第45話 ダンジョンの仕組み


扉を潜った先は·····高原だった

塔の中のはずなのに太陽がある、風が吹いて草木が揺れている

なにより、塔の中とは思えないほどに広い·····空は地平線の先まで広がっていて壁なんて見えない

俺は通ってきた扉を確認するために後ろを振り返った


「入口が無くなっているな·····」


後ろには何も無く、高原が広がっているだけだった


「噂通りだね·····」


「ファーガスが、出る時は祭壇を探せって言ってたな」


祭壇に何か外に出るための装置があるのだろう


「入口が消えたり、出口が違う場所にあったり·····ここはやっぱり異空間なのか?入口の扉を潜るあの感じはやっぱり異空間へのゲートか·····だとすれば、ここを作った奴はリオと同じようなスキルを持っていることになるのか·····」


150年前に突然現れたとされる、ダンジョン

突然現れたという事は、誰かが作り出した可能性が高いだろう


「150年前だから、作った人はさすがに死んでるんじゃない?」


リオが俺の独り言に正論を言ってきた


「確かにそうだが·····死んでからもゲートや異空間は維持できるものなのか?」


根拠はないが作った奴は死んでいないような気がする


「考えても仕方ないな·····とりあえず、攻略を進めるか」


俺達はマップを頼りにダンジョンを進むことにした

マップには魔物のマーカーがないので、1層は魔物がいないエリアなのだろう




「何あれ!」


しばらく歩くと、リオが叫んだ

指を指す方を見ると、何も無いところに黒いモヤが出てきて集まっている


「あれは·····魔物みたいだ」


マップで確認すると、魔物のマーカーがモヤの所に表示されている

ダンジョンの魔物はエンカウントするらしい

黒いモヤを見ていると、形が固まっていく


「イノシシか?」


形はイノシシだが、黒い

黒いイノシシの目が赤く光ってこちらを睨みつける

イノシシは俺達を睨みつけながら、前足で地面を掻いて威嚇している

黒いイノシシを鑑定してみると·····


【ミアズマボア】Lv.40 / ランクB

【スキル】ー

【補足】瘴気の塊


名前からそのままだが、瘴気でできたイノシシらしい


「向こうは戦う気みたいだな、1層目の魔物の強さを確かめておくか·····」


俺は血刀を創り構えると、ミアズマボアが突っ込んできた

俺も前に走って距離を詰める

血刀の横向きに構え、すれ違うように前から斬る


「ん?感触がない·····」


確かにミアズマボアを真っ二つにするように斬ったはずなのに、まるで空気を斬ったように感触が無かった

後ろを振り返り、ミアズマボアを確認すると

こちらに方向転換して、前足を掻いている


「どういうことだ?避けられたのか?」


ミアズマボアがまた突っ込んできたので、さっきと同じように距離を詰めて、今度はしっかり斬るところを確認しながら真っ二つにした

血刀がミアズマボアに当たる瞬間、体が1部分だけ黒い霧のようになり、体をすり抜けていく


「そういう事か·····物理攻撃は全て無駄なのか?数を増やしてみるか」


俺は2本目の血刀を作り出し、両手に血刀を構える

方向転換を終えたミアズマボアがこっちを向いた


「今度はこっちからだ!」


俺は縮地で一気に距離を詰めて、両手に持った血刀で十字に斬りつけた

ミアズマボアは横に倒れて動かなくなり、体が黒い霧のようになって消えてしまった


「倒せたな·····一度に瘴気化できる量が決まっているのか?」


「これがあのイノシシの魔石だね」


俺が考えていると、リオがミアズマボアの魔石を拾ってきた

黒い霧になった後に残っていたらしい


「このまま適当に進んでいても仕方ないよな·····」


魔石をアイテムボックスに収納しながら進む方向を考える


「マップには何も無いの?」


「高原が続いているだけなんだ·····」


マップには町も建物も表示されていない

できる限り広域で表示しても何も出てこなかった


「空から見てみるとか?」


「空から?」


「上から見たらなにか見えるかもしれないし」


