第36話 抽選結果と本戦第1試合


本戦当日·····

俺達4人は、改装された舞台の中央に案内された

これから、対戦カードが発表される

闘技場は改装されて、4つに別れていた闘技場をひとつに組み合わせたようだ

40m×40mとなり、かなり広くなっている

観客席からは割れんばかりの歓声が送られている

アナウンスで4人の紹介がされる中、俺はレンに話しかけた


「誰と戦うことになるかは分からないが、レンと戦うことになったら本気で行くぞ!」


「当たり前だ!俺も本気で行くからな!予選の時使ってた『威圧』は俺には効かないぞ!」


レンが笑いながら答えた

ユダが横から俺の事を凄い睨みつけてくる·····


「こいつはユダだ!俺の弟子になりたがっていて、とりあえず、付き人にしたんだが、修行を一緒にしてるうちに強くなってな、気がついたらこんな所までついてきやがった·····」


俺の視線に気づいて、ユダを紹介してくれた

レンは鬱陶しそうに言いながらも何だか嬉しそうだ

ユダは、相変わらず俺を睨みつけている


「おい、ユダ!挨拶ぐらいしろ!」


「はい!·····僕はレン様の一番弟子のユダです。もし、ジンさんと当たれば、胸をお貸しください」


ユダがさっきまでと違い、笑顔で挨拶をしてきたが、目が笑っていない·····

手を前に出てきたので、握手する

握る力どう考えてもおかしい程に強い·····


『俺、なんか恨まれることしたかな·····』


「こちらこそ、頼むよ!」


俺も笑顔で返事を返す、少し力を強めると、ユダが直ぐに手を離した


「そろそろ対戦相手を決めるみたいよ!」


俺達が色々してる間に紹介は終わったようだ

シングルトン王が闘技場の貴賓室から挨拶をしていたようだが、俺達は全く聞いてなかった


「これより、本戦の対戦相手を決めます!シングルトン王!お願い致します!」


アナウンスが闘技場内に響く

シングルトン王が箱を取り出し、中に手を入れる

決定方法はまさかのくじ引きだった·····なんてアナログな·····

シングルトン王が箱から玉を取り出す、観客が息を飲んで見守る中、付き人が名前を読み上げる


「ジン!」


「本戦第1試合、初めの選手はジン選手です!」


会場内がざわつくが、シングルトン王が箱に手を入れるとまた、静まり返った

取り出した玉を付き人に手渡す、静かな空間に付き人の声が響く


「ユダ!」


「第1試合のカードが決まりました!ジンvsユダ!どう言った戦いを見せてくれるのでしょうか!それでは、1時間後に試合開始となります!」


アナウンスと共に場内が騒がしくなった

俺達も1度控え室に戻り、思い思いの時間を過ごした


「早速ジンくんの試合だね!」


「まぁ、リオと当たらなくて良かったよ」


「ジンくんと試合になってたら、すぐにギブアップすると思うなぁ·····」


遠い目をしながらリオが言った

カタクでの模擬戦をまだ忘れていないようだ


「だが、リオの相手はレンだ!気を抜くなよ、あいつは俺より強いかもしれないからな·····」


俺と同じ転移者であり、かなりチートなユニークを持っていて、王家からの武器もある

魔法のレベルではリオの方が有利だが、近接戦闘になるとレンが有利だ


「私の心配より、あいつとどう戦うか考えたら?」


ユダはこっちを睨んで動かない


「あいつとは、戦ってみないとなんとも言えないな」


「強いの?」


「んーステータスに知らないスキルがる」


ちなみにユダのステータスだが·····


----------------------


【名前 / 性別】ユダ / 男

【年齢 / レベル】15歳 / Lv.34

【スキル】拳術:Lv.Max / 火魔法:Lv.6 / 魔法強化:Lv.5 / 身体強化:Lv.7


----------------------


レベルは特に高くはない

Bランクならこれぐらいだろう

拳術がLv.Maxになっているので、完全な近接系かと思ったが、火魔法も使えるようだ

それに『魔法強化』と言うスキルも持っている


<魔法強化>

武器やスキルに魔法の威力を上乗せする


どうやら、魔法自体を強化するスキルでは無いようだが、鑑定だけではわからない内容だ·····



闘技場の方からアナウンスと歓声が聞こえてきた

そろそろ1時間経つようだ


「ジン様、ユダ様、そろそろ開始の時刻となりますので、舞台の方へお願いします。レン様、リオ様も舞台の袖で観戦できますので、よければこちらへどうぞ」


係の人が迎えに来てくれたので、指示に従う

リオ達も観戦するらしく、一緒についてきた



俺とユダが舞台に上がり中央に向かう

リオ達は隅に置かれたパラソル付きの椅子に案内されていた

中央でユダと向き合う

相変わらず、こちらを睨みつけてくる


「なんでそんなに睨んでるんだ?俺が何かしたか?」


いい加減ウザイので聞いてみた


「·····先日、レン様と城下町でお会いしたらしいですね」


「ん?あぁ、あの時初めて会ったんだが、それがどうした?」


「あれ以降、レン様は何かある度に、貴方のことを言うようになりました·····」


