの入口の2つがあった

河の方には小舟が何隻か繋いであるようだ


俺は、扉を開けて中に入る

昼過ぎなのもあり、冒険者はほとんど居ない

俺はそのまま、受付カウンターに向かった


「初めての方ですね!登録ですか?他国の冒険者さんですか?」


「シグニンズから来たんだが·····」


俺はギルドカードを提示した


「Aランク·····ジン·····!?」


受付嬢は声を殺して驚いている


「すぐに、マスターを呼んできますね·····個室へ案内しますので、どうぞこちらへ·····」



受付嬢に案内された個室のソファに座って待っていると、メガネをかけた男が、ノックもせずに入ってきた

男は、身長が高く、スラッとしていて、顔立ちも良く、まさにモデルの様な見た目だが、俺の事を見下すように睨むと、そのまま対面のソファに座った


「マスター!ノックはして下さいと言ってるじゃないですか!」


俺を個室に案内した受付嬢が怒りながら、部屋に入ってきた

どうやら、目の前の男がこのギルドのマスターらしい


「何故、この僕がたかが冒険者風情が居る部屋に入るのにノックが必要なんですか?

冒険者は僕のギルドが無いと生活していくことも出来ない奴らですよ?

態々この部屋に来てあげただけでも有難いと思うべきでしょう」


どうやら、このギルドマスターは冒険者を下に見ているようだ·····冒険者がギルドの依頼をこなさないとギルド側も生計が立たないと思うが·····


「何度も言っていますが、冒険者の方々が居ないとギルド側も成り立たないんです!お互いに良好な関係だからこそ、私たちのギルドは成り立っているんですよ!」


受付嬢はよく分かっているようだが、ギルドマスターは納得が言ってないようで、イラついているのか、貧乏ゆすりが止まらない


「ジン様、すみません·····先代のマスターはこうではなかったのですが·····」


「ギルドマスターが交代したばかりということか?」


「父は甘かったですからね!僕がこのギルドを作り直してあげてるんです!

僕は、現ギルドマスターのアストロです。どうぞお見知り置きを」


「そうか·····で、俺のことは伝わっているか?」


ギルドがどうなろうと、特に興味はないので、本題を話すことにした


「君のことは報告を受けていますよ、こんな子供がAランクになれるなんて、冒険者も質が落ちたんじゃないですか?」


「俺も冒険者になったばかりだからな、質が落ちたかはわからないが·····俺はあの塔に用があるんだが、入る許可を貰えるか?」


「あれに入る?入口もないただの石の塊ですよ?入れるもんなら、お好きにどうぞ」


どうやら、ダンジョンの事も知らされずにギルドマスターになったらしい

こんな奴がギルドマスターになって本当に大丈夫なのだろうか····

受付嬢の方を見ると、頭を抱えてため息をついている


「それじゃ、勝手にさせてもらうとするか·····」


「待ちなさい!」


俺が立ち上がろうとすると、アストロに止められた


「なんだ?」


「気に入らないですね····僕はここのギルドマスターですよ?」


「別に気に入ってもらうために、会いに来たわけじゃないからな」


俺はそれだけ言って扉に向かった


「待ちなさいと言ってるでしょ!僕と模擬戦をしましょう!僕に勝たないと、塔に入る許可は出しませんよ!」


1度許可を出したくせに、無かったことにしてきた

他人事だったが、さすがに俺もイラついてきた


「模擬戦か·····いいぞ?ルールはどうするんだ?」


「マスター!やめてください!ジン様·····申し訳ございません、こちらから言ったことですが、この話は無かったことにさせてください」


「模擬戦で勝たないと、塔に入れないなら、俺としては戦うしかないからな

それに、男が2度も自分の言葉を取り消したりしないよな?」


「本当に気に入りませんね·····今辞めなかったことを後悔させてあげますよ·····君!早く闘技場の準備をしなさい!」


アストロが青筋を浮かべながら、職員に怒鳴りつけた


「·····わかりました、10分程で準備が出来ると思います

ジン様、他の職員に控え室まで案内させますので、そちらでお待ちください」


アストロと受付嬢は部屋を出ていった


「ギルドマスターと模擬戦やることになっちゃったね···」


「だな、まぁ負ける気はしないがな」



『コンコンコン』

「失礼致します。ジン様、こちらへどうぞ·····」


ギルド職員が迎えに来たので、俺達は控え室に向かった



控え室はベンチがあるだけの狭い部屋だった


「闘技場の準備が終わるまでに、少しお話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「なんだ?負けてくれとかは聞かないぞ?」


「いえ·····そのようなことではありません、実は·····」


職員の話をまとめると

先代のギルドマスターは急死だったらしく、急遽、ギルドマスター代理として、息子のアストロが着任したそうだ

アストロは元々Aランク冒険者で、腕は経つらしく、気に入らない冒険者がいれば、今回のように模擬戦を開いているらしい


「なるほどな、それで?俺にそれを話して何かあるのか?」


「いえ·····ただ、今まで模擬戦で戦われた冒険者の方々は冒険者を続けれる状態ではありません·····どうか、お気をつけください」


『コンコンコン』

「ジン様!準備が出来ましたので、闘技場の方へお越しください!」


話を聞き終わったところで、闘技場の準備が終わったようだ


「安心しろ·····俄然やる気が出てきた」


俺は、案内してくれた職員に一言呟いて、闘技場へ向かった

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