第67話 迷いの森と再会
「西か·····」
俺は依頼書を見て呟いた
「西の国に向かうなら、この先にある港町で船が出ておるぞ」
「西ならシグニンズ国から陸沿いに行けるだろ?」
リオのゲートを使えば、一度行ったことのある場所ならいつでも行くことができるので、海を渡るよりも陸を走った方が速いし安全だ
「おかしなことを言うのう·····一度、シグニンズ国に戻って陸沿いに向かうより、海を越えた方が早かろう?
それに、陸沿いに進むなら、あの森を抜けねばなるまい?」
「森?西の森になにかあるのか?」
シグニンズ国の西と言えば、カタクがあるところだ
その西の森は、俺がこの世界に来た時にいた森だが·····
「シグニンズ国から来たのに知らんのか?
あの森は『迷いの森』と言われておっての、広大な森になっておって、行方不明者が何人も出ておる森じゃ、森を抜けるのは、あまりお勧め出来んぞ·····よくない噂も聞くしのぅ」
そう言えば、俺がこの世界に来た時も、森の中を彷徨ったっけな·····
防具もボロボロなので、カタクの方向ならちょうどいいと思ったんだが·····
「どの道、シグニンズ国には用事があるからな、どっちで行くかは、向かう時に考えるわ!」
俺はそう言って、避難所へ向かった
避難所はこの2日程でかなり町っぽくなっていた
町人たちのリクエストに、できる限り応えて作った土の家は、宿屋や飲食店になっていて、看板などを出して活気づいている
「ねぇ、シグニンズ国に戻るんじゃなかったの?」
俺が何も言わずに避難所に向かっているので、リオが聞いてきた
「知り合いが来てるみたいだからな」
「知り合い?」
俺はそのまま、一軒の宿屋に入った
「よう!ジン、リオちゃん、こっちに向かって来てたから待ってたぞ」
「レン、早かったな」
宿屋に入ると、レンとユダがいた
俺達のことをマップで確認していたみたいだ
俺も、ダンジョンから出てきた時に、避難所にレンのマーカーが表示されているのに気づいた
どうやら、北のダンジョンは攻略して来たようだが、かなり早い
「北のダンジョンは2日程で攻略出来たからな!ジンは3日掛かったんだろ?俺達の勝ちだな」
「ロックドラゴンを倒した後、1日中4層にいたからな」
あの時は、初めて魔素を使った反動なのか、制御しきれずに身体中、筋肉痛のような痛みに襲われた
攻略速度の勝負をした覚えはないんだが·····まぁいいか
「ロックドラゴン?そんなの4層にいなかったぞ?」
「え?じゃあ、4層には何がいたの?」
横で聞いていたリオが、聞き返した
「ただの岩山だ、でっかい扉はあったが、奥の部屋には何も無かった·····もしかして、あのだだっ広い部屋でロックドラゴンと戦ったのか?」
「あぁ·····俺が倒したから、いなくなったのかもしれないな、ロックドラゴンは瘴気じゃなくて、本物の魔物だったからな·····」
4層のドラゴンは戦わなくても、5層に行けるようになっている
もしかすると、ドラゴンは裏ボス的な存在なのかもしれない
「ジンの服、かなりボロボロだよな·····もしかして、ここのダンジョンにもドラゴンはいたのか?」
「あぁ、倒したけどな」
「倒したのか·····俺達も負けてられないな」
「それはそうと、これからダンジョンに入るのか?」
「当たり前だろ?ジン達に少しづつ追いついてるからな!」
「今から行けばちょうどいい頃合いかもな、2層は·····」
「待て待て、ネタバレしないでくれよ!」
俺が2層の干潮の事を話そうとしたところで、レンに止められた
今が昼過ぎなので、俺たちと同じぐらいのスピードで、攻略を進めれば、2層に着く頃にはちょうど干潮した頃だろう
「そうか?まぁ、あまり無茶はするなよ、勝負じゃないんだからな」
「ジンくんがそれを言うの?」
レンに声をかけると、リオが呆れたように言ってきた
「それじゃ、俺達はダンジョンに行ってくるわ!ジン達に追いつくのも時間の問題だな!」
そう言って、レン達は宿を出ていった
「あの·····ジン様は宿にお泊まりで?」
レン達を見送っていると、宿屋の主人に声をかけられた、土の家を建ててからこの町の人たちには、様付けで呼ばれている
「いや、俺達も町を出るんだ、悪いな店の入口で長々と·····また今度、泊まらせてもらうよ」
「そうですか·····いえいえ、お客様は先程のお二人だけですので、問題ありません」
俺達は宿屋を出て、砂漠地帯へ向かった
「この辺でいいか·····リオ、ゲートを頼む」
「はーい」
周りに人が居ないことを確認して、ゲートに入った
異空間でシロの様子を見てから、カタクへ向かった
「久しぶりのカタクだな·····リオはシロの防具を作るために、この前来たんだよな?」
「武術大会の前だから、私も久しぶりだよー、あの時はシェリーさんぐらいしか、知り合いには会ってないし」
俺達はカタクの南門近くに、ゲートを繋いで歩いて向かった
「止まれ!身分証を見せてもらえるか?」
門番に止められたので、俺達はそれぞれのギルドカードを見せた
「っ!Aランクだと!?」
門番が固まってしまった
「入っていいか?」
「は、はい!もちろんです!」
門番が敬礼までして、道を開けてくれたので、中に入った
「とりあえず、シェリーさんのところだな」
「ボロボロだもんねー」
リオに笑いながら言われた·····
軽くショックを受けた俺は、シェリーさんの防具屋に向かった
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