第40話 魔導船の改造とクラーケン討伐依頼


造船所に着いた俺達は扉を開けて中に入る


「すみませーん!」


中に入ると、朝に対応してくれた人がいたので声をかけた


「あぁ!今朝のお客さんだね!今からみんな昼休憩なんだよなーもう少し後·····で」

「昼頃に来いって言われたから来たんだが?」


男の対応に少しイラついたので、言い終わる前に軽く威圧を込めて割り込むように言った


「俺は魔導船のことでここにきているんだ、早く担当のティムさんの所へ通してくれるか?ティムさんにも昼頃に来ることは伝えてる」


俺は書状を見せてティムさんの名前を出して説明する

男がガクガクと震えながら、頭を縦に振っている


「社長のお客様でしたか!し、失礼しました、です!こ、こちらへどうぞ!」


男は慌ててティムさんの所へ案内してくれた

魔道具技師で魔導船設計の担当だからそれなりに偉い立場だとは思っていたが、ティムさんは社長だったのか·····


『コン、コン、コン』

「社長!お客様をお連れしました!」


「あぁ、入ってくれ」


中からティムさんが返事をした

男に案内されて、ソファに腰掛ける


「ジンさん、早速来て頂けたんですね」


「昼休憩中にすみませんね·····」


「じ、自分はこれで!し、失礼します!」


俺が男の方を見るとそそくさと部屋から出ていった

ティムさんの頭には『?』が浮かんでいるが話を進めよう


「そう言えば、ティムさんが社長だったんですね!」


「隠していた訳じゃないんですけどね、どうも社長と言う立場だと動きにくいことが多いんですよ

それはそうと、新しい設計図が出来たんで見て頂けますか?」


「今朝話したのをもう書いたんですか?」


ティムさんが大きな設計図をテーブルの上に広げる

設計図には船の図形が書かれていて、色々説明書きがされているが、全くわからない·····


「さすがにジンさんでも分からないと思いますので、簡単に説明しますね、まず·····」


ティムさんの説明は分かりやすかった

本来、魔導船は10人以上の魔力を集めて動かすように出来ているが、俺達は2人しかいない

そこで、俺が提案したのが、魔道二輪の様に魔力を貯める場所を作れないかと言うことだ

10人分の魔力は俺の魔力を貯めればどうにかなるだろうし、俺の魔力だけで動かせば、船の操縦も魔道二輪の様に思い通りに動かせるだろう


「ここまでが魔導船の説明なのですが、少し問題がありまして·····」


ティムさんの歯切れが悪い


「また素材が足らないとかですか?」


魔道二輪の時を思い出しながら、ティムさんに聞く


「いえ、素材は十分あるんですが·····ここの港町から北に向かう航路には大型の魔物が住み着いていまして·····北のダンジョンに向かうのであれば、1度東へ迂回しないといけません、そうなると流石のジンさんでも魔力が足らなくなるかと·····」


「魔物か·····どう言った魔物なんですか?」


「それが·····Aランクの魔物でして、クラーケンなんです」


ティムさんが諦め口調で俺に言った

大型の魔物とは海の邪魔者、定番のクラーケンだった

どうやらここ1年の間に北の航路に住み着いたらしく、魚も逃げてしまって、漁業にも大打撃を受けているらしい


「なるほど·····ちなみに魔導船が完成するのに何日ほどかかりますか?」


「魔導船ですか?それでしたら少し手直しを入れるだけですので、今日から3日程頂ければ可能かと、ただ、先程言った通り迂回分の魔力を貯蔵するにはジンさんでも1週間はかかるかと思いますが·····」