「あ、そうなの?まぁ初めて会った同郷だからな、テンションも上がるだろ、普通」


「レン様を貴方に取られる訳にはいきません!ここで貴方を倒し、レン様の興味を僕に向けさせます!」


ユダが俺を睨みつけていたのは、ただの嫉妬だった·····


「いや·····別に負けるつもりは無いが、レンを取るつもりも無いんだが·····」


「問答無用です!初めから本気で行かせていただきます!」


ユダは聞く耳を持たない·····


「仕方ないか·····」


俺達は所定の位置へ移動して向き合う

それを確認したレフェリーが開始を宣言する


「はじめ!」


突如、ユダが消えた·····

『縮地!?あいつは縮地を持ってなかったはず·····』


「ジンくん!後ろ!」


リオの声が聞こえて、前方に回避をして後ろを確認すると、ユダがいた

文字通り、体が炎に包まれている

ユダを見ていると、また消えた

マップで確認すると俺の周りをすごいスピードで回っている、何とか目で追えるスピードだ

ユダをよく見てみると、足に炎が集中している

どうやら、これが『魔法強化』のようだ

炎をブーストの様に爆発させて、一気に加速している

縮地とは違い、レベルで距離が決まらないので、魔力が続く限り加速を続けられるようだ

俺の能力付与エンチャントに似ているが、魔法強化は属性付与がメインのスキルのようだ

観察していると、ユダが一気に距離を詰めて、俺の目の前に現れた

俺は血刀を2本創り出し、拳の軌道に血刀を置いてガードする


『ガッ!』


ユダの拳が血刀にぶつかり、勢いが止まる

拳には足にあった炎が移動してメラメラと燃えている

ガードされたユダは後ろに飛んで、距離を取る


「なんですかその剣は!一体どこから!?それに硬すぎる·····僕の拳で折れないなんて·····まさか魔剣!?」


ユダが1人で騒いでいる

そんなことに態々答えるつもりもないので、俺は縮地で距離をゼロにする

そのまま、血刀で胴体を横一線に斬る


「カハッ!」


いきなり目の前に現れた俺に反応出来ずに、ユダの体に血刀が激突して吹き飛ぶ

2回バウンドして勢いが止まり、舞台に這いつくばっている

予選の舞台であれば場外負けになっているぐらいには吹き飛んでいる


「ゴホッ!ゴホッ·····」


ユダが咳き込みながら立つ

もちろん、血刀の刃を丸めているので、胴体はしっかり繋がっている

肋は2本ぐらい折れていると思うが·····


「本当に斬っていたらお前の命は無かったぞ、降参するか?」


「甘いですね·····そこは少しでも斬るべきでしたよ·····僕はまだ生きてますからね·····」


そう言ってユダがまだ加速して突っ込んでくる


「なぁ、そのスキルって火属性だから攻撃力とスピードが上がるのか?」


俺はユダと並走して質問をする


「なっ!?」


ユダが目を見開いて驚いている

俺はちゃっかり、同じ魔法強化を使っている


「理屈が分かれば誰でも使えるだろ、これ」


「そんな·····でも!」


「それに、属性を変えれば·····」


そう言って、風属性で魔法強化を使う


「う、浮いてる·····」


浮いているというか、ホバリングしている感じに近い

この魔法強化は属性を変えればまだまだ、進化する魔法のようだ


「火と風以外にも、水、土、光、闇も使えるがまだやるか?」


再度、ユダに続けるか確認する


「こ、降参します·····参りました·····」


「勝者、ジン!」


レフェリーの声が高々と響いた

観客席からの歓声がすごい


「レフェリー!こいつを医務室に連れて行ってやれ、肋が折れているはずだ」


レフェリーに伝えて、リオの元に向かう

直ぐに救護班が舞台に上がり、ユダは連れていかれた


「流石ジンくんだね!Aランク一番乗りだね!」


「あぁ、ありがと!」


3位以内が確定したので、俺はAランクが確定したことになる


「最後に使ってた、あのスキルはなに?」


「あれはユダが使ってたスキルだ、また後で教えてやるよ」


リオが使うと色んな発見をしてくれるので、魔法関係には少し期待してしまう


「あんな簡単にユダが負けちまうとはな·····それにジンが使っていた武器は刀か?」


「そうだ、見てみるか?」


そう言って血刀を創り出してレンに見せる


「赤いんだな·····キーチェーンみたいなのが変形したが、それがその魔剣の能力なのか?」


「これは魔剣じゃないんだ、俺のユニークだと思ってくれ」


「ジンにはまだまだ秘密があるようだな·····戦うのが少し楽しみになってきた」


「ちょっと!私は負けることが前提なの?」


隣で話を聞いていたリオが少し怒って割り込んできた


「落ち着け、そろそろ2回戦が始まるらしいから頑張ってこいよ」


そう言ってリオの頭を撫でると、少し頬を染めて笑顔で返事をした


「うん!いってきます!」


リオとレンが舞台に上がった

俺は日陰で椅子に座り見守る

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