かつては華々しく活躍した「天使憑き」だったが、いまはすっかりバイトの用心棒に落ちぶれた主人公。麻法中毒者を叩きのめした縁で臨時の魔法取締官になり……という話。ある種の魔法を一般人が使うと麻薬的作用があるという設定で、売人から筋をたどって黒幕へと近づいていきます。
まず魅力的なのが設定で、世界には天使や精霊、妖精といった雲の上の超常存在がいて、彼らの正規契約者であり大きな力を奮う「福者」「妖精使い」などが存在し、そのほかに非正規契約を結び限定的に力を使える「天子憑き」や「妖精憑き」がいる設定。そいつらが内戦やら麻薬密売やらを引き起こし、軍や警察側の契約者とやりあうわけで、これはもう僕らの中の中学二年生を鷲づかみにしてくれます。
話が進むにつれて、忘れたかった過去とふたたび対決せざるを得なくなってくるのも良い。かつての栄光も、捨てたい記憶も、主人公を放っておいてはくれません。それなりのオッサン主人公には陰のある過去が必要なのです。
まさにハードボイルド・ファンタジーの王道を行くこの作品、ぜひご一読を!