SCP‐015‐N 『購入』

昨日棚空先輩に告げられた事を考え込んでいたら、緋鳥や五月にも心配されてしまった。どうやら、返事にも上の空だったらしい。正直あまり覚えていないので、そんな事を言われてもピンと来ない。しかし、いつまでもそんな事考えていても仕方がない。意識をキチンとさせて、とりあえず部活に顔だけ出そうとしたら烏島からすじま先輩が直接やってきた。教室をきょろきょろと見渡していたが、俺を見つけたらそのまま俺の腕をつかんで廊下まで引っ張っていった。

「ちょ、先輩? いきなり何するんですか?」

「…。…いいから。早く来て」

会話をしようとしても相手には伝わらないようで、問答無用で引っ張っていく。そんな俺と先輩を見て、周りのクラスメイトが訝しがる。

『え…。誰?あの女の人。先輩?』

『ああ、あれはほら、二年の、カラスヤマ? 先輩だよ。ていうかスタイル好いし、なにより胸でかくね? 普通に好みなんだが』

『アホか。そんなこと言ってるから…』

訝しむというより、野次馬の方が多そうだ。そんな事も気にせず、烏山先輩は俺を引っ張っていく。そして、廊下に着いたらようやく用件を話してくれた。

「…。…生物部の。生き物たちの餌が無い。だから。一緒に買いに行く。」

「え、俺ですか? いやまあ、いいですけど…。そういうのって普通顧問が買いに行くものじゃないんですか?」

率直な疑問を投げかけるが、先輩は嫌そうな顔で首を振る。

「…。…顧問の人。外人。怖い。しかも。一回も来てない」

「ええ…」



意外と下らない理由だったが、確かに外人は怖いという意識は日本人に多く見受けられる。他の理由で考えられるのは、先輩の性格と顧問アガサ先生の性格の問題だろう。俺が言っても良かったが、あの人なら「めんどいから嫌でーす!」とか言いかねない。

しかし、一回も来てないのは顧問としてどうなのだろうか。まあ、こんな所でうだうだしていてもしょうがないので、ささっと買いに…そういえば、予算はどうなっているのだろうかと思ったら、部室に予算が入った封筒があったらしい。そこまでするなら普通に買いに行けと思うのだが。……あ、あいつ等忘れてた。まあ、いいか。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

餌を買いに来たのは、近くのペットショップ『COOKIE』だ。金魚のエサから珍しい動物、例えばフクロウやワニなどのエサも売っているし、店内も広く、清潔な印象が強いので、最近全国チェーン店になった。もちろん多様な生き物もいる。だがしかし、それとは関係無くこの人とは少し喋りにくい。独特な喋り方だからだろうか。

「それで、具体的に、エサと何を買うんですか?」

「…!…決めてない。エサしか考えてなかった。なんか。適当に他のも買う?」

…性格も忘れっぽいというか、抜けているというか。何だか少し付き合いにくい。

「ああ、そうですか。まあ、予算次第じゃないですか?」

「…。…授業で使うなら。予算は生物部じゃなくて。学校の物として落ちる」

「あ、そうなんですね」

そんなちょっとためになる話を聞きながら、足りなかったカメのエサ(550g)や熱帯魚のエサ(600g)、水槽用のフィルターや、他にも10点程を買って帰った。

「…。…これ重い。餅屋くん。持って」

「俺がほとんど持ってますし、それカメのエサじゃないすか…。それぐらいもってください。」

「…。…ケチ」

「そんな事言われても持ちません。」

しかし、この人は本当にプロポーションが良い。教室にいた野次馬も言っていたが、俺とは違って背も高いし、胸も大きい。本当に、。まあ、女性のそういう所はあまりジロジロ見るものではないし、考えるものでも……。そう考えていたのだが、俺の頭に一粒の疑問がよぎる。

そうだ、何かがおかしい。



…そもそも、俺が高校に潜入しても、『この人は大人では無い』と思われる理由は何だ? それは、大前提として《高校には大人が学生を騙って通うものでは無い》という物がある。だからこそ、多少の無茶はあっても『この人は大人だ』と思われることはない。そして、その前提と、さっき俺が思った事。昨日棚空先輩に伝えられた二人の潜入員について。この事が組み合わさると……。

凄い無理やりな仮説だし、そんなはずがない。昨日の今日でそんな事、あるはずがない。だが、一応確認したい。しかし、『SCP財団職員ですか?』なんて聞いて間違えたらそれこそ記憶処理案件。なら、どうやって確認する……? しかし、ここでが浮かぶ。

「…?…どうしたの。餅屋くん。急に黙っちゃって」

急に黙って何かを考えた俺を心配する烏島先輩に、俺は思いついた言葉を言う。

「先輩、この言葉、知ってますか?」

「…?…何。いきなり。どうしたの?」

「正直に言ってください。……?」

その言葉を言った瞬間、烏島先輩のいつも眠たげな半目が、大きく見開かれる。

そのまま、先輩は何かを考えた後に、ゆっくりとこう言う。

「【ここは地獄のよう】」

よし、ビンゴだ。

これで安心だと思った。

次の瞬間だった。

「だけど、君には

そして、先輩は、鞄からナイフを取り出した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

どうも、投稿を戻すと言っておきながら結局3日放置した餅屋五平です。

投稿した次の日は中々書く気起きないんですよ。あと『Mega Man Rock Force』

やってました。これ投稿したら続きやります。後一人で終わり。








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