183話 分かった

「ふんふんふーん」


 機嫌良さげな葵といつものように学校へ登校。そして校門に着いたところで何やら1人、立っている人が。


「ふふん。ようやく来ましたか神子戸くん」


 立っていたのは昨日の女の子。周りの人もちらちらと俺たちの正面に立つ女の子を見ては校内に入って行く。


「君は昨日の女の子だよね。俺、何かしたかな? 覚えて無くて申し訳ないんだけど何かしたなら謝りたい」


 俺の知らないところで不愉快にさせていたと言う可能性は大いにある。それならちゃんと謝ってこれからは気をつけないといけない。


「はぁ!? 違う違う! そういうのでは無くて…と、とにかく勝負なんだから! 生徒会長選挙で勝負よ! 私の方が…なんでもないから! 絶対立候補しなさいよね!」


 それだけ言うとそのままクルッと身を翻してタタっと校内へ入っていった。俺が何かしたわけではなさそうだけどなんでそんなに選挙にこだわるんだろう。俺たちまともに面識もないのに。


 でもあれだけ言われるってことは俺、何もしてないのに嫌われてる? もし、そうならちょっとショックなんだけど。


「あの人たぶん祐くんのこと嫌いなわけじゃないよ。今日見てみて分かった。なんでなのかは分からないけど会長選挙で勝負したいみたい。なんでなのか本当に謎だけどね」


「うーん。そうだよね」


 ただあの面影どこかでみたっていうかなんていうか…思い出せないけど。


「まぁまぁ、難しい顔しないでさ。学校の中入ろ? 今日も祐くんよろしくね」


「うん。今日も頑張ろうな」


 俺たちは手をしっかり繋いで学校へ入っていった。




 ◆◆◆




 そこから事態が動いたのは今日の放課前のショートホームルーム。


「会長選挙に佐々木さんが立候補したぞ。他に立候補したい人は早めに言えよ。もう日数がないからな」


「あ! 分かった!」


「ん? どうした神子戸」


 先生の話の途中で声を出してしまった俺はもちろんクラスのみんなから注目された。「すみません。なんでもないです」と謝っておたけど、この失態は恥ずかしい。


 その後は問題なくホームルームは終わってそのまま放課。


「葵、葵。さっき先生が佐々木さんって言ってたじゃん。まさかと思うけど佐々木会長の妹なのかな?」


「それ私もあの時ビビッて来たよ。祐くんと一緒に仕事して会長さんに会っておいたおかけだね。同じタイミングで思うだなんてやっぱり私たちって相性バッチリだね」


「そうかもね。いや。バッチリだよ。それででも確証もないし会長の妹だからって俺は何もしてないんだし」


「それなら実際に会ってみようよ。ささっ。いこっ」


 バッグを持って俺の手をしっかり握る葵。俺はそのまま葵に引っ張られるように教室を後にした。


 葵。本当に行くの?


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