第66話 魔素強化と帰還


『制御は出来ておるようだが、魔素制御には、その先がある』


「まだ先があるだと?どういうことだ?」


俺は身を乗り出すようにして聴いた


『魔力と魔素だとどちらが、強いかわかるか?』


「強さで言えば、魔素だな、燃費が悪いが火力が高いからな」


『うむ、理解は出来ておるな

なら、何故、魔素の方が強い?』


そう言われても、強いとしか思ったことが無かったので答えられない

俺が黙っていると、鳥が話し始めた


『魔素は魔力と瘴気で出来ておる、瘴気は言わば負の力だ、魔力と魔素の違いはそこにある

同じ属性でも、負の力が加わることで属性に変化が生じる、それが魔素制御の先ということだな』


「魔素で性質が変化するのか?」


『このダンジョンに火魔法を使う奴がおったのは、覚えておるか?』


「あぁ、ファントムとグリムリーパーだな、アイツらの火魔法と俺達の火魔法は何が違うんだ?」


俺は黒い火球を思い出しながら聞いた


『違いを簡単に言うと、燃やせるものが違うってことだ·····黒い炎は燃え移る物が無くても燃え続ける、言わば、その場所を燃やしておるが、魔力の火魔法は燃え移ることが出来なければ、消えてしまう、まぁこれも一部でしかないがな·····』


そう言えば、体に付いた炎は中々消えなかったし、地面に当たった火球はその場に燃え広がっていた


「黒い火球を出せるようになればいいんだな?」


俺は魔素だけを使って、火魔法を使う

手のひらに黒い火球が出来上がってきた


「·····できそう、だ」

『バァン!』


黒い火球は弾けて消えてしまった


『どうだ、難しいだろ』


表情はよく分からないが、何となく馬鹿にしているような顔をしている様に見える


「絶対に成功させてやる·····」


俺は黒い火球を作り出しては弾け飛ばすのをなんども繰り返した




「ねぇ、ジンくん·····まだやるの?」


リオが暇そうに言ってきた

かれこれ、黒い火球を出そうとして1時間は経っていると思う


「このまま帰ったら、バカにされたままだからな·····」


「誰もバカにしてないと思うけど·····まだやるなら、一つだけいい?」


「なんだ?」

『バァン!』


俺は黒い火球を破裂させながら言った


「いきなり黒い火球を作るんじゃなくて、前みたいに普通の火球に魔素を含めたのを作って、徐々に魔素を増やした方がいいんじゃないかな?」


リオが的確なアドバイスをしてきた

やはり、魔法に関してはイメージだけの俺とは違うところがある


「なるほどな!やってみるか·····」


俺は魔力と魔素を8:2の割合で火球を作った

そこから、徐々に魔素の割合を高めて行く

5:5のところで、魔素が制御出来なくなってきた

火球は赤黒い炎を上げている


『ふむ·····そこまでできるか、それはそれでお主らしい魔法ではあるな』


俺が制御に苦戦していると、横から鳥が話しかけてきた


「俺らしいってなんだよ·····」


『お主にしか出来ぬ魔法と言う意味だ、人間は魔素が使えんし、魔物は魔力が使えんからな』


「結局、中途半端ってことだろ?魔素を完全に使いこなせてないじゃないか」


『完全に使いこなせたら、それは彼の人も喜ばれるだろうな

だが、まずは、それぞれの良いところ使いこなせるようになってみてはどうだ?』


「また彼の人かよ·····良いところってどういうことだ?」


鳥が含みのある言い方をしてきたので聞き返す


『魔素は力が強いが、扱いにくく、形を変えにくい

それに比べ、魔力は力は弱いが、扱いやすく、イメージだけで形を変えやすい、という事だ』


「なるほどな、中間のいい所取りをするってことか·····それなら今の俺でも出来そうだな·····最終目標は魔素を魔力並に扱えるようになる、ってところか」


『それでは、そろそろ外に行くか?出るなら祭壇を出してやるぞ』


「あぁ、頼む、魔素を完璧に扱えるようになったら、また見せつけに来るからな!」


『いつでも来るといい、これはこのダンジョンの宝玉だ、受け取れ』


そう言うと、俺達の目の前に赤い宝玉が落ちてきた

俺が宝玉を手にすると、地面から祭壇が現れた

俺が祭壇の本を手に取り、リオが俺の腕に掴まっていることを確認して、魔力を込めた


『1つ言い忘れておったが、グリムリーパーは我がお主を試すために作った魔物だったんだが、まさか、倒すとは思わなんだぞ』


「このタイミングで言うかそれ!」


俺達の体は白く光り始めている


『でわな!次に会うまでに魔素ぐらい扱えるようになっておるんだぞ』


返事をする間もなく、視界が白くなっていく



『ふむ·····面白いやつだ、次に会えるのが楽しみだ····』


鳥が小さく呟いた



視界がゆっくりと、ハッキリしてくる

南のダンジョンの前に立っていた


「お主ら、戻ってきたか!中々戻ってこんから、どうなったかと思っておったが、無事で何よりじゃわい」


俺達に気づいた、おばあさんが声をかけてきた


「2日半ってところか?」


「ジンくんが、無駄に戦ったりしなかったら2日で攻略出来てたね」


リオが嫌味ったらしく言ってきた


「どこまで攻略は終わったんだい?その感じだと、3層までは行けたみたいだね!」


「いや、このダンジョン自体を攻略したんだが?」


「ダンジョンを攻略したじゃと!?

まさか·····あの地揺れは·····依頼ボードを確認してきなさい!」


「はいっ!」


おばあさんが、顔を青くさせながら、傍付きに声を荒らげた


「俺達は待ってた方がいいのか?ちょっと行きたいところがあるんだが·····」


「まぁ、待ってなさい、すぐに帰ってくるから」


おばあさんに止められて、傍付きが帰ってくるのを待つことになった



「マスター!ありました!」


傍付きが大声を上げながら、走ってきた

手には依頼書らしい紙を持っている


「本当の様じゃな·····ほれ、これが次のダンジョンの方角じゃ」


おばあさんが、依頼書を俺に渡してきたので、受け取って内容を確認する


「西か·····」


俺は依頼書を見て呟いた

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