「急いでいない旅ですが、魔物のために態々迂回する気はないので、それに港町の人たちも困ってるんですよね?」


「あのクラーケンを倒すつもりですか!?確かに町人たちは困っていますが·····ジンさんでも倒せるとは·····」


「倒せるかは分かりませんが、放っておくわけにもいかないので」


「そうですか·····冒険者ギルドの方で討伐依頼は出ているはずなので、1度説明を聞いてみてくださいきっと、討伐隊を組むことになると思いますので」


「わかりました!それじゃ、またなにかあればお邪魔しますね!」


そう言って俺達はギルドに向かうことにした




「どうやってクラーケンを倒すつもりなの?ジンくんなら何か考えがあるんだろうけど·····」


ギルドに向かう途中、リオが聞いてきた


「ん?ノープランだな」


「え·····?」


リオが驚いているが、とりあえず、ギルドに向かう

ギルドに着いた俺達は扉を開ける

時間的に冒険者は少ないが何人か昼間から酒を飲んでいる

依頼ボードには向かわず、直接受付カウンターに向かった


「クラーケンの討伐依頼は出てるか?」


受付嬢に冒険者カードを見せながら聞くと、受付嬢は冒険者カードを見て固まってしまった


「おい、聞いてるのか?依頼が出てるなら詳細を教えて欲しいんだが?」


「·····!す、すみません!Aランクの冒険者様を初めて見たもので·····クラーケンの討伐依頼と詳細ですね、少々お待ちください」


王都でAランクになった冒険者は港町に来るもんだと思っていたが、そうでもないようだ

受付嬢が奥に行って、しばらくして出てきた


「クラーケンの討伐依頼は出ています!討伐隊を編成されるのであれば王都にも依頼を出すので、3日程あれば組めると思います」


「いや、2人で討伐予定だから討伐隊は組まない」


「お二人でですか!?流石に無謀では·····」


「先に詳細を教えてくれ」


「はい、詳細ですね·····クラーケンは海の·····」


【クラーケン】·····討伐ランクA

推定50m(足は含まない)

海の底に生息している巨大なイカの魔物

縄張り意識が強く、海底に影が出来ただけで襲いかかってくる

食事をする時にしか巣から移動しない


「なるほどな·····それじゃ、2人で討伐するから依頼の受理をしてくれ!」


「「え!?」」


受付嬢と俺の後ろにいたリオが同時に驚いた


「この人の話聞いてた!?ノープランなんだよね?流石に私たちだけじゃ無理だよ·····」


「そうです!いくらAランク冒険者でもクラーケンを討伐隊を組まずに討伐した例は1度もありません!」


「いや、プランなら今決まったところだ、前例がないと依頼は受けれないのか?」


「なんだ?ウチのギルドで騒がしいな·····面倒ごとは起こさないでくれよ·····」


リオと受付嬢が騒いでいると、奥からおっさんが1人、面倒くさそうに出てきた


「マスター!この人がクラーケンを2人で討伐するって言うんです!説得してくださいよー」


奥から出てきた男はここのギルドマスターらしい、受付嬢が泣きついている


「ん?クラーケンを討伐するだぁ?しかも2人で?無理だ無理だ!命を捨てに行くようなもんだぞ?」


「なら、討伐したらここに持ってくるから受理してくれるか?」


「お前、堅物だな·····おい!ララ、依頼を受理してやれ!1度化け物を見れば分かるだろ·····」


そう言ってギルドマスターは奥の部屋に戻って行った


「ちょ·····ちょっと!マスター!?」


受付嬢の声がギルドのホールに響いた




「さてと·····とりあえず、1度造船所に行くぞ」


ギルドで依頼を受理してもらった俺達は造船所に向かった


「え·····う、うん·····」


リオは行きたくなさそうだが、リオが居ないと倒すのが面倒なので、無理矢理にでも連れていくつもりだ




造船所の扉を開けると丁度、ティムさんがいたので声をかける


「ティムさん!ちょっとお願いがあるんですけど」


「あれ?ジンさんじゃないですか、魔導船の事で何か変更がありますか?」


「いえ、魔導船はそのままで大丈夫です、ちょっと小舟を1つ買いたいんですが」


「ええ、構いませんが·····」


「たぶん1度しか使わないので、ボロボロのでいいです」


「本当にそんなのでいいんですか?·····もう捨てる予定の小舟なら岸辺にいくつか置いてあるので、好きな物を持っていってください、料金はいりませんので」



ティムさんに言われた岸辺行くと、穴が空いたり、真っ二つになったりしてる小舟が大量にあった


「お!これなら大丈夫そうだ!穴も空いてないし、小さいが帆もついてる」


「ジンくんだけで行ってよー私はここで見てるからさー」


「リオが来ないと倒すのが面倒なんだ!倒したら旨いイカ料理を腹いっぱい食わせてやるからさ!」


「·····」


リオが静かに小舟に乗った·····ほんと、素直だよな


小舟には帆が付いているので、軽く風魔法で押してやると簡単に進んだ

マップを確認しながら海を進むと、大きいマーカーが出てきた


「クラーケンだな·····リオ、魔力強化<風>でホバリングしながら小舟から離れるぞ」


「わかった!」


小舟から離れて小舟だけをマーカーの上に進める

すると、マーカーが動き始めた


「来るぞ!」


『ザッパーン!』


海面に巨大な触手がうねうねと出てきた

小舟を器用に掴んで粉々にしている

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