けものフレンズ2に付ける薬

p.m

第1話 しゅっぱつのひ

ここはジャパリパーク きょうしゅうエリアの端、日の出港の近く。

木陰の下でいつも背負っているかばんを枕代わりにしてお昼寝している子がひとり。

良い天気の気持ちのいい日なのにその子、かばんは苦しそうにうめき声を上げている。


「うーん う、ううーん」


その様子を心配してネコ科のフレンズ、サーバルがかばんの体をゆする。

「……ちゃん かばんちゃん!」


「うーん…… う、うわあああああ!」

「うわあああああ!」


突然大きな声を上げて飛び起きるかばん、その声に驚かされて大きな声を上げるサーバル。


「びっくりしたぁー かばんちゃん、苦しそうにしてたけど、どうしたの?」

「はあ はあ はあ サーバルちゃん! ゆ……夢だったんだ……」


「なーんだ、お昼寝してたんだね。 どんな夢見てたのかな?」

「う、うん……えっと、あのね……」


かばんは呼吸を落ち着けてから話し始める。


「サーバルちゃんはみんなで四神の山に登った時の事、覚えてるよね?

 あの時、ラッキーさんに『お客様は避難して下さい』って言われたけれど、

 僕はパークのみんなの為に出来る事をするって決めて、その後みんなと力を合わせて

 協力していっぱいがんばって、おかげでパークの危機を乗り越えられたわけだけど……」


サーバルはかばんの顔を覗き込み、うんうんと頷く。

 

「さっきでここでうとうとしながら、ふと

 『もしもあの時言われるままに僕一人だけで避難していたらどうなったのかな?』

 って考えながら眠っちゃったんだ。 そうしたら……

 どんな夢だったかよく思い出せないんだけど、ものすごく怖い思いをした気がして

 夢の中で何かすごく悲しい事があって……後悔しても後悔しきれなくて……」


表情が暗く曇っていくかばん


「大丈夫だよ! そんなのただの夢じゃない!

 かばんちゃんは一人で逃げたりしないやさしい子だって私知ってるし、

 もしも怖いこととか悲しいことがあっても、かばんちゃんならきっと乗り越えられるよ!

 だって、かばんちゃんはすっごいんだから!」


かばんの心を照らす太陽のように明るい笑顔でサーバルは答えた。


「あはっ サーバルちゃんの顔見たら怖い夢の事、すっかり忘れちゃったよ!

 ありがとう! サーバルちゃん!」


「かばんちゃんが元気になって良かった! そろそろ出発の時間だよ。

 船着き場でみんな待ってるよ! 行こう!」


「うん! サーバルちゃん!」


二人は元気に船着き場へ向かっていった。



木陰の下、かばんが寝転んでいた枕元の草影にはサンドスターが1つ転がっていた。

サンドスターにはヒトの強い感情を受けると黒ずんでサンドスター・ロウへと変化し、

そのヒトの記憶を写し取り、意志を浮力にして浮かび上がる性質がある。


かばんの悪夢の中で発した強い感情を受けたサンドスターは

かばんの意志と記憶を乗せたサンドスター・ロウとなって浮かび、空高く舞い上がり

やがて風に乗って遠くの空へ飛び立って行った。



その空の下に広がる海からは賑やかな声が聞こえてきた。


「なになに? どこ行くのー?」


「あなたは何のフレンズさんですか?」


「お友達になろうよ!」



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※この物語では下記の物質について独自設定(【】で囲んだ項目)を使用しています。


サンドスター   ……動物、物質にぶつかるとフレンズが生まれる、保存能力がある

           【ヒトの強い感情を受けると意志と記憶を写し取って

            サンドスター・ロウになる】



サンドスター・ロウ……セルリアンに吸収される、

           【放置すると時間をかけてセルリアンに変化する】


セルリウム    ……二期に登場した黒い液体、

           【実はセルリアンの素ではない(後の話で詳しく書きます)】

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