第9話 絶望と覚醒
「……ッ!!な、んだ……これ」
身体中が痛い……胸から腹にかけて激痛が走った。
今まで感じたことがない激痛で目を覚ました俺は、薄れる意識をどうにか繋ぎ止める。
「み、ずか……?」
身体が濡れていた。
周りが暗くて何も見えないが、なんだかヌルっとしてる。
目の前に最近見慣れた火の玉が現れた。
周りが明るくなる……
それは
『これ、全部俺の血か……?これ以上はヤバイ……』
俺の周りには血の池が出来ていた。
傷口を必死に抑えるが、血が止まらない。纏まらない思考をどうにか働かすが血の止め方がわからない。
俺は、必死だった……とにかく血を集めようとした。
すると、血の池が青く光り始めた。
アイテムボックスに収納し始めたようだ。
『そうだ……血を……飲めば……』
飲めば死なない保証などない、だが、他に方法がない以上、少しでも血を戻す必要があった。
それが自分
「……血が止まった?」
痛みを堪えながら、自分の体を火の玉で照らす。
熊の爪痕が生々しく残っているがその上を血が結晶の様に固まって流血を止めている。
「なんだ……これ?」
どう言う現象か分からないがとにかく血が止まった。
まだ血が足らないのには代わりなく、頭はぼーっとしていて思考が定まらない。
周りを火の玉で照らしていると、俺の下には狼がいるのに気づいた。俺が落ちてきて下敷きになったようだ。
「こいつがいたおかげで俺は助かったのか……」
※ ※ ※ ※
あれから何時間、いや、何日経っただろう……
動かない体を休めるために、真っ暗な洞窟でブラッドウルフの毛皮に寝転びながらじっとしていた。
ブラッドウルフとは俺が下敷きにした狼の魔物だ。
喉が乾けば、水魔法で水分を摂取し。
腹が減れば、ホーンラビットの肉を焼いて適当に調味料を付けて食べた。
これまで少ない食料でどうにかつなぎ止めてきた。
熊にやられた傷は完治とは行かないが、血が止まり痛みもかなり引いている。
なんとか動けるようになった俺は体を起こし、これからどうするか考える。
『食料はもうすぐ尽きる……その前に食べれる食料か魔物を見つけるしかない』
『水は水魔法でどうにかなる』
『出口まではマップを確認しながら進み続けるしかないか……』
『ボロボロの服はとりあえずブラッドウルフの毛皮でも羽織っとけばいいだろ……』
『あの熊がまた出てきたら勝てるか?……正直厳しい……逃げれるかどうかも分からない……でも負けたままなのも嫌だ』
『……ここにいても同じか····あいつがどこにいるかも分からない……それに、あいつより強い魔物がいるかもしれない……』
「じっとしていても始まらない! 出口を探すしかないな。出口を探しながらレベルを上げて強くなって、あいつを絶対倒す!」
ざっくりこれからの方向性を決めた俺は、今持っているものやステータスを再度確認することにした。
まずは最近増えた持ち物だ。
・エレメンタルの欠片
・転移者の血×1L
・ブラッドウルフの毛皮(
・ブラッドウルフの肉(
・ブラッドウルフの血(
何度かの食事でエレメンタルの欠片も数が減ってきた。
【転移者の血】って……俺の血だよな?
ブラッドウルフの素材は
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<転移者の血>
鉄分が多く含まれている。
魔剣の材料になる。
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魔剣? この世界のどこかにあるのだろうか……
あるなら、他に転移者がいるはずだが……ここは華麗にスルーしておこう。
次はステータスの確認だな
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【名前 / 性別】ジン / 男
【年齢 / レベル】17歳 / Lv.14
【スキル】料理:Lv.5 / 剣術:Lv.1 / 槍術:Lv.1 / 火魔法:Lv.2<0.4> / 水魔法:Lv.1<0.8> / 風魔法:Lv.2<0.2> / 土魔法:Lv.1<0.6> / 身体強化:Lv.2<1.2>
【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 /
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ツッコミどころ満載だった……Lv.14になってるし……
スキルも火魔法と風魔法がLV.2に上がっている
火と風は醤油と酢の味だったから酢醤油みたいにして肉を食べることが多かった、それで他のよりも高いのだろうか
身体強化もLv.2になっている、その横の数字が1.2になっているが、これもよくわからない……
そして極めつけはユニークに含まれている
たぶんこいつのおかげで俺は一命を取り留めたんだと思う
入手した可能性としては【ブラッドウルフの血】か……
<ブラッドウルフの血>(
ブラッドウルフが原因で間違いないようだ
※ ※ ※ ※
ジンが奈落の底にいるころ
カタクの冒険者ギルドでは……
「あやつはまだ戻らんのか!? あれから何日になる!」
「まだ戻られていません……依頼を受けて今日で1週間です……さすがに、冒険者1人に捜索部隊を編成するわけにも行きませんよね……?」
「当たり前じゃ……そんなことをすれば他の冒険者や貴族連中から疑問の声が上がってしまう……なぜあそこ行かせてしまったんじゃ! あそこにはシャドウベアーがいることは分かっておるじゃろ!」
「すみません……あまり奥には行かないように注意はしたんですが…………」
「仕方あるまい……信頼をおけるものにだけ招集を掛けておけ、捜索以外の依頼で部隊を編成する準備もじゃ!」
「はいっ!」
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