第35話 大会ルールと予選開始


俺達は今、武術大会の会場である、闘技場に向かっている

闘技場に近い宿に宿泊していたが、早朝からガヤガヤと来場者が集まっていた

あと1時間程で第1試合が始まる頃に、闘技場に着いた

入口でギルドからの手紙を見せると、選手控え室に案内された

控え室にはテーブルや椅子はなく、ただただ広いスペースがあるだけだった

金品は、舞台に上がる時に係の人に渡すと案内状には書いてあった

控え室には4人の先客がいて、それぞれに精神統一しているようだ

目をつぶっていたり、ブツブツ呟いていたり、シャドーボクシングしていたり、寝ている者もいる

俺達は空いてるスペースに座り、雑談して過ごした


「なぁリオ、ルール確認したか?」


「ルール?一応見たけど·····」


リオの目がそれた·····見ていないようだ


「見てないだろ、ちゃんと読んどけよ!」


「はい·····」


案内状の裏に書かれているルールは·····


〜冒険者武術大会のルール〜

・相手を殺してはいけない

※殺すと冒険者活動1年停止、場合によっては死刑

・舞台から落ちると敗北

・武器が破損し、戦闘継続不能であれば敗北

・ギブアップを宣言すれば敗北

・身動きが取れない状態で10カウント取られると敗北

・使用武器は問わない

※武器を手に入れる、財力や運もその者の実力とする


「基本は相手を戦闘不能にすれば勝ちだが、殺してはいけないという内容だ」


「うん·····魔法を強く当てないようにしなきゃだね·····」


「そのために魔力コントロールの修行をしてきたんだ、最悪、空間制御を使っても構わないが·····」


「みんなの前じゃ使わない方がいいんだよね?」


みんなの前と言うか、王宮魔導師に鑑定でスキルを確認されると、色々面倒だからだ


「まぁその時はその時だ!一緒にAランクになるんだろ?負けそうなら使えばいい!」


「うん!わかった!」


リオの緊張が少し和らいだようだ

そうこうしていると、そろそろ時間のようだ

周りを見渡すと、いつの間にか、控え室は冒険者でいっぱいになっていた


「今回の大会の説明を行います!出場者の皆さんはこちらに来てください!」


係の人が大声で叫んでいる

周りの冒険者達がゾロゾロと出入口に集まっていく

静かになったところで、係の人が説明を始めた


「今回の大会の出場者は80人近い出場者を予定しておりましたが、棄権者が出たため64名です!事前に案内状に書いてあるブロック別にトーナメント形式で戦っていただきます!ルールは案内状の裏に記載させて頂いた通りとなります!本日は各ブロックで8試合して頂きます!それでは第1試合の出場者の方は私についてきてください!」


そう言って、ドアを開けて出ていくので、俺とリオが着いていく、チラッと見るとレンと目が合った、少し緊張しているのか、笑顔が固い

闘技場に着くと、闘技場は4分割されており、各スペースに舞台が設置されていた、同時に4試合を消化することができるようだ

舞台は20m×20mの正方形で意外とでかい

闘技場の周りには観客席があり、まだ予選だと言うのに満員で立ち見してる人もいる状態だ、俺たちに気づいた観客達から割れんばかりの声援が送られる


各ブロックに分けられた舞台に案内されたので、ここからリオとは別行動になった

リオが手を振っていたので手を振り返すと、横を一緒に歩いていた筋骨隆々の強面の冒険者に舌打ちされた

俺は案内されるままに、Aブロックの舞台に上がる

アナウンスで俺の紹介がされた


「Aブロック第1試合!若干17歳にして、Bランク昇級最速記録をたたき出した男!予選順位1位!ジン!この大会でAランクになればAランク最速記録も狙うことができるぞー!」


