第10話 プール回4

食べ終わったら波の出るプールで2人で遊んだり、25mプールで競争したりしてこんなに楽しい時間を過ごしたのはいつ以来だろう?


さすがに疲れたのか日が傾きだした頃に切り上げる。

加奈の水着も見れなくなってしまうのを悲しみながらプールを上がり着替える。



あーこんな楽しい時間がずっと続けばいいのになぁ〜と思いながらゆっくり歩きながら来た道を戻って行く。

帰ってから編集作業が残っている事など完璧に忘れている。 もしかしたら自分がユーチュバーだって事も忘れてしまったかも知れない。

それぐらい今日の時間は楽しくて、切なくて、掛け替えのない時間だった。

俺はもう加奈の事を妹として見れなくなってしまった。 これまではなけなしの理性で何とかしてきたが今日で無理になってしまった。

もう気持ちをぶつけたい。ただもし間違えていたら戻ってくることができない。

自分の気持ちにぐちゃぐちゃになりながら歩いていると

「お兄ちゃん? お兄ちゃん?」

何も話さなかったのがおかしかったのか反応が遅くなった

「えーっと、何だっけ?」

「もー聞いてるの? 今日は楽しかったねって」

加奈も楽しんでくれて良かった。

日が沈み出し、夕焼けに染まる。

もう、俺は待てなかった。

「かなっ」

「はっ、はいっ」

「加奈、好きだ 妹としてじゃなく、異性として好きになってしまった。 おかしかも知れないけど付き合って下さい」

一世一代の大勝負 手を出してて頭を下げた



しばらくしても何の反応もない

不安になって上体を起こしてみると加奈は泣いていた。

やばい、女の子を泣かせてしまった。あーやっぱりダメだったのだろうか?

不安に思っていると少し落ち着いたのか

「お兄ちゃん、いや優太さん。 私もお兄ちゃんの事がずっと好きでした。 私を貰って下さい」

ずっと両思いだったんだ。 今知った。

ありがとうと言ってすっと抱きしめた。

塩素の香りと加奈の香りが鼻いっぱいに広がりずっとこうしていたいと思っていた。


そんな幸せは唐突に終わりを迎える。


その後の記憶は 俺にはない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る