素晴らしきこの閉会

エリー.ファー

素晴らしきこの閉会

 この世界は、閉じてしまった。

 だから、歩き始めるのだ。

 そうだろう。

 違うか諸君。

 今、この世界は閉じられようとしている。

 誰の目にも明らかだ。

 自分の生き方に嘘をつくことが、生きることであると感じているバカばかりだ。

 そうではない。

 そうではないだろう。

 諸君。

 そうではないだろう。

 もしも、今日が本当に朝日を迎えるための昨日と同じなら。

 今日が来る前に死んでも何の変化もない日常に嫌気がさすこともなかったはずだ。

 違うか。

 違うか、諸君。

 そうでだろう、諸君。

 君の手元にある銃は誰のためのものだ。

 君のための時間を守るためにあるのではないか。

 クラッツアンデル。

 バニーオーディエンス。

 レフルフレンドルトニア。

 アンバスボールザー。

 ギリービークオートザニア。

 ジェルイカイ。

 ペペルカニルト。

 ドトルゴートン。

 バクシャルトウェルゼン。

 ビギーファイブ。

 コルトナイトバンクショー。

 フィンディルテルデロルトシア。

 ボボルンデアンス。

 レンドルテンウェルデニア。

 ギャグトニーエイゼン。

 ベイクスター。

 ディアンショート。

 ジョジョルデヴェニー。

 キングヴァン。

 それらの国々がこの時ばかりは手を組もうと言ったのだ。

 これだけの国々が諸君の味方をする。

 これだけの軍勢が、これだけの人々が、これだけの望みが。

 諸君に、我々に、味方している。

 例え、その相手が絶望まみれでも。

 例え、その相手がいまだかつてない相手であったとしても。

 例え、その相手が我らの父親や母親の形を真似て近寄って来ても。

 剣を抜き、矢を放ち、斧を振り回し、爆弾を投げ込み、前進し、例えその命が尽きようとも、自分の後ろにいる者たちの未来のことを想えるか。

 愛する人を想うのではない。

 愛してくれる人を想うのでもない。

 人を愛してしまえ。

 誰かれ構わず愛してしまえ。

 いい。

 そんな細かいことなどもういい。

 愛してしまえ。

 我が赦す。

 すべて愛してしまえ。

 すべて愛して。

 愛したすべてのために、その命を捧げよ。

 その命をくれてやれ。

 例え、命を奪われても、それは奪われたのではない。

 捧げたと思え。

 見知らぬ人に捧げたと思え。

 その人がどこかでお前のことなど何一つ知りもしないまま、自分が生きていることに感謝することを誇りに思え。

 我らのような血まみれの戦士の名が、未来永劫刻まれることなどないだろう。

 例え、正義の名の元に進軍をしても、所詮は命を奪った殺人者である。綺麗ごとで塗り固められる命の奪い合いなど存在しない。仮に諸君も、我も、勝者にはなれない。

 勇者にはなれない。

 偉人にはなれない。

 英雄にはなれない。

 しかし。

 今、この瞬間。

 間違いなく。

 諸君は、戦士である。

 この時代に生まれ落ちた戦士たちである。

 勝者は勝っただけでしかない。

 勇者は勇ましいだけでしかない。

 偉人は偉業を成しただでしかない。

 英雄は雄々しいだけでしかない。

 諸君らは。

 勝利し、勇ましく、偉業をなし、雄々しくあるために戦う。

 戦士である。

 未来に名を残せずとも。

 今日。

 我は皆の顔を覚え。

 我は皆の名を覚え。

 我は皆の故郷を覚え。

 我は皆の武器を覚え。

 勝利しても、敗北しても、我は。

 この戦いの責任のために。

 死刑となる。

 案ずるな。

 諸君。

 あの世で神々に諸君らの功績を、神々が聞き飽きるまで。

 いや。

 聞き飽きてもなお語り続けよう。

 そのためには、諸君らの戦士としての生きざまが必要なのだ。

 どうか。

 どうか。

 我のために。

 我が神々の元に行く時のために。

 よい土産話を作ってはくれぬだろうか。

 すべては。

 すべては。

 すべてはっ。

 この日のためにっ。

 人間の歴史がここで終わるかっ。

 否っ。

 その訳がないっ。

 我らは生き残りっ。

 子供にっ、孫にっ、その子供たちのためにっ。

 この命を捧げるっ。

 我らは戦士であるっ。

 我らは偉大なる人間という生き物の中の頂上に立つっ。

 戦士であるっ。

 それでは諸君、参るとしよう。

 たかが、ネトゲなんだし。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素晴らしきこの閉会 エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