第5話【そこだけリアル】


おじさんは生唾を呑み込むと両の手をゆっくりと私の胸元に目掛ける。


――――その時だった。


おじさんは警察官に羽交い締めにあい、取り押さえされると、引きずられるようにパトカーへ連行されたのだ。


私はそれを呆然と眺めしばらくすると、青信号でクルマは2t程の重量があるタピオカに変わり、埋もれたタピオカの中から、おじさんの手首から上だけが出ており、堂々と親指を立てていた。


その瞬間――――おじさんはトラックと衝突した。


ほとばしる血の赤と、雫のようなタピオカの茶色……不謹慎かもしれないが、私はそれを――――美しいと思った。



今までありがとう――――おじさん……そしてさようなら。

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