第29話 王子と王女の追及

 湯浴みをして髪を乾かしてから、新しい下着を着けてコルセットを締めます。

 そして、御用商人が持って来た新しいドレスを着せられました。


 辺境伯お抱えの御用商人なので、育ち盛りの私のサイズも把握しているそうです。

 子供らしいオレンジとピンクとパープルのパステルカラーのドレスを持って来てくれました。

 10歳なので、化粧は少しだけして貰いました。



「う~ん、ネズミーランドのお姫様って感じ?」


「可愛いわ、マリエル!」

 とお母様。


「王女も敵うまい!」

 とお父様。



「まぁ、あなた。不敬罪になりますわよ」


「王宮では言わんさ。はーはっはっは~」



「お父様、王宮で何か注意する事は有りますか?」


「ふむ、ステータスの内容に付いては言わなくて良いぞ」


「はい」



「嘘を言わず、笑って許して貰えばよい」


「はい」



「それよりも、ユックリと食べこぼさずに食事するのだぞ」


「はい、気を付けます」



「食事に夢中になってはいけませんよ」


「はい、お母様」



「沢山料理が出てくると思いますけど、少しだけ食べて残すのですよ」


「えっ! 残すのっ!」



「そうよ、大事な席でのドレスの時は我慢しなさいね」


「む~ん、折角王宮の食事が食べれると思ってたのに~」


「貴族令嬢というのは、そういうものなのよ」


「は~い……」




「それでは行くか」


「まだ、2時過ぎですけど……」


「絶対遅れることは出来ぬからのぅ」


「そうですわ」



「王族に謁見を求める者が多い為、控え室が幾つも有るからそこでユックリ待てばよい」


「はい」



 私達は馬車で王宮に向かいました。

 お母様はお留守番です、こういう時は2人で行くものだそうです。





 3時ごろ王宮に着き、正面玄関で馬車を降りて、控え室に案内されました。



「大きな控え室ですね」


「うむ」



 お菓子とお茶が出てきました。お菓子はマカロンに似ていて甘く、紅茶に合いました。


「あまり食べては夕食が入らぬぞ。1個にしときなさい」


「は~い」



 ガチャリ!


「ようこそいらっしゃいませ、レオポルド辺境伯、マリエル」


 なんと、アレクシス王子がフライングで会いに来たのです。



「王子、本日はお招き下さり有難う御座います」


「伯爵、急にお誘いしてしまい失礼しました。正式な挨拶はのちほど国王陛下と一緒の時にさせて戴きます」



 王子の後ろから、可愛い女の子が顔を覗かせました。


「マリー、妹のジュリエットです。2歳下です」


「まぁこんにちは、マリエルと申します。よろしくお願いします」


「こんにちは、未来のお姉様。あにがお世話になってます」


「ジュリー!」


「まぁ!」

「ぐぬぬっ」



「マリーお姉さま、お花がお好きなのでしょう? お庭をご案内しますわ」


「まぁ、ありがとう。……お父様行って来てよろしいですか?」


「うむ、良かろう。 アレクシス王子、お願いします」


「あら、レクシも一緒に行くの?」


「勿論だよ、マリー」



「だって、それじゃあまるで『お見合い』みたいですわ」


「なにっ! そんな事はないぞ。まだ10歳なのだから」


 お父様の顔が真っ赤になりました。



「私は問題ありませんよ、未来の王妃の御義父様おとうさま!」


「ウグゥ、オママゴトと言う事ですな。はーはっはー」


 お父様は額の汗をぬぐいました、目が全然笑っていません。




 私は、レクシ王子とジュリー王女に案内されて王宮の庭に出ました。

 豪華なイングリッシュローズガーデン風の庭が広がっています。


「とてもステキな御庭ですね」


「マリー王妃の庭に成るかも知れませんよ」


「もう、からかわないで下さいませ」


「あら、お兄様とマリーお姉様はとってもお似合いですもの」



「色とりどりの綺麗な薔薇が美しいですけど、ハーブも結構あるのですね」


「うん、ポーション用の薬草を覚えるようにと、先代の国王が植えた物らしいよ」



「私も屋敷の庭でハーブを育てています。マンドレイクもあるのですよ! フンスッ」


「マンドレイク!? 人工栽培は出来ないと言われてますよ?」


「株元に毎日少しづつ魔力を注いでやれば栽培出来ますのよ」


「なんと!? それを王宮の魔術師に教えても構いませんか?」


「はい、勿論です」



「凄い、成功すればポーション革命が起こるかも知れません!」


「まぁ、そんなにですか!」



「お姉様はマンドレイクの栽培の仕方を、女神様にお聞きに成られたのですね?」


「えぇ、まぁ……」

(大変、笑って誤魔化さないと)


「おほほほほ……とても良いお天気ですわね」



「他にはどんな事を女神様に教えて貰ったのですか?」


「おほほほほ……赤い薔薇がとっても綺麗ですわ」


「む~んっ、やっぱり簡単に他言出来ない事を沢山教えて貰ってるのですね?」


「♪ピーピーピー……」


 マリエルは下手な口笛を吹いて空を眺めます。

 王子と王女は目を合わせ、クスリと笑ってました。



「マリーはポーション作りに興味があるのですか?」


「えぇ、数年前から作ってます」



「噂では、マルグレーテ公爵令嬢の弟の目を治してあげたらしいですね?」


「はい……でもあれは、女神様のお導きによるもので、ポーションの効果ではありませんよ」


「あ、やっぱり女神様とお話できるのですね!」


「ウグゥ、公爵家の信仰が…弟様の目を治したのでしょう」

 マリエルの背中に冷汗が流れました。



「マリエルお姉様がお会いしたのはエイル様ですか?」


「おほほほほ……ジュリエット様に神様のお導きがありますように」


「まぁ、ありがとうございます」



「それではマリー、そろそろ戻りましょうか」


「はい」

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