3Rの魔法師〜魔力零の異端児は今日も誰かの魔力を糧にする〜

松尾 からすけ

1.零の魔法師

第1話 プロローグ

 風が猛る。

 雷が吠える。

 異常なまでに荒れ狂う外に比べ、異様なまでに静まり返った聖堂。

 ステンドグラスに打ち付ける雨は弾丸の如く、

 轟く雷鳴は怒号の如く、

 そんな自然の咆哮も、ここにいる者達の耳にはまるで届かない。

 ある者は青白い顔で唇を震わし、

 ある者は奥歯を噛み締めながら血が滴る程に拳を握る。

 またある者は、自身の見立てが間違いである事を祈り、再び神の御心に語りかけるが、無情な現実にこうべを垂れた。

 そんな中、純粋無垢な目でキョロキョロと周りを見ている少年が一人。

 いや、少年と呼ぶにはまだ幼すぎる。

 周りの者達と比較しても半分にも満たない背丈。

 ここに来た意味がほとんどわかっていない未熟な知能。

 話すことも聞くこともままならない言語能力。


 だからなのだろう。

 聖職衣に身を包んだ男の言葉が、彼には理解できなかった。

 ──この子の魔力位階は零です。

 その言葉が意味する事を、五歳児の頭では到底理解できるわけもなかった。

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