「何もしないよりかはましか·····じゃあ1回跳んでみるか」


俺は魔力強化<風>の出力を最大にして浮かび上がるタイミングで魔力強化<火>を使って、更に高く浮上した

風力でバランスを取りながら、回転して周りを見渡す


「んー何も無いな·····ん?あれは!」



「なんか見えた?」


俺が着地すると、リオが聞いてきた


「あぁ!あっちに遺跡があったぞ」


「遺跡?」


「たぶんあれは遺跡だと思う、とりあえず、向かってみるか!」


俺達は遺跡に向かうことにした

途中魔物にエンカウントしたが、出てきた魔物は全てミアズマボアだった

しばらく走ると、遺跡が見えてきた


「あれだ!」


「本当に遺跡ね」


遺跡は回りを石の壁で囲まれているが、かなりボロボロだ


「結構でかいな·····ここから入れるみたいだ」


壁に大きな穴が空いていたのでそこから中に入る

中には石を積み上げて作られた建物が至る所に建てられている

所々崩れているがみた感じ元々は街だった様だ


「かなり大きい街だったみたいだな」


「ダンジョンの中に街があったってこと?」


「いや、ダンジョンの中は日々変わってるって言ってたからそれはないだろ」


適当な家に入り、中を見たが、食器や家具などは一切なく人が住んでいた形跡は一切なかった


「ダンジョンが勝手に作り出した街ってことだな」


「この街のどこかから次の階層に行けるのかな?」


「どうだろうな、上から見た時、この遺跡しかなかったからな·····とりあえず、探索してるか」


俺達は片っ端から建物に入り、中になにか無いか探し回った


「ジンくーん、これってファーガスさんが言ってたやつかな?」


リオに呼ばれなので見に行ってみる

そこには祭壇があった

教会の様な建物があり、一番奥に祭壇があった

ステンドグラスから太陽の光が射し込んでいて神秘的だ


「ここから外に出れるってことだな」


「どうやって出るんだろう」


リオが祭壇の周りをウロウロしながら出る方法を探している

俺も祭壇に近づいて、周りを見回したが、そんな感じの機械は見つからない

祭壇の上には本が置いてあり、左右にはキャンドルスタンドが置いてあるだけだ


「この本が怪しいな·····」


手に取り本をめくると、本の1ページ目に『魔力を込めれば出口が開かれる』とだけ書かれていた


「この本に魔力を込めれば出口のゲートが開くらしいな、まぁ今は出たいわけじゃないからいいか」


俺は祭壇に本を置いて教会から出た


「次の階層にはどうやったらいけるんだろ」


リオは探し疲れたらしく、教会の前に座って不貞腐れてる


「さっき怪しいところ見つけたから行ってみるか?」


「え!あったの?早く言ってよ!」


「リオに呼ばれたから来たんだけどな·····」


俺はブツブツいいながらさっきの場所に戻った

ちょうど遺跡の真ん中辺にある建物だ

他の建物より少しだけ大きく見えるが、あまり目立つような建物ではない


「この建物?他のとそんなに変わんないよ?」


「中に入ったらわかると思うぞ」


俺達は中に入った


「何これ·····」


中に入ると部屋と同じほどの大きな扉があった


「いかにもな扉だろ?多分中に入れば何かあるんだと思うんだ」


そう言って、扉に手をかけて思いっきり押す


「えっ!ちょっ、まだ心の準備が!」


リオが何か言ってるが気にせず扉の奥に入る

そこは体育館程の広さの部屋だった

地面と壁はは石でできていて、壁の至る所に松明が立てられている

一番奥には教会にあった祭壇のようなものがあった

俺は祭壇に向かって真っ直ぐに歩いていく

リオは俺の服の裾を握って着いてきている


『バンッ!』

「きゃっ!」


ちょうど真ん中に来たぐらいで入ってきた扉が閉まった

音にビックリしてリオが悲鳴を上げた


「来るみたいだ·····」


壁際に黒いモヤが集まっている

黒いモヤは俺達を囲むようにどんどん集まってくる


「何体出てくるの!?」


霧から形を変えてミアズマボアが大量に出現した

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