30才はおじさんですか?
茜空
第1話 初デートは一日にしてならず。されど失恋は藪から棒に。
「私帰る」
「え?」
どういうこと?
今日は憧れの彩子ちゃんとの初デートだった。
この日のためにどれだけ彩子ちゃんにお金をつぎ込んできたか。今から乗る車も彩子ちゃんとのデートのために奮発して買ったものだ。勿論ローンで。
毎日彩子ちゃんに話しかけ、当たり障りのない会話を続け、とうとうデートにまでこぎつけたのだ。
彩子ちゃんとは職場が同じで、彼女は俺の職場である病院の窓口でみんなを笑顔で迎える天使だった。
いや「だった」じゃなくて天使なのだ。
そんな彩子ちゃんから理由もなく、しかもこれからデートに出かけるというのに、一体何が起こったのだろうか・・・!?
「え・・・えっと・・・何か気に障ること言ったかな、ごめん」
「理由もわからないのに謝らないで。誠意がない謝罪だわ」
・・・誠意ってなんだろ。
「・・・はぁ。この車のナンバー何?」
彼女は大きくため息を吐きながら訊いた。
天使のため息は俺の心をときめかせた。彩子ちゃんのため息はなぜこんなに愛おしいんだろう。
「ナンバー?4219だけど・・・?」
「そう、
1994年2月19日生まれなので覚えやすい「4219」のナンバーをわざわざ選んだんだが、どうやら失敗だったらしい。
「それじゃあ」
「あ、えっと・・・えっと・・・」
何をどう言えばいいのかわからないまま、彩子ちゃんは風と共に去ってしまった。
2024年2月19日。
彩子ちゃんとのデートが不発に終わった翌日である今日、俺の30歳の誕生日だった。
とうとうこの一線を越えてしまった。
24歳で結婚するという目標はとおの昔に過ぎ去った。
友人たちは二十代駆け込み結婚をして勝者面している。
それがどうした。
俺は30歳、独身、童貞だ。
誰にも迷惑かけていないのだから問題ないだろ。
「
遺伝子上の父親の言葉が頭に浮かんだ。
、、、いや、親には迷惑かけていない。
むしろ親からプレッシャーを受けて迷惑しているのだ。
かわいそうな俺。
昨日、二十代最後の日を彩子ちゃんと過ごすという俺の夢の一日は悪夢として終わった。
非常に行きづらい職場に今日も出勤だ。本当は休みたい。しかしここで休んだら、明日も休みたくなる。そして次の日も、次の日も・・・。
だから今日は出勤だ。出勤なのだ!バカボンのパパじゃないけど、それでいいのだ!
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