観客席が騒いでいる

『あまり悪目立ちしたくないんだけどな·····』


どうでもいいことだが、アナウンスは風魔法で音を拡張させているらしく、マイクの様に闘技場内に響いている


「そんな彼の第1試合の相手はなんと!この大会の常連冒険者のゴンザレス!毎年4位だが、今年こそAランクになることができるのか!?」


アナウンスが終わると、観客席から笑い声が聞こえてきた

紹介されたゴンザレスは顔を真っ赤にして怒りの矛先を俺に向けている

『なんで俺なんだよ·····』


レフェリーに呼ばれて、舞台の中央に立つ

ゴンザレスが真上から睨みつけてくる、凄い殺気だ


「女とイチャつきやがって!生意気なガキは俺様がひねり潰してやる!」


俺に聞こえるギリギリの声で言ってきたが、無視する


「ルールを守ってフェアな戦いをお願いします!」


レフェリーが一言告げると、俺たちから距離を取った

俺達も所定位置に移動する

それを確認したレフェリーが声を上げる


「はじめ!」


レフェリーの声と同時にゴンザレスが巨大な斧を構えて突っ込んでくる

『あの斧で切られたら普通の奴は死ぬだろ·····』


俺はそんなことを考えながら1つだけスキルを発動させる

するとゴンザレスの動きが止まって、1歩、2歩と後ずさりする

3歩目で足がもつれて後ろに倒れて尻もちをついた

頭からは滝のような冷や汗を流しながは小刻みに震えている


俺が発動したスキルは『威圧』だ

格下の相手の動きを止めさせる効果があるが·····


「ここまで効果があるとはな·····あまり強めには使えないな·····」


俺達の試合を見ていた観客達が言葉を失って、舞台を凝視している、レフェリーもどうしたらいいかわからない状況のようだ


「レフェリー!ゴンザレスにこの後も続けるか確認してくれ!」


「·····は、はい!」


レフェリーがゴンザレスに近づき、話しかけるとゴンザレスが大きく首を横に振った


「Aブロック第1試合!勝者、ジン!」


レフェリーが俺の勝利を宣言する

観客達はどよめいているようだ


「おーと!はやくもAブロックが決着のようです!他のブロックの出場者の説明をしている間に終わってしまったようですね·····入ってきた情報によると·····なんと!ジン選手は何も手を出さずにゴンザレス選手にギブアップを宣言させたそうです!一体なにをしたのか!謎ですが、Aブロック第1試合の勝者はジン選手です!」


アナウンスで再度、俺の勝利が宣言されると、会場全体から歓声が送られてきた

俺は歓声に軽く手を振り返しながら、控え室に戻った

すこしして、リオが笑顔で戻ってきた


「勝ったか?」


アナウンスが控え室まで聞こえているので、結果は分かっているが、リオに確認する


「もちろん!楽勝だったよ!」


「魔法はなにを使ったんだ?」


「風魔法だよ!強風で舞台から落としちゃった」


「なるほどな、その手も使えるな」


「あ、でも、次からは加減する様に言われちゃった·····他の舞台の戦いに影響が出ないようにしてくれだって·····」


影響が出るほどの強風を使ったのか·····相手は大丈夫だろうか·····


「明日からは違う戦い方をすればいいんじゃないか?とりあえず、今日は宿に戻るか」


「そうね!緊張して疲れちゃった·····はやくお風呂に入りたい·····」


ブツブツ言ってるリオと一緒に宿に戻ることにした

レンの試合も終わっているはずだが、控え室には帰ってこなかった

そのまま城に戻ったのかもしれない

もちろん、レンも勝ち進んでいる




その後の予選試合も何事もなく進んだ

2日目、3日目、4日目のブロック決勝戦まで、全ての試合で俺は威圧のみで倒した

全員、俺より格下だったから仕方ない·····

リオは2日目は水魔法で大量の水を出して相手を場外にして、他の舞台に影響が出ると、また注意されていた

3日目は土魔法で舞台を変形させて、場外にしたが、変形させるなと怒られていた

4日目のブロック決勝戦では火魔法を使って相手を火のサークルで囲み、場外へ追いやるとレフェリーも固まって少し動かなくなってしまった

まぁ4日間で4種属のしかも、全種強力な魔法を見せられたらそうなるのが普通だろう


色々あったが、4日間続いた予選トーナメントは無事終了し、本戦出場者が決定した

出場者は、俺、リオ、レン、ユダの4名となった

ユダはレンの弟子で、付き人だそうだ、予選中に何度か見かけたが、顔立ちは整っていて目付きが鋭い男で、レンを護衛しているのか常に周りを警戒していた

本戦の対戦カードは、当日にランダムで決められるらしいので、誰に当たるかはまだわからない

明日は休息となり、本戦は明後日に行われるそうだ

1日で舞台の修復や本戦の準備を行うらしい


俺とリオは1日じっと宿に篭っていられるわけもなく、シロと修行をして過ごした




そして、本戦当日·····

俺達4人は、改装された舞台の中央に案内された

これから、対戦カードが発表される

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る