第12話 あかずきんちゃん

 昨年の話ですが、大上さんが森で赤ずきんを被った女性を見かけました。話しかけると、思った以上にお話しいただきましたが、お名前を聞いても、あかずきんちゃんとしか、名前は教えて頂けなかったので、(仮称)あかずきんちゃんと呼ぶことにしました。(仮称)あかずきんちゃんは、森に住むおばあさんが病気になったので栄養のある食べ物を届ける為に森を歩いていたとのことです。大上さんは、ここから徒歩30分程度の道のりを歩く(仮称)あかずきんちゃんに、食べ物だけではなくお花のようなものもあった方がいいとアドバイスし、その隙におばあさんの家に先回りしました。そして、(仮称)あかずきんちゃんに変装し、ろうごの資金運用に関してお話しました。老後に2000万円いるとの試算を聞かされたおばあさんは、寝込んでいる場合じゃないと、職探しに出かけました。

 するとそこへ、(仮称)あかずきんちゃんがやってきました。大上さんは慌てておばあさんになりすましてやり過ごすことにしました。

 「こんにちは、おばあさん」

 「こんにちは」

 「声がおかしいよ。どうしてそんなガラガラ声なの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおしてそんなに大きなマスクをしているの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおしてそんなに布団をかぶっているの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおして布団からでないの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおしてこんなに部屋が暑いの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおしていつもみたいにお話してくれないの?」

 「風邪をひいているからだよ」

 「どおしてずっと寝ているの?」

 「(怒)なにしにきたの?」

大上さんはうっかり大声を出してしまいました。(仮称)あかずきんちゃんは異変を感じ、家を飛び出して数分後に青い服を着た人たちと戻ってきました。

 すると、ベットの上で座っている大上さんを見つけました。大上さんは、青い服の人にこう訴えました。

 風邪をひいている人のお見舞いに来ているのに、何度も「風邪をひいている」と言わせるのはある意味暴力ではないか?青い服の人たちは一定の理解は示して頂けましたが、大上さんは青い服の人たちとどこかへ行ってしまいました。

 この出来事で、(仮称)あかずきんちゃんこと、訪問介護センター「あかずきんちゃん」には、業務改善命令が出ました。

 ①日中の暑い中、食べ物に対して充分な保冷をせず持参したことに関する食糧保存に関しての是正命令

 ②対象者であるおばあさん、山田 千鶴 様の自宅に訪問する旨を第三者に漏らしたことに関する是正命令

 ③風邪をひいていた大上 昭さんに対する言葉の暴力に対する是正命令

 このことにより、訪問介護センター「あかずきんちゃん」は深刻な経営不振に陥りました。

 その後、山田 亮氏により大上さんが、老後2000万円必要との試算をお話したため、山田 千鶴 様が過労により体調を壊したとの訴えがあり、訪問介護センター「あかずきんちゃん」に対する世間のイメージが大きく変わりました。

 訪問介護センター「あかずきんちゃん」は、山田 亮氏の資金援助もあり、助けられ今では経営を持ち直しました。訪問介護センター「あかずきんちゃん」は、お先真っ暗で怖かったというコメントを発表しました。

 おばさんも何とか2000万貯めることが出来、その後幸せに暮しました。

 大上さんは、老後2000万円問題と共に、どこかへ行ってしまいました。


めでたしめでたし

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る