　やめてくれよ。

　自分の事を語るのは嫌いなんだ。

　俺の話なんて聞いて、何が面白いんだよ。

　え？

　……そうか。ま、そんなら仕方ねえな……ちょっとしか話さねえぞ。

　俺の話をするなら、まずは魔族の話を始めなきゃなんねえ。

　魔族は人を喰らう。

　魔族は食物連鎖の頂点だ。それなのに、必要以上に寿命が長え。だからかな。繁栄ってやつを人間に奪われた。

　え？　「魔の者」って呼ばないのかって？

　そりゃ、人間側の呼び方だ。魔族は自分達のことをそんなふうに呼ばねえんだ。生きとし生けるものたちの、たった一種族として自分たちを位置づけてる。だから魔族。

　まあ、そんな魔族は被捕食者である人間に、繁殖力と知能では全く敵わなかった。人間には、魔族と同じで知能がある。それでいて、弱い。

　弱過ぎるんだ。

　弱過ぎるからこそ、魔族より繁殖し、魔族より深く物事を考える。そんなの、魔族から見たらたまったもんじゃねえ。

　人間はあの手この手で魔族に対抗してきた。自分達こそが食物連鎖の頂点だと言わんばかりに、人間たちは魔族を滅ぼそうとしてきた。

　だが、魔族たちだって黙ってそれを受け入れたりはしねえ。時には国一つをあっという間に滅ぼしたり、家畜にするためにたくさんの人間を攫ったりした事もあったそうだ。

　魔族と人間はずっと戦争を繰り返してきた。

　人間の立場で考えりゃ、牛や豚が食われたくねえって抵抗してくる様なもんだ。最悪だろ？

　さて。魔族の基礎はこれくらいだ。

　次は……俺が惚れた女の事を話してやるよ。

　美しい緑色の髪と、天使の様な翼を持った──

　──魔族の女の話だ。

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