第13話 はだかのおうさま

 ある国に、いつも最新鋭の服に身を包み、それを披露することを趣味とした王様がいます。

詐欺師は考えました。馬鹿には見えない服があると言ってバカな王様に服を売りつけて儲けよう。そしてそこからこの見えない服詐欺を広げようっと。

 「王様、ここに馬鹿には見えない服がございます。非常に美しいけど、馬鹿には見えないという不思議な服です。」

 王様にはそれが見えません。しかし、見えないと言うと自分が馬鹿だと思われるのが嫌で、見えているふりをしました。

 「お・・おう・・、なんて美しい服だ。。。」

 詐欺師は、思い通りの展開で薄ら笑いを浮かべました。

 「どうです、見事でしょう。」なんて言ったり、もうウキウキが止まりません。

 「王様、もしよろしければ今度の披露会はこの服を着て頂けないでしょうか?」

王様は少し考えてこう言いました。

 「美しいけど、馬鹿には見えないんだろ?じゃあ、参加者の中に馬鹿が居たら私は裸に見えるよね?だとしたらこれは服としては成り立たないよね?」

 当然の正論です。そうです。この王様は正論を言う人でした。

 詐欺師もこう返します。

 「そもそもどんなファッションも馬鹿が見れば服を着ていないよりも恥ずかしいものです。」

 側近がこう言いました

 「衣服とは着るものという定義であり、着れさえすれば衣服になるのではないでしょうか?」

王様、「これ着れるの?」

詐欺師「着れます」

側近も馬鹿だと思われたくないのでこう言いました。

「着れさえすれば衣服です。」

王様、「けど、馬鹿から見たら見えないんじゃ、着れてないよね?」

詐欺師「この国にはそんなに馬鹿が多いと?」

側近「馬鹿とは、知能の動きが遅い人の意味です。少なくとも人間には見えるのではないでしょうか?」

 今、この服が見えない王様は焦ります。

王様、「馬鹿さ加減を調整できるのか?」

詐欺師「出来ます。しかし、今ここにある服は一番緩く調整しております。よっぽどの馬鹿ではない限り、この服は見えると思いますよ。」

王様はさらに焦りました。

 「となると、馬鹿は見えないという機能の必要性が無いよね?見えないという事に何の意味があるの?」

詐欺師「この世に完璧なものはありません。今ここにある美しい服も実は完璧ではないという事を事前にお伝えしたままです。馬鹿に見えないという欠点を抱える事によりより美しくなれるのです。」

王様「馬鹿には見えないという欠点を抱える事で、美しくなれるってジャンルがやや違う気がするよ。サッカーが下手な代わりに野球がうまいみたいな感じがするよ。つり合い取れていないよね?」

詐欺師「神様は残酷ですね。野球のうまいサッカー選手って言うものを作り出しているのですから。。」

王様「じゃあ、Jリーグ選手を集めて来年プロ野球に乗り込もうか?」

詐欺師「いいですね。この世代の運動神経のいい子供たちがサッカーをやっていたと言われる世代ですからもしかするともしかするかもしれません。」

 その後、サッカー部出身のプロ野球選手が多く生まれる事になるのですが、それはまた別の話・・・・


めでたしめでたし


 





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