SCP-016-N 『襲撃』
「だけど、君にはここで死んでもらう」
そして、先輩は、鞄からナイフを取り出した。
「…………え? それは………うおっ!?」
そしてそのまま荷物を地面に放り投げて、恐ろしく残酷に、そして冷酷な目でナイフを素早く投げる。俺はいきなりの《それ》に、頭を横に思いきりずらしたが反応しきれず、ナイフが左頬を掠ってしまう。
「―――ッ!」
一応の訓練は受けているはいえ、それでもいきなり投げられたら無理だ。クソッ…こっちは武器も持ってないから応戦のしようがない。そして、投げられたナイフは相手の方に戻っていく。その瞬間、ナイフの柄に張ってあるピアノ線がキラリと光る。どうやらあれで烏島の方に戻っていく仕組みらしい。しかも、今の投げ方と殺気から、相手は本当の訓練を積んでいる《財団のエージェント》だと考えられる。いや、そんな冷静に分析をしている場合じゃない。
「おい! そのナイフをしまえ! 俺はお前の……味方だ! それに、今ここでそんなモノ投げまくったらそれこそ大問題だ! 最悪Dクラス行きだぞ!」
Dクラス。それは、人間社会の倫理や道徳から外れている存在。凶悪犯罪者と『一か月働けば有罪判決取り消し』いう甘い罠の契約を交わし、危険なSCPの実験台として使われる存在。しかし、そんなことまるで気にしない表情で烏山はナイフを投げ続ける。
「味方を騙る敵は全員排除。そうやって教えられてきた。そもそも。あなたがどこから来てるかは知らないけど。私は一人で配属されている。即ちあなたは敵。あなたは騙す相手を間違えた」
「おい! まずは話を聞け! そろそろ俺は体力の限界なんだ!」
「そんなもの知らない。《さっさと死ね》」
俺を攻撃してるにはそういう理由だったのか。まるでロボットというか、脳筋だな。それでも、このまま避け続けるのは至難の業だ。運動を全くしないツケがここで回ってきた。出来るなら証拠を突きつけたいが……。そうだ、確かカバンの中にセキュリティカードがあったはずだ。それさえ突き出せればと思ったが、避けつづける俺にしびれを切らしたのかナイフを投げるのをやめ、代わりにナイフを向けてこちらの方に走ってきた。
「しかも。それなら好都合。もうすぐあなたを始末できるから。それでも。最後に。君と一緒にいて。少しは――」
「オラァ! これが俺のセキュリティカードだ! よく見ろ!」
俺は多分に息を切らしながらも、ギリギリでカードを出せた。それを突き出された瞬間、烏山先輩の動きが止まる。そのまま俺のカードをひったくり、上から、下から、斜めから注意深く見る。どうやら、なんとか間に合った様だ。
「ハァハァ……どうだ……ッハア……これが……証拠だ…!」
「…。…うん。どうやら本物らしい。ごめんごめん」
せっかく証拠を突きつけて無罪を証明出来たのに、相手の口調は凄い軽い。そして、俺の息も整ったところで、いくつか気になっていた事を質問する。
「まず、あんたのクリアランスとサイトはいくつだ?こっちの情報によると、2なんだろ?」
「…。…2。サイト████」
「それなら俺と同期だな。それじゃあもう一つだ。さっき、一人で配属されてるって言ってたな?こっちはお前を含めてあと2人いるって聞いていたんだが?」
一番気になっていたことを聞けたが、烏山は首を傾げる。どうやら、烏山も何もきかされていないらしい。
「…?…私は1人だけで配属されているって聞いた。普通に知らない」
「そうか。徹底されたカバーストーリーだな……!」
しかし、棚空先輩は確かに、『僕が伝えたことが本当かは分からない』と言っていた。しかし、それこそがカバーストーリーなのか? しかし、そこで使っても何か意味があるとは思えないんだが…。考えれば考えるほど意味が分からない。そして、一番気になることを聞いた。
「で、お前はどんな理由で███高校に配属されているんだ?それが一番気になるんだが?」
「…。…多分。私もあなたと同じ。理由は知らない。」
「ああ、やっぱりか…。いや、それが分かっただけでもありがたい。」
やはり大事なことは伝えられてないか。それならどうしようもない。そんなこんなで俺は死闘を乗り超えたのであった。…明日は筋肉痛か?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
そう言えば、200PVを突破してました。ありがとうございます。まだまだ精進するぞ!
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