第10話 したきりすずめ
つい先月の事ですが、ある家におじいさんとおばあさんと、雀谷さんが住んでいました。雀谷さんは、ある日飲み屋でおじいさんが知り合いになり、連れて帰って来た方で、おばあさんには面識が無い方でした。おばあさんは、一向に帰らない雀谷さんを快くは思っていませんでしたが、おじいさんは毎晩の様に雀谷さんと飲み歩いたり、たいそう仲のいい感じでした。
そんなある日、雀谷さんがおばあさんの大切にしていた洗濯ノリを日本酒と間違えて飲んでしまいました。それに激怒したおばあさんは、持っていたハサミで雀谷さんの舌を切ってしまいました。雀谷さんは、病院に運ばれて12針を縫う大怪我を負ってしまいました。おじいさんは、おばあさんの行為に心を痛めながらも、雀谷さんを熱心に見舞いました。おじいさんは、おばあさんと話し合う事にしました。
「おばあさんやどうしてあんな事をしてしまったのですか?」
「私の大事な洗濯ノリを食べてしまったからです。」
「だとしてもあそこまでやるのは、やり過ぎでは無いですか?」
「そもそも雀谷さんは、どこの誰なんですか?おじいさんとはどんな関係なんですか?」
「雀谷さんは、大金持ちのボンボンじゃよ。いつもお酒を奢ってくれる人じゃ」
みるみるうちに表情がかわるおばあさん。おばあさんは、次の日に雀谷さんを見舞いました。
「雀谷さん、申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、わたくしも酔っ払っておばあさんの大事なものを食べてしまい申し訳ありませんでした。」
意外にも雀谷さんから、優しい言葉をかけて頂き戸惑うおばあさん。
続けて、雀谷さんは
「先ほど、おじいさんも来て頂き、お見舞いのお礼に小さいつづらをお持ち帰り頂きました。是非、大きいつづらをと申したのですが、小さい方でいいとおっしゃっていました。つくづく欲の無い方ですね。」
と、いいました。おばあさんは
「こちらが悪いことをしたのに、お礼だなんてとんでもございません。おじいさんには、返すように伝えておきます。」
「いえいえ、私だけでは到底抱えきれませんので。。。どうですか?おばあさん、良かったらこの大きいつづらも持って帰って頂けないでしょうか?」
「そうですか?では、遠慮無く」
そう言って、おばあさんは大きなつづらを持って帰りました。
帰宅するとおじさんが茫然自失で立ち尽くしていました。おばあさんが話しかけると
「おじさん、どうなさいました?」
「ワシは勘違いしておった。雀谷さん。」
携帯電話サイズの小さいつづらには、「携帯電話ご契約ありがとうございます」と書かれており、5年以内に解約すると違約金が、50万円かかるとの紙が同封されていました。
慌てて、おばさんも大きいつづらを開けました。そこには、「お買い上げありがとうございます。」との紙と共に、腹筋を鍛える健康器具が入っていました。
そう、雀谷さんは訪問販売員だったのです。。
おばあさんの健康器具は、なんと80万もするではないですか。。。
しかし、既にムキムキのおばあさんには特に必要ありませんでした。
おばあさんは、未使用の為、返却しました。
おばあさんは実に冷静でした。
そして、おばあさんに言われ、おじいさんも、クーリングオフしました。
クーリングオフ制度万歳です。
それから、一ヶ月後腹筋ムキムキで、携帯電話2台持ちの雀谷さんは退院して行きました。
その後、彼はDVDで隊長と呼ばれていましたが、それはまた別の話です。
めでたしめでたし
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