第44話 北のダンジョン


「ねぇ·····ここであってるの?」


「あぁ、マップで確認したが、間違いないな·····」


俺達が港町から出航して、半日も経っていない

今は昼を少し過ぎた頃だろう

目の前には砂浜が広がり、その奥には森が続いている

まさに、無人島のような風貌だ

北のダンジョンがある島までは、帆船で5日〜7日と聞いていたので、かなり遠いと思っていたが·····

マップにも表示されているので、この島にダンジョンがあるのは、間違いないようだ


「ここからダンジョンまでは近いの?」


「すぐ近くの町とダンジョンが同じ場所にあるな·····どうやら、ダンジョンがある場所に町を作ったみたいだな、マップではちょうどあの塔の辺りが町になっているな」


「何あのバカみたいに高い塔·····」


リオが驚くのも無理もない、塔は雲を突き抜けてどこまで続いているのかわからない

この島のちょうど真ん中にダンジョンがあり、その周りに町が広がっているようだ

島自体もそこまでの広さはなく、マップ全体で見れるので直線距離で5kmも無いのだろう


「町があるってことは、この島に人が住んでるってこと?」


「何人かいるみたいだが、町にしては少ないな·····」


俺は魔導船をアイテムボックスに収納しながら答えた

町に人のマーカーが表示されているが、数人しか表示されていない


「ここにいても仕方ないし、とりあえず、町に向かうか!」


俺達は町に向かって歩き始めた

しばらく歩くと、森を抜けた先に町が見えてきた

外から見た感じ、普通の町だが、人気を感じない

門番がいないので、そのまま町に入った

家が立ち並ぶが、人影すら見えない

マップでは、マーカーが町の中心に集まっているので、そっちへ向かった


「ここって冒険者ギルド?」


「そうらしいな、この中に人が集まっているみたいだ」


中心まで来ると、見慣れた看板があり、大きく冒険者ギルドと書かれた建物があった

他のギルドと違うのは見上げてもてっぺんが見えない程の塔が建物の裏に立っている

マップでは中に町中の人が集まっている


「とりあえず、中に入ってダンジョンの話を聞いてみるか」


『ギイィィィ』

立て付けが悪いのか、扉が軋む

扉を開けると、ギルドにいた全員がこっちを見た

しばらく沈黙が続いた


「もしかして冒険者か?」


初老の男がいきなり大きな声で聞いてきた


「あぁ、ダンジョン攻略のためにここまで来たんだが·····」


「本当か!おい、みんな!久しぶりの来客だ!宿屋!まずはお前の店で部屋を取ってもらえ!」


「いや、部屋は大丈夫だ、このままダンジョンに入りたいんだが·····」


「それなら食料だな!大量にあるぞ!ダンジョンに最適な日持ちする干し肉もある!」


男はかなり売り込んでくる


「食料も大丈夫なんだが·····あんたらはここの町の人達か?」


「食料もいらないのか·····そうだ、俺はこの町『ノース』の町長兼ギルドマスターをしているファーガスだ」


「俺は冒険者のジンだ、こっちは仲間のリオだ」


俺達も続いて、自己紹介をしながら冒険者カードを見せる


「2人ともそのなりでAランクだと!?·····もしかしてランディのところの2人か?」


「ランディを知ってるのか?俺達はカタクで冒険者登録をしたんだ」


冒険者ギルドのマスター同士で付き合いがあるのだろう


「知らないのか?ランディは冒険者時代はかなり有名だったんだがな·····昔はパーティを組んでいたんだがな、最近は音信不通だったが、最近手紙が届いてな、近々2人組がここのダンジョンを攻略しに来るとか言っていたが、本当に来るとはな」


どうやら、ランディは俺たちのことを手紙で伝えてくれていたらしい


「たぶん、その2人組は俺たちで間違いないと思うぞ

それで、早速なんだが、ダンジョンはどこから入るんだ?」


「そう急ぐな、先にダンジョンについて教えてやる

これは、ダンジョンに挑戦する前に全員が聞くことなっている、まず··········」


要約すると

・ダンジョンに出現する魔物は倒しても消えてしまうらしい、倒した時に魔石は手に入るので、その魔石は売り買いされるらしい

・ダンジョンは日々姿が変わっているらしく、ダンジョン内の地図は作っても無駄らしい

罠もあるらしいが、姿が変わることでリセットされるそうだ

・ダンジョンは広大で魔物の強い物ばかりで、まだ3層までしか攻略されておらず、何層まであるのか不明らしい

ダンジョン内で食料を調達できないのも攻略が進まない要因らしい



「なるほど·····ひとつ聞きたいんだが、ダンジョンが攻略され始めてどれくらいなんだ?」


「ダンジョンは、俺の曾々祖父さんの時代に突然現れたと言われている、残っている記録では、確か150年ぐらい前のが1番古いな」


150年も攻略され続けて、3層しか攻略されていないのか·····


「ありがとう、まだ疑問はあるが、ダンジョンに入ってから考えてみるわ」


「その方がいいだろうな、聞かれても分からないことの方が多いだろうしな·····」


「それじゃ、案内をお願いできるか?」


「その身軽な格好で行く気か?食料や武器はどうした!俺の話を聞いてなかったのか?」


「俺達はこれでいいんだ、態々説明する気もないから案内してくれ」


「·····わかった、着いてこい」


俺はファーガスを急かして、ダンジョンへと案内させた

ファーガスはギルドの奥へ入って行ったので、ついて行く

扉を開けたその先には表から見えていた塔が立っていた

どうやら、この塔がダンジョンの様だ


「こっちだ!ここで誰がダンジョンにいつ入ったかを記録している」


俺達が見上げていると、ファーガスがこっちに手を振りながら叫んだ


「ここに書けばいいのか?」


「あぁ、ランクと名前を書いてくれ」


ファーガスに渡された用紙に俺とリオがそれぞれ、名前を記入する


「よし!これで手続きは終わりだ!中に入ったら絶対に驚くぞ!ダンジョンを楽しんでこい!」


ファーガスが笑いながら言ってきた

驚くらしいが、一体どんな構造なのだろうか·····


「どんなところか楽しみだ!行ってくる!」


俺はファーガスに笑顔で答えながら、開けられた扉を潜ろうとした


「あ!言い忘れていたがダンジョンから出る時は祭壇を探せ!そこから外に出てこれるはずだ!」


ファーガスが大切なことを最後の最後に言ってきた

手を振り返しながら俺達はダンジョンに入った

扉の奥は真っ暗で何も見えない、まるでゲートを潜る時のように感じに似ていた

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