宇都宮 梓 第2話

この日もいつもと同じように、昼休みにクラスの友達と談笑していただけだった。


その中にいたりんが付き合いはじめたことから、話はクラスの男子の中で付き合うなら誰、という話に流れていった。


何人かのクラスの男子の名前があがった。


「梓は誰かいないのー?」


私は、言いたかったけど、言えなかった。


だって…




そんなとき、凛から、


「えっ、安藤あんどうくんは?結構、顔整ってることない?」


わかるわかる。


そりゃ、安藤くんは、彼──


「安藤くんは、どっちかっていうと、弟って感じ!彼氏って感じはあんまないなー、」


いや、違うでしょ。


「あっ、わかるー!可愛いって感じだよねー」


全然違う。


安藤くんは、かっこいいんだ。


「そうかな?私は別に彼氏、って感じもするけど。」


言ってしまった。

いや、言ってよかったか。


周りの友達なんてどうでもよかった。

いや、どうでもよくないけど。


でも、私は変わるって決めたから。


「えー!絶対、弟だよー!だって、あの可愛い笑顔!あれは弟につきる!」


それは、とっても共感できる。






でも、






「いや、でも、誰に対しても優しいの!この前なんか、私が先生に持たされた大量の配布物をほとんど持ってくれたの!ほんと紳士すぎたから!だから彼氏なの!」


私たちは隣に本人がいるのにも関わらず、とても熱く語っていた。


あとから考えたら、完全にヤバい奴らの集まりだな、とつくづく思う。


でも、私は、


隣にいたからこそ、


聞こえてほしかった。










だって、


私は君に『特別な感情』を抱いているから